4、はじめての告白
八月に入り夏休みも残すところ半分となったとある日。学校のプールで泳いできた帰り道、同じクラスの男子に呼び止められた。真っ黒に日焼けした顔がほんのり赤い。
「お前のこと、好きなんだけど」
大きな声で告げられたはずなのに、蝉の鳴く声にかき消されそうな感じだった。突然の告白にぐちゃぐちゃになる頭と心の中に、何故か爽太郎の姿が浮かんだ。
「わたしをストーカーできるくらい、好き?」
同級生の男の子は顔を顰めて、は?と言った。わたしも、は?と言いたかった。口から勝手に出てしまったのだ。きっと、全部爽太郎のせいだ。
「ストーカー?普通に考えてありえねーし、キモいだろ」
「うん、そうだよね」
「…でも、お前のことは好きだ」
「わたしはストーカーをキモいっていうあんたのこと嫌いだ」
じゃあ、もういいよ!
男の子はぐっと唇を噛んで、大げさに叫んで走り去っていってしまった。悪いことをしてしまったのかもしれない、きっと傷つけた。せっかくわたしのことを好きって言ってくれたのに。でも、爽太郎のことを気持ち悪いって言われたみたいで腹が立ったんだ。爽太郎は、そんな人じゃないんだもん。
なんだかすごく、すごく爽太郎に会いたくなった。
涙が出そうになるのをグッとこらえて、わたしは走りだした。爽太郎がいるあの空き地に向かって。
もうすぐ夕方になろうとしていた。