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酒場で

スノーバレーにある酒場 ミリディア


その酒場でアイラは飲んでいた。

「マスター、おかわり!」

ドン、と乱暴にグラスを置くマスター

「アイラ、ツケはこの前払ってくれたから酒は出すが、飲みすぎだ。迎えに行くんだろ?」

「いいの、いいのぉ、少しは反省しなきゃぁ」

「お前のとこに来た子が可哀想だ。まだ7歳だって?それを録に説明もせず奴隷認証の書類に騙すようにサインをさせるとは…」

「あたしの時よりましよ。あたしの時なんか頭押さえ付けて血判まで押されたんだから。ましまし」

「それでもやり様はあっただろう」

「何事も経験よぉ。あたしやあの子はどうあがいても国というでっかい鎖から逃げられないんだから奴隷の鎖なんか軽い軽い」

「…奴隷という身分に落として権力者どもの争いから守る。言葉では理解できるが納得はできんな」

「どこの国も似たりよったりよ。飼い殺しになるのは変わらないの。あたしがここにいるのだってあたしに許された小さな我侭だもの」

そう言って場の雰囲気が少し悪くなった。

「ああ、止め止め。お酒がまずくなる」

そう言って残っていた酒を飲み干しマスターに金を払う。

「迎えに行くのか」

「ええ、サロマの収容所にまでね」

「今度はその子も一緒に連れて来い、懐かしいメニューを出してやる」

「はいはい、ごちそうさま~」










サロマ収容所


みなさんこんにちはトーマスです。

ここに入って5日が経ってしまいました。

脱走防止のため鉄格子がはまった窓から日の傾きが見えるので1日の始まりと終わりが分かるので時間がわからなくなることはありませんでした。

ここに来る時に着ていた服は取り上げられ今着ているのはなんとか寒さを耐えることができる囚人服です。

ご飯は朝と夜の2回、パンと薄味のスープだけですぐにお腹が鳴る。

トイレは牢屋の端っこに置かれた大きな壷にします。

壺には蓋が付いていて臭いを若干抑えてくれます。

それでも初日はこの臭いに苦労した。とにかく臭いし仕切りとかないから通路を通る看守から丸見えに。24時間巡回しているわけではないが嫌だ。

で、俺がいる牢屋は数人が一度に入る大きなものです。

幸運にもここに入るときは一人でしたが先日町でスリをしていた強面のお兄さんと相部屋になりました。

牢屋の隅に身を寄せて縮こまっていました。

そんな中告げられた面会の知らせ。

看守に連れられて入った部屋にいたのはアイラさんでした。


「ごめんなさい」

まともにアイラさんの顔を見ることが出来ませんが逃げた手前、謝るのが筋でしょう。

「色々言いたいことはあるけどまずは帰るよ」

「帰る?」

「そ、あたしの家にね、釈放よ。釈放」


そうしてあれよあれよとさっさと釈放の準備が進む。

没収された荷物が返却され手足に付けられた錠が外された。

「坊や、関所破りは国内であっても重罪だ。本来なら牢屋に入って初日から鞭の一つもくれてやって首を刎ねるんだが自分の幸運に感謝しろ。そして二度とこんな場所に来るんじゃないぞ」

と、この収容所で一番偉い所長から直接お叱りを受けました。

死刑なんて知りませんでした。

青い顔をして必死に首を縦に振りました。




師匠になるアイラさんに連れられスノーガーデンまで帰ってきた。

食事をすると言って一軒の酒場に入りました。


「帰ってきたか」

「マスター、約束通り連れてきたわよ」

「見れば分かる、お前はいつも通りこれでも飲んでろ」

「さすがマスター愛してる」

「生まれた時から知ってる30ウン年年の離れた女から言われてもな。それにかみさんは死んだあいつだけで十分だ」

「はいはい、その話は何度も聞きましたぁ。社交辞令ぐらいいいじゃない」

「本気で酔ったお前が襲いかかってきたらその瞬間詰むからなこっちの人生」

「そんな危険人物がもう一人増えるんだから」

「全くだ、だが今はよだれ垂らして飯を待ってる子犬と変わらん」

そう言って俺の前にいい匂いのする肉の塊が置かれた。

鉄板からジュージューと音を立て油が跳ねる。

ナイフで肉を切るとスッと切れる。

一口食べた瞬間ズシンと胃に落ちてきた。

収容所の薄味料理のあとのこのステーキ。

特別何かをしているわけではない。塩と胡椒で味付けをしたどこにでもある牛のステーキ。

それでも今の俺にはご馳走だった。

涙が出た。

後から後から涙が流れてくる。

マスターが俺の頭を撫でた。恥ずかしくはなかった。

泣いて泣いて、ようやく涙が止まったあときちんと説明を受けた。


そして俺は正式にアイラの弟子になりアイラに頭を下げた。

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