プロローグ
カチャカチャ…
部屋の中でゲームの音だけが響く。
「冬馬~遊んでるならちょっと買い物行ってきてぇ~」
「え~、めんどくせぇ」
「今月お小遣い前借り…」
「わかりました、行きます。行くから小遣いカットだけは」
「よろしい。買うものだけど明日の食パンと牛乳、あとマヨネーズもお願い」
「そんだけなら母さんが…」
「何か言った?」
「言ってません」
母親から千円もらい自転車に乗って近くのコンビニに向かう。
買い物を済ませ交差点で信号待ちをしていると遠くからパトカーのサイレンが聞こえてきた。
どんどん近づいてくる。
どうやら真っ直ぐこの道を進んでくるみたいだ。
信号が変わり進む。
すると暴走する黒い車と追うパトカーが見えた。
けど黒い車の前に乗用車がいるしここは住宅街道幅が狭く追い越すこともできない。
『捕まったな』
そう思ったが黒い車はさらにアクセルを踏み前の車に突っ込んだ。
前の車はその衝撃でスピンしてこちらに向かってくる。
「嘘だろ、おい!」
慌ててブレーキを掛けて逃げようとするが間に合うはずもなくぶつかった。
「しっかりしろ!目を覚ませ!死ぬな!」
薄れゆく意識の中、懸命に心臓マッサージをされているのがわかる。
けど駄目だ眠い、寒い。
浮かびかけた意識は沈み、そのまま覚めることはなかった。