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疲れた日の、ささやかな食事  作者: Wataru


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13/20

おつとめ品を使った麻婆豆腐

夕方。


スーパーの「おつとめ品」コーナー。


少しだけ立ち止まる。


豆腐が二丁、値引きシール付きで並んでいる。


賞味期限、今日。


(……まあ、火を通せば大丈夫か)


カゴに入れる。


隣に、しんなりしかけたネギ。


これも半額。


ついでに、特売の麻婆豆腐の素。


今日はそれでいい気がした。


⸻


フライパンに油を少し。


ネギをざくざく切って入れる。


じゅ、と音。


少し焦げ目がつくと、ちゃんといい匂いがする。


豆腐は、パックからそのまま。


包丁で四角くするのも面倒で、


フライパンの上で、ヘラで大きめに崩す。


(まあ、口に入れば同じだ)


独り言。


⸻


水を少し。


麻婆豆腐の素を入れる。


ぐつぐつ。


赤い油が浮く。


特別なことは何もしてないのに、


急に「料理っぽい匂い」になる。


不思議だ。


⸻


味見。


(……うま)


思わず、小さく声が出る。


ちょっとだけ薄い気もする。


引き出しから麺つゆ。


ほんの少し。


もう一口。


(うん、これだ)


⸻


皿に盛る。


見た目は、少し崩れている。


豆腐も形がまちまち。


ネギも大きい。


でも、湯気はちゃんと立っている。


ひと口。


熱い。


でも、ちゃんと麻婆豆腐だ。


⸻


おつとめ品の豆腐。


半額のネギ。


特売の麻婆豆腐の素。


正規ルートじゃない材料ばかりだけど、


フライパンの中で混ざれば、


ちゃんと一品になる。


完璧じゃなくてもいい。


少し崩れていてもいい。


その場でまとまれば、それでいい。


⸻


湯気の向こうで、


もう一口。


今日もまあ、


悪くない。


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