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仕事帰りのコンビニ肉まん
自動ドアが開くと、外の冷たい空気と一緒に、店内のあたたかい匂いが混ざった。
レジ横のケースから、湯気が上がっている。
(……肉まん)
疲れていると、どうでもいい判断ができなくなる。
まっすぐ帰ればいいのに、
吸い寄せられるようにレジへ向かっていた。
「肉まん、一つ」
店員がトングで紙袋に入れる。
受け取ると、手のひらがじんわり温かい。
外に出ると、夜の空気は思ったより冷たくて、
思わず肩をすくめる。
袋を開ける。
白い湯気。
一口かじると、中の熱い餡が広がる。
(……うま)
それだけで、
今日あった面倒なこととか、
言い返せなかった一言とか、
全部どうでもよくなる。
駅へ向かう人たちの流れの中で、
一人、肉まんをかじりながら歩く。
別に特別な日じゃない。
仕事は疲れるし、
明日も早い。
それでも。
コンビニの肉まんひとつで、
少しだけ生き返る夜もある。




