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毒耐性

 さて、今日は天気がいいので久しぶりに外に出た。

 乾いた冷たい風が頬を撫でる。ぶるりと身体を震わせるが俺は森の奥へと入っていく。


 そして目的地に到着し積もった雪を掘り起こす。

 炎の魔術が使えれば簡単に溶かせるのだが使えないものはどうしようもない、汗をかきながらシャベルを雪に突き刺しようやく地面が見えた。


 雪の下にはある草が眠っていた。目当ての品である。それを傷つけないよう根元から掘り起こし採取する。


「んっ」

魔術の発動を感知した数秒後。



「ギャインッ」

 背後から動物の鳴き声が聞こえた。振り向くと一匹の狼が魔法で出来た黒い棘に腹を貫かれて息絶えたところだった。


『黒針』

 この1年で覚えた魔術の一つだ。

“設置型”の魔術で遠距離に魔法を飛ばせない自分にとって貴重な遠距離攻撃手段となっている。

 今のところ半径50m、円形の陣の中に入ってきた相手を襲う魔術。

 その反応速度や相手を襲う黒針の威力は設置する時に込める魔力によって比例するのでまだまだ研鑽と工夫の余地がある魔術なのだ。


 まぁそんな事はさて置きスノーウルフの肉と毛皮が手に入ったのは僥倖として家に戻ることにする。血の匂いにつられて他の生き物が襲ってくれば攻撃手段の少ない自分は不利だし、降り積もった雪が動きを抑制する。

 何個もある不利なカードを持ったまま勝負に挑むことはないしそもそも戦う必要性もないしね。


__________


「ただいま」


「おかえり」


「雪下草採ってきました。それとスノーウルフが襲ってきたので返り討ちにして肉と毛皮が手に入りました」


「へ~、スノーウルフを単独で撃破か。そんなすごいやつ作ったんならもうガス欠でしょ」

 そう、『黒針』を含む俺が使える魔術はことごとく燃費が悪い。

「…そうです。けど、もっと効率化してみせますから」


「ある程度見切りも大事よ?」

 そんな忠告を無視し俺は台所にスノーウルフをしまい、雪下草を地下に持って行きそのまま自分の研究部屋に入った。

「トーマス、すぐにご飯だから研究の続きはそのあとね」

と、こちらの気も知らずにアイラさんの声が響く。




__________


「で、今日は毒餌の日でしたっけ」

「違った?まぁ作ったあとだし食べますか、さてトーマスはどっちを選ぶ?」

そう言って並ぶ二つの料理。見た目はほぼ同じだが一方は毒薬入り。

おそらくさっき採ってきた雪下草が使われている。

 ただ毒薬と言っても下剤やしびれ薬、睡眠薬も含む。それに即効性の致死毒の類は“まだ”使われていない。

 ずいぶん前に死ぬ一歩手前まで行ったことがあるが後遺症無く治療されているしそれは覚悟の上だ。

 それが週に一度の間隔で一年間続いている、流石に抗体ができて弱い毒には耐性が付いた。

 この毒耐性を付けようと思う出来事が2度ほどあったのだ。



__________


 陰の魔導師ということで関係を築きたい貴族たちから猛烈なアピールとそれに伴う駆け引きが行われた様で強制的にガラン伯爵様の館に行くことになった。なんでもあの収容所から出るにあたって根回しをしてくださった方で断ることは出来ないとか。

 とは言っても顔を合わせて食事をしただけ食事中の談笑は横にいた師匠であるアイラさんが捌いてくれて、眠くなった俺は使用人に連れられて部屋に案内された。

 そこで事件が発生したのだ。

 


 誰かに体を触られている感じ、乱暴ではなくゆっくりと丁寧にこちらを起こさないようにしている。だが俺は目が覚めてしまった。

 すると目に前にいたのは俺を部屋に案内してくれた20代の男性の使用人。彼の手によって上半身は開けズボンも膝の所まで脱がされパンツが丸見えになっていた。

「ちょっと、もたもたしてるせいで起きちゃったじゃない」

「申し訳ございませんお嬢様。どうやら薬の量が少なかったようです」

その会話でもう一人部屋にいることに気がついた。

「なっ!」

 その人は女性で14、5ぐらい薄手のネグリジェに身を包んでいて目のやり場に困る。

「まぁいいわ、やることは変わらないし」

 そう言って使用人を退かし俺の上に乗ってきた。

「いきなりの事でビックリしてると思うけど何も心配はいらないわ。私と一緒に寝てくれるだけでいいから」

混乱する頭、だが事態はどんどん進んでいく。

「とはいえここはまだ使い物にならないわよね」

 そう言って俺のアル部分に手を乗せる。それだけで恥ずかしさから真っ赤になる。

「な、なんでこんなことを?」

「陰の魔術師を我が家に取り込むためよ」

と即答された。

「そのために“裸の君”が私と“一緒のベット”で“一夜”を過ごせば後はどうとでもなるわ」

 そう言うやいなや残ったパンツを脱がそうと手が伸びる。

 だがそれは絶対死守。ここで使用人が加勢すればもうどうしようもなかったが俺が目覚め、お嬢様とバトンタッチしたあと部屋から出ていったのだ。

「平民のくせにいつまで抵抗するつもり?さっさと裸になってお願いしますって言えばいいのよ」


「おやおや、ガラナ伯のお嬢様は男の口説き方は下手な様ですね」

そんな陽気な口調で入ってきたのはアイラだった。

「みっともない格好だねぇトーマス。けど貞操は無事か」

「笑ってないで助けて」

「ということで時間切れだお嬢さん。保護者の目の前で続きをするかい?」

「……そんなみっともないことはしないわ」

そう言って怒って出て行った。


そんなことがもう一度あったため薬の耐性を本気で付けることを決めたのだ。

いつもお読みいただきありがとうございます。

感想お待ちしております。


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