公園の子供。
※ 年齢制限はありませんが、一部猟奇的描写、残酷描写があります。
作品の世界観を表現するためのものなので、苦手な方は読まないことをお勧めします。
ご了承くださいm(__)m
夕暮れが美しい公園のブランコで、しくしくと啜り泣く子供の姿があった。しかし、誰一人として子供に手を差し伸べない。かといって、見て見ぬ振りをしている素振りもない。黄色い笑い声が響く和やかな公園の風景に、その子供は異色な存在だった。まるで、誰もその子供に気が付けないような、その子供だけが隔離された空間にいるような、おかしな光景だ。
砂場で遊ぶ、二人の少女の会話が聞こえる。
「本当にあるのかなあ。『魔法の本』」
「きっとあるよ。また明日も、探してみよう?」
「そうだね。だって、あの子は願い事を叶えてもらったから、いなくなっちゃったんだもんね」
ピクリ。
子供が少女の会話を聞いてか聞かずか、肩をわずかに揺らし、顔を覆っていた手を膝に下ろした。
前髪で見え隠れする子供の表情は、背筋が凍りつくほど冷たい笑み。それでも、誰も子供に気付かない。
少女たちは、『魔法の本』が見つかったらこんな願いを叶えてもらいたい。ああいう願いを叶えてもらいたい。と、夢御伽話に花を咲かせる。
子供は、ブランコからゆっくりと立ち上がり、おぼつかない足取りで歩きはじめる。すると、鉄棒で遊んでいた少年たちが、ふとブランコに群がった。
ゆっくり、ゆっくり。一歩、一歩、前に出す。
その表情を冷凍したかのように固まらせながら、子供は砂場の少女に近づいていく。
ざくり。砂を踏みしめる音に、少女たちが気づく。急に現れたともとれる子供を、恐る恐る振り返った。途端に、息をのどに詰まらせる。悲鳴が上がらなかったのが、奇跡のようなものだ。
まぶたを真っ赤に腫らした子供は、子供らしからぬ笑みを浮かべて、少女たちに言う。
「私も、そのお話に、混ぜて?」
翌日、夕焼け小焼けが流れる公園の砂場に、啜り泣く子供の姿があった。
悲しげな鳴き声とは裏腹に、子供の顔は、表情は、おかしいほどの楽しげな笑みだった。