帰郷 温かい家族
魔力付与が出来る様になって早半年が経った。
暑い日差しが続いた夏が過ぎ実りの秋、平野いっぱいに広がる麦畑。
だいぶ涼しくなった。
俺は生まれ育った村に帰ってきていた。
「ただいま、母さん」
家に入り母親に帰宅の挨拶をする。
返ってきたのは母親の抱擁だった。
懐かしい安心する感覚。鼻をくすぐる美味しそうな匂い。
「おかえりなさい、トーマス。しばらく見ない間に大きくなったわね。怪我とかしてない?」
「母さん心配しすぎだよ。怪我は学院の訓練でたくさん痣とか作ったけどその分随分と強くなったんだよ俺!」
「そうなの、じゃぁその話は夜お父さんが帰ってからたくさん聞かせてね?それじゃぁトーマスは部屋に行ってその荷物を置いて着替えて来なさい。そしたらお茶にしましょう」
「はい!」
心休まる静かな時間が過ぎた。
そして夕方、父親が帰ってきた。
「トーマス?お前なんでここに?」
おや?手紙で帰ることは伝えてあるしこの時期帰ってくることは学院に行く前から知っていたはずだが…
「びっくりしたあなた?」
どうやら母親が黙っていたらしい。俺が居ない間に喧嘩でもしたのかな?
「ああ、びっくりしたよマナ。おかえりトーマス」
違った、普通にラブラブだったこの二人。
さて気を取り直して美味しい夕飯。
「学院に行ったら早速クラス分けの試験を受けたんだ。そこで俺は魔術師じゃなくて魔導士になるんだって。それでワルズっていう教官に俺らEクラスはしごかれてね…
一ヶ月に一度クラス対抗で試合が行われるんだ最初は全く勝てなかったんだ。けどクラスのみんなと協力してワルズ先生に一撃入れてね。ようやく魔術の授業を受けたんだよ。それで、それでね…」
「トーマス、少し落ち着きなさい」
「ちゃんと聴いてるから母さんの料理もちゃんと食べてね?」
両親は俺が話している間ちゃんと聞いてくれた。時折相槌を打ったり、質問してきたりして会話が弾んだ。
「学院長直々に教わることになった時、俺すごく緊張してね。それから努力して取得難度の高い魔力付与ができるようになったんだ。ちょっと見ててね」
そう言って食事に出ていたナイフに魔力を纏いまだ残っていた肉を綺麗に切り裂いた。
「ほぉ~」「まぁ」
両親の感嘆の声が漏れた。
さて、いよいよこの話題を言わなければならないのか…
「父さん、母さん。さっき俺が陰の魔導士だってことは言ったよね?それでね、陰の魔術ってサウスガーデンの学院では教えてくれる人がいないんだって」
「そうか、それで」
「それで、その魔術を教えてくれる人がスノーバレーに居るから来年から俺、スノーバレーに行くことになるかもしれない」
「スノーバレーってことはここからだと一月以上かかるな。なら気軽に帰ってくる事は出来なくなるのか」
「うん」
「トーマスはどうしたいんだ?」
「俺は、俺は行きたい。行って陰の魔術を使えるようになりたい。他の子みたいに火や水は出せないけど俺だって魔術が使いたいよ」
理由としては弱いただの我儘のようなものだった。
しかし父は許してくれた。
母は涙を流したが納得してくれた。
その日俺は父さんと一緒に風呂に入った。
「トーマス、お前は何か他の子とはどこか違うな」
「なに?突然」
「ごめんな、普通の子に産んでやれなくて」
突然謝られた。呆然とするが同時にため息が出た。
「別に謝らなくていいよ。俺が魔導士なのも使える魔術が陰だってことは事実だし。俺はそれを受け入れてこの一年頑張ったんだよ?」
「…そうか、そうだよな。トーマスは頑張ったんだよな。ごめん父さんが間違ってた」
ちょっと湿っぽい空気になったがそれは俺と父親の体の洗いっこで有耶無耶にした。
寝る時も家族3人で寝ることになった。
恥ずかしかったが嫌ではなかった。
夢の中で前世の両親が出てきた。
翌朝起きたとき俺は涙を流していた。
俺はこの幸せな家庭を噛み締めた。




