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4 冬
核心にふれる言葉が、届いた。
「晩年」を読みふける私の脳は穏やかに揺らされていたんだ。
休息よ。しばしの無駄遣いを。閉じこもる私に声の届かない日々よ。
ああ、私の言葉を信じてはいけない。その必死な声を見つめ続けてみる。
太宰に対してか大庭に対してかは知らない、けれど愛おしく思うかれらに私は一つずつの物語を贈る。かれらが好みそうなものを、私が好みそうなものを、私が憎いものを。
『かたはらには一つの酒の瓶と、あたたかひコウヒイの入った容器、つまむものはたいして好まず、雪を眺め、雪を描き、お話を空蒙してはその何割かしかこの世にとどめない。仄かなあたまのせいか、ちやんとしたものは一つとしてないかもしれない。大事な時間と引き換えに、信用を引き換えに、こいつは必死にコエを張り上げているのさ。なんておろかなバイオリン。』
私が憎いものを、私が好みそうなものを。かれらが恋しそうなものをこれが最後と、キーを打つ。
こんな季節は泣きそうになる。もとよりそんな機能を思い出す時間にさえ。