おつとめ品を使った麻婆豆腐
夕方。
スーパーの「おつとめ品」コーナー。
少しだけ立ち止まる。
豆腐が二丁、値引きシール付きで並んでいる。
賞味期限、今日。
(……まあ、火を通せば大丈夫か)
カゴに入れる。
隣に、しんなりしかけたネギ。
これも半額。
ついでに、特売の麻婆豆腐の素。
今日はそれでいい気がした。
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フライパンに油を少し。
ネギをざくざく切って入れる。
じゅ、と音。
少し焦げ目がつくと、ちゃんといい匂いがする。
豆腐は、パックからそのまま。
包丁で四角くするのも面倒で、
フライパンの上で、ヘラで大きめに崩す。
(まあ、口に入れば同じだ)
独り言。
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水を少し。
麻婆豆腐の素を入れる。
ぐつぐつ。
赤い油が浮く。
特別なことは何もしてないのに、
急に「料理っぽい匂い」になる。
不思議だ。
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味見。
(……うま)
思わず、小さく声が出る。
ちょっとだけ薄い気もする。
引き出しから麺つゆ。
ほんの少し。
もう一口。
(うん、これだ)
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皿に盛る。
見た目は、少し崩れている。
豆腐も形がまちまち。
ネギも大きい。
でも、湯気はちゃんと立っている。
ひと口。
熱い。
でも、ちゃんと麻婆豆腐だ。
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おつとめ品の豆腐。
半額のネギ。
特売の麻婆豆腐の素。
正規ルートじゃない材料ばかりだけど、
フライパンの中で混ざれば、
ちゃんと一品になる。
完璧じゃなくてもいい。
少し崩れていてもいい。
その場でまとまれば、それでいい。
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湯気の向こうで、
もう一口。
今日もまあ、
悪くない。




