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【勇者ゲーム】Fragments:13 —13人の勇者候補は願いを叶えるため異世界で殺し合う—【リメイク】  作者: 玄野 黒桜
第一章 知らない空が現実(きょう)になる

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第四話 疑惑の目を向けるとき、こちらもまた疑惑の目を向けられている

 戸惑っているうちにイリスがテキパキと森山猫(フォレストリンクス)の剥ぎ取りを終えてしまった。剥ぎ取り終えた残りの死骸はクリーチャーが集まってこないように埋めるのが普通らしく、彼女が組み立て式のスコップのような道具で穴を掘りだしたところで俺が穴掘り役を申し出て穴を掘って埋めた。


 クリーチャーの処理を終えるとイリスの仲間たちが集まっているという場所に向けて移動を始めた。その移動中に俺はそれとなく亡くなった男性と同一人物だと思われる彼女が探していた人物について聞いてみた。


「えっ?ヤマトさんがどんな人かですか?って、探してる人がヤマトって名前の人なんですけど。うーん、普段はソロで活動してた人なので実は私もよく知らないんですよね。たまにこういう合同パーティーで一緒になるくらいで……」


 どうやらそういうことらしい。あまり交流はない人物のようだが落ち込むイリスを慰めつつ、俺はイリスから聞いた情報について考えた。


ヤマト何某という名前からもおそらく俺と同じ世界から来たのは間違いないだろ。ほとんど交流がなかったみたいなのではっきりとは分からないが、あまり積極的に周囲と関わっていなかったみたいだ。


(ということは、やっぱりこの世界の人に異世界のことは話していないってことか?)


 少なくともヤマトなる人物が自分は異世界人だと誰かに話していたり、異世界人という存在が一般に認識されてなさそうだ。もし、認識されているのであればイリスもファーストコンタクトでもっと違う反応をしたと思う。では、神や勇者、魔王についてはどうだろうか?俺はさりげなくこの世界の宗教や勇者や魔王という言葉に聞き覚えがないかを聞いてみた。


「宗教ですか?私はよく知りませんが、祖先や精霊を崇める種族がいるとは聞いたことがありますが……。えっ?カミ?ああ、あの文字を書いたりするやつですね!あれって羊皮紙より高価なんですよね?セイマさんは本物を見たことあるんですか?あと何でしたっけ?そうだ!ユウシャ……とマオウ……でしたか?魔法ではなく?セイマさんの故郷の言葉ですか?」


 イリスから帰ってきたのはまさかの答えだった。どうやら少なくともイリスは勇者と魔王どころか神すら知らないらしい。試しに異世界の常識にも同じことを問いかけてみたが何の答えも返ってこない。一瞬、異世界の常識が機能していないのではとも思ったが、近くに生えている草のことを知りたいと思えばきちんと答えが返ってきた。


(これってこの世界には神という概念がないってことなのか?)


 俺だって高校生だったんだから元の世界の国では日本神話やギリシャ神話、北欧神話みたいな神話があるのは知ってる。王権神授説っていう王の権威付けのために王座は神から信任されたものだとする説があったことも歴史の授業で習った。そんな元の世界では歴史や政治にも深く関わっていたような神という概念が生まれないなんてことがあるんだろうか?


「あっ!見えてきましたよ!」


 あれこれと考えていたところへそんなイリスの声が聞こえたことで俺は思考を一旦打ち切って彼女が指差すほうを見た。どうやらここはもう森の出口らしい。木々の向こうに平原が見え、そこに人が数人集まっているのが見えた。


 森を抜けてイリスに言われるままに全身をくすんだ銀色の鎧で固め、手に脱いだ兜を持った大柄な男性の元へ連れてこられた。


「ハワードさん!セイマさん、こちらは私が所属しているパーティー“蒼穹の翼”のリーダーのハワードさんです。」


「イリスか。戻ったのか。ん?そいつは誰だ?」


 イリスが全身鎧の男性に話し掛ける。どうやら彼はハワードというらしい。一方のハワードのほうも落ち着いた様子でそれに応じたのだが、俺の存在に気づくと不審そうな顔をした。


「こちらはセイマ オリドさんといって森で薬草を採集されていたところに出くわしたので一緒にここまでお連れしたんです」


「どうも。セイマ オリドといいます。イリスには危ないところを助けてもらいまして」


 イリスが紹介してくれるのに合わせて自己紹介してみたのだが、ハワードには「森の中で会った?」と更に胡散臭そうな視線を向けられる結果となってしまった。


そこに空気を読んだのか俺が冒険者になるためにウィーレストを目指していたので一緒に連れてきたとイリスがとりなしてくれた。


 「そうなのか?じゃあ改めて、俺は蒼穹の翼でリーダーをやっているハワードだ。何か困ったことがあったらいつでも相談してくれ」


 イリスの説明に納得したのか、はたまた冒険者としては冒険者志望の人間が嬉しかったのか分からないが、ハワードは笑顔になると自己紹介と同時に右手を差し出してきた。俺は彼の申し出に何かあれば相談させてもらうと答えながら差し出された手を握った。


「それでセイマさんから聞いた話なんですけど、森の奥で剣で斬られたような傷を持つ四腕熊(アームズグリズリー)の死骸を見たらしいんです」


「なんだとッ!?どこでッ?!?討伐証明はッ?!」


 俺たちの自己紹介が終わったところでイリスが俺が話した四腕熊(アームズグリズリー)についての情報をハワードに説明し始めた。彼女の説明に驚いた様子のハワードが俺の肩を激しく揺さぶる。


「や、あの、ちょっと、お、落ち着いて!確かに死骸は見ましたけど場所もよく覚えてないし群狼鼠(ラットハウパック)が群がってたんでもう死骸も残ってないと思いますよ?」


 なんとかハワードを引き剥がしながらそう説明すると、彼は「そうか……」と言って肩を落とした。ギルドにはそのまま報告するそうだが、おそらくは彼らが受けた依頼は失敗扱いになるらしい。


 ハワードたちとそんな話をしていると周囲が騒がしいことに気づいた。どうやら森に入っていた他の冒険者たちが戻ってきたらしくいつの間にか周りにいる人が増えていた。


「ハワード、取り込み中のところ悪いんだが報告だ。ヤマトの奴、見つからなかったよ……」


 男が一人近づいてくると俺のほうを訝しげに見ながらハワードに報告を始めた。男の報告を聞いたハワードは表情を暗くしながら「そうか……仕方ないな……」とつぶやいた。


 「ねぇねぇ、アンタが森でイリスちゃんに拾われたって人?」


ハワードたちのやり取りを聞いていると後ろから声を掛けられた。振り返ってみるとそこにいたのは黒髪の少年だった。


(日本人っ!?)


内心で動揺する俺をよそに、少年はどこかの自称神を思い出させるようなニヤニヤとした厭な笑みを浮かべながら「あっ!僕はレオンっていいます。イリスちゃんと仲良くしてるんでよろしくお願いします」とやたらと『仲良く』を強調しながら自己紹介してきた。俺は少年が『レオン』と名乗ったことに違和感を感じながら「俺はセイマ。こちらこそよろしく」と自己紹介を返した。


 レオンという少年と話しているとどこかから視線を感じた。俺は不審に思われない程度に周囲を窺う。すると一人気になる人物がいた。ハワードと同じような全身鎧ではあるがその色は真っ黒。バイザーをきっちりと下ろした兜を被っているため視線や性別は分からないが、遠目に見ても俺よりも背が高そうなのでたぶん男。そこまで確認したところで俺はその人物から目を逸らした。だが、その後も見られているような視線が無くなることはなかった。

第五話は21時頃に投稿予定です。

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