2 長い一日
デビッド・エルジーニは旧友に語りかけた。
「なあカーデュラ。君は世の中の理不尽さを知っているか」
「何を今さら」と旧友は言った。
「冬は辛いなあ。夏は苦しいなあ。人間って生き物はじつはとっくに死んでいるんじゃないかって思うんだ。おまけにお互いを傷つけあうのが日常だ。適応って言葉が美しすぎるぐらいだ」
「・・・・・・デビーは冬が好きだったんじゃなかっけ? ついさっきなんか人間ってすばらしいや、生きてるって最高さ、なんて言ってただろうに」
「いや、まあ、それはその」
デビッド・エルジーニは口ごもりした。
「夏はさ、いろいろ腐りやすいじゃんか。君は嬉しそうにワインをがぶ飲みしてたけどこっちは裕福じゃないからね。その点、こっちはまだマシってだけだよ。空腹になってきたのもある」
「ああ、そう」
旧友は呆れた顔で新しい瓶を抜いた。
「ほんと理不尽だよね。いや、おそろしいほどに気分屋で傲慢なのかな。賭けてもいいけど、僕らってのは死んでいてても土の中の感想を口々にしてるよ。それも賛否両論で」
「嫌でもわかるよ」
旧友は、静かに目を伏せて、あくびを噛み殺しながらそう言った。
「一日中君を見てるとね」