図書館の密談。
それから、翌日。
真希が適当に顧問に新しい活動報告をしてくれたおかげで、案外、すんなりと「魔法の本」探しができることになった。ある意味、真希は嘘を吐いたのだが、それを信じられるというのは、やはり日頃の行いだろう。
そうして、部活動の今。文芸部員は図書館にいる。
「つーかさあ、「魔法の本」ってどんなのなんだよ」
約二時間が経過したとき、館内をうろつきながら京太郎が若干イラつきながら、近くにいた安に問うた。
「さあ?そういうのは久野に聞いた方がいいと思うよ」
「久野……ねぇ」
物思いに呟いてから、京太郎は疑問を安にぶつけた。
「久野と安って、デキてんの?」
「はあっ!?」
ゴホンっ!!、と、本を読んでいた老人が咳き込むと、京太郎は口に指をあて「シーっ!!」と、安に掴み掛る。
「い、いきなりなんだよっ!!」
小声で叫び、京太郎を睨みつける。だが、当の本人は面白そうにニヤつくだけだ。
「べっつにぃ~。思ったことを言っただけですけどぉ?」
明らかにバカにしたように京太郎がこたえると、安は顔を真っ赤にしつつ、決心したように
「誰にもいうなよ………。」
と、だけ言った。
「お?お?これはもしや~」
「ち、違うっ!!俺と久野が付き合ってるんじゃなくて、なんか、久野が俺のことが好きだって聞いて………」
「へ?ンだよ、つまんねえなー」
ぶーと、口を尖がらせてふてくされる。だが、安はなんだか落ち着かない。そして、京太郎は気づいてしまう。
「もしかして、安。久野のこと好きなの?」
「!?」
途端に真っ赤だった顔をさらに赤く染める。普段、飄々としている彼がそうなるのは、なんだかとても新鮮だった。
安は、なかなか女子に心を開かない。話はするけど、友達まではいかないし、ましては好きな子などできたことがなかった。
「ち、ちがっ!!マジで違うからっ!!お前なに笑ってんだよっ!!」
ガツッ!!!、と、近くにあった本の角で京太郎を殴る。怒っているわけではないが、どうやら焦っているらしい。
「いたっ。…………コクんないの?」
「お前、マジで殺すぞ?」
しまいには、安の声音に殺気が混じり始めたので、京太郎は一応の謝罪をしておく。
閉館時間になり、学校に戻りはじめる文芸部一行。
その中の、端正な顔つきをした少年は口を押えて、いまだに顔を赤くしていた。
「告白とか、全然かんがえてなかった。」
彼の苦労は、どうやらここかららしかった。