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【勇者ゲーム】Fragments:13 —13人の勇者候補は願いを叶えるため異世界で殺し合う—【リメイク】  作者: 玄野 黒桜
第一章 知らない空が現実(きょう)になる

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第十五話 どこの世界でも人間関係は複雑だ

更新遅くなりました!

「セ、セイマさんッ!?どうしたんですか?」


 イリスが驚いて目を丸くしている。まあそりゃ朝、家から出たところに俺がいたら当然だろうけど。


「う、うん……まあ、その……ちょっと提案なんだけど—」


 驚く彼女に今後、冒険者活動以外の時間はできる限り送り迎えをさせてもらえないかと提案する。イリスは「そ、そんな!悪いです!」と恐縮したけれど、そこは今後も昨日みたいなことがあるかもしれないから一人歩きは控えたほうがいいと言って押し切る。「昨日みたいな」と言ったところで思い出してしまったのか彼女の表情が一瞬曇ったけど、そこは許してほしい。兎にも角にも「アイツの暴走は俺にも原因があると思うから!」と言ってイリスには強引に納得してもらった。


「えっ?レイジさんがどういう人か、ですか?」


 イリスを説得してギルドへ向かう道すがら、俺は気になっていた黒騎士—『レイジ』がどういう人物なのかを聞いてみた。少なくとも名前を知っているくらいだしそれなりに交流もあるんだと思ったんだけど……返ってきたのは「すみません……その……あまりよく知らなくて」という答えだった。


「この街に来たのはレオンの少し後だったと思います」


 なんといってもあの真っ黒なフルプレートだ。最初ギルドに現れたときは結構な噂になったらしい。いくつかのパーティーがすぐに勧誘したそうだけど、その誘いを全部「興味がない」と断ってしまったらしい。以降はたまに合同パーティーに参加することはあっても基本はソロで活動しているんだとか。


「あれ?だけど、この前は女の子が迎えに来てなかった?」


 俺が初めてこの街に来たとき、確か門のところで奴に駆け寄る少女がいたはずだ。


「ああ、あの娘ですか」


 そう言ってからイリスが説明してくれたことによるとあの少女は『エリーゼ』というらしい。なんでもレイジと一緒に旅をしているそうだが冒険者登録はしていないのだとか。基本的に依頼は奴一人でこなして少女は留守番をしているそうだ。


「まだ十二歳なんですって。あの歳で旅なんて大変でしょうにすごく素直でいい娘ですよ」


 どうやらたまにギルドで奴を待っているエリーゼと話すらしく、一人っ子のイリスとしては妹みたいな感覚なんだろう。なんとなく言葉の端々から彼女のことが可愛くて仕方がないということが伝わってくる。ただ、肝心のあの娘がなぜレイジと一緒に行動しているかまでは知らないみたいだ。


(勇者候補らしい奴と謎の少女か……俺やレオンよりよっぽど主人公っぽいな)


 結局、レイジのことは詳しく分からないまま俺たちはギルドに到着した。


「じゃあまた帰りに!」


 なんとなくイリスの中で送り迎えについての折り合いがついたのか、彼女はどこか嬉しそうに手を振るとパーティーメンバーと合流するために俺から離れていった。その姿を見送ってから俺も今日受ける依頼を探すべく依頼書が貼り出された掲示板へ向かおうとして後ろから「セイマッ!」と声を掛けられた。誰かなんて見なくても分かる。歩き出そうとした足を止めて振り返ると案の定、リネットとルデリオがこちらに駆け寄ってくるのが見えた。


「おはよう、リネットにルデリオ」


「おはようセイマ!」


「おはようございます」


 二人が近付いてくるのを待ってから軽く挨拶を交わす。


「二人も今から依頼探しか?」


「ううん。もう依頼の目星は付けてあるわ!でも、そう言うってことはあんたはまだ今日の依頼を決めてないのよね?」


 てっきり俺と同じで今来たところなのかと思ったんだけど違ったらしい。質問の意図が分からず首を傾げながら「そうだけど」と返す。


「じゃあ今日はあたしたちと一緒にパーティーを組みましょう!」


 どうやら二人は森の浅いところで一角兎(ホーンラビット)暴れ羊(バーサクシープ)の討伐依頼を受けたいらしい。なんでも宿屋の親父から夕食を現物納品したら「宿代をまけてやる」と言われたそうでリネットの鼻息が荒い。まあ駆け出し冒険者にとって日々の宿代っていうのは一番の悩みの種だからな。


「そういうことなら別にいいんだけど、そもそも石級(ストーンランク)で討伐依頼って受けられるのか?」


 俺が知ってる限り、石級(ストーン)が受けられる依頼はほとんどが街中の雑用みたいなものばっかりだったはずだ。まさかとは思うけど依頼を受けずに森に行くつもりじゃないだろうな?


「あんた知らないの?一角兎(ホーンラビット)とか暴れ羊(バーサクシープ)の討伐依頼はパーティーなら石級(ストーン)でも受けられるのよ!」


 俺の心配に対してリネットは「どうだ!」と言わんばかりに胸を張る。そんなルールあったっけ?と思いながら詳しく聞いてみると、一角兎(ホーンラビット)暴れ羊(バーサクシープ)はそもそも食用として需要が高いけど討伐難易度が低いからそれなりのランクになった冒険者からは人気が低いんだとか。それじゃ肉不足になるってことで設けられているのがパーティー受注制度なんだそうだ。どうでもいいけどそのドヤ顔はやめろ。ちょっと負けた気がするだろうが!


「まあ依頼が受けられるのは分かったよ。じゃあ今日は三人でパーティー組むか」


「そうこなくっちゃ!じゃあ早速パーティー登録するわよ!」


「わ、分かった!行くから!ちょっ、引っ—ッ!?」


「「セイマ(さん)?」」


 「引っ張るな」と続けようとしたところで強烈な視線を感じた。二人が不思議そうに尋ねてくるが答える余裕もなく、俺は慌ててその視線の正体に探す。


「…………」


 いた!レオン—いや、サトウだ。ギルドの中央付近にある掲示板の前にいる俺たちとはかなり離れてギルドの入り口の反対側、最も奥の壁に背を預けるようにしてこちらを睨みつけている。


(イリスが近くにいなくてよかった)


 今の奴には何をするか分からない危うさを感じる。


「ねぇ?セイマ?どうかしたの?あっちに何かあるの?」


「ん?えっ、あっ、いや、何でもない。受付に行こう」


 目の前を何かが左右に揺れているのに気づいて思考に沈んでいた意識が浮上する。どうやら一向に反応しない俺を不思議に思ったリネットが目の前で手を振っていたみたいだ。俺の視線の先を追おうとするリネットを遮って受付に行こうと急かす。あんなドロドロとした視線をリネットたちに見させるわけにはいかない。


(どうしたもんかねぇ……)


 リネットは「そ、そう?」と俺の反応に首を傾げていたがそこまで執着することもなく受付に向かって歩き始めてくれた。俺はその後ろを歩きながら内心で溜息を吐いた。




■□■□■□■□



「お待たせいたしました。本日はどのようなご用件でしょうか?」


 臨時パーティーの登録を終えて依頼受注窓口にやってきた。どうでもいいけどこの内容毎に窓口分けるの効率悪くないか?そんなとこまでお役所みたいにしなくていいのに……


「この依頼の受注お願いしまーす!」


 俺が役所の効率性に思いを馳せている間にリネットが元気よく依頼書を受付のおばちゃんに提出する。


「はい、お預かりします……ふむふむ……リネットさんとルデリオさんのパーティー『ヴェルコーニェの杖』にセイマさんを臨時メンバーに加えての討伐依頼ですね。全員ランクは石級(ストーン)ですか……はい、この内容なら問題ありません」


(おおっ!ちゃんと受注できた)


 別にリネットのことを疑っていたわけじゃないけど、どうにもこの娘はそそっかしいと言うか猪突猛進なところがあるからちょっと不安だったけどさすがにそこまで大雑把じゃなかったみたいだ。ちなみに二人のパーティー名にある『ヴェルコーニェ』というのは伝説的な魔法使い(キャスター)の名前らしい。うーん、こんなところにも二人の力関係が……たまには主張してもいいんだぞ、ルデリオ!


「痛てッ!?」


 俺が内心で受注できたことに安堵してると足に痛みが走った。見るとリネットが俺の足の甲をグリグリと踵で踏みつけている。俺の声に驚いたのか受付のおばちゃんが「ど、どうかしましたかっ!」と慌てて書類から顔を上げたけど、リネットがニコニコしながら「何でもないので気にしないでください」と答えた。目が笑ってない……


「……(あんたがあたしことをどう思ってるか、よぉぉぉく分かったわ)」


(ヤベぇッ!)


 どうやら思っていたことが口に出ていたらしい。全くこちらを見ずに言うリネットに俺は「ハッハッハッ」と乾いた笑いで誤魔化した。


「あっ、セイマさんはこの依頼を達成すると石級(ストーン)から鉄級(アイアン)にランクアップですね」


「そうなんですか?」


「なんですってェェッ!」


 もうそんなにポイント溜まってたんだ。俺は受付のおばちゃんに軽く答えたんだけど、リネットが何やら騒がしい。どういうことか説明しろと詰め寄ってくる。ルデリオも「鉄級(アイアン)……」と呟いたまま固まってる。いやいや、君たち俺が普段から雑用依頼受けてたの知ってるよね?


「クッ!すぐに追い付くんだから!!」


 一瞬地面に崩れ落ちかけたリネットだったけどなんとか耐えたようで、俺に向かって「ビシッ!」と音がしそうな勢いで指差すと高らかに宣言してくる。ホントこの娘は漫画かアニメのキャラみたいだな。コラッ!「あんたもなんか言ってやりなさい!」じゃねぇよ!ルデリオを焚きつけるな!


「ほら、騒いでないでもう行くぞ」


 さすがにいつまでも受付前で騒いでいるのは迷惑だ。俺は騒いでいるリネットをあしらいながらササッと受注手続きを終わらせてギルドの入り口に向かって歩き始めた。後ろからは未だに「うーうー」と唸っているリネットとそれを宥めるルデリオが続く。


「ギャーギャーギャーギャーうっせェなー。田舎もんは礼儀も知らないのかァ?まあ、田舎もんじゃしょうがねぇか」


「誰が田舎もんですってぇぇぇッ!」


 もうすぐギルドの入り口というところで聞こえたきた悪態にリネットが激高する。


(はぁぁぁ。今日はトラブルが多いなぁ)


 俺は内心で溜息を吐きながら仕方なく足を止めて振り返った。そこにいたのは初心者講習初日にトラブルを起こした大柄少年—ダンだった。彼は詰め寄るリネットの相手をするつもりがないのか面倒くさそうにリネット、リネットの腕を掴んでいるルデリオ、俺の順番に視線を向けたのだが、何かに気づいたのか「ニヤァァ」という嫌な笑みを浮かべた。


「おいおい、お前らまだ石級(ストーン)なのかよ?ハッハッハッ、こいつァお笑いだ」


 そう言いながら彼は自分の首から下げたギルドプレートを見せびらかすようにひらひらと振って見せた。


「ッ!?」


鉄級(アイアン)……?」


 リネットが息を飲み、ルデリオが呆然と呟く。そう、彼が見せびらせしているそれは鉄級(アイアン)のギルドプレートだった。


「おっ?なんだ?田舎もんでも“これ”の意味くらいは知ってるんだな。お前らが無駄な講習なんて受けてる間に俺はとっくの昔にランクアップしてんだよ。石級(ストーン)ごときが対等な口を利いてんじゃねぇよ」


 ダンはわざわざ小柄なリネットに視線を合わせるように屈むと目の前にギルドプレートをチラつかせてさらに煽る。


「なんでっす「はいはい、おめっとさん。俺たちも追いつくように頑張るよ。で、もう行っていいか?」て!へっ?」


 俺はダンの挑発に乗りそうなリネットの言葉に割り込んだ。文句を言おうとしていたリネットが口をパクパクさせながらこっちを見てるけど、悪いな、今は構ってやれない。俺の言葉にそれまでリネットの目の前でニヤついていたダンがこちらを見るとゆっくりと体を起こして「ああん?」と凄んでくる。


「っんだよ。せっかく俺が現実を教えてやってるのに……って誰かと思えばお前もあんときの田舎もんかよ。ハッハッハッ。こりゃいい!傑作だ!田舎もんと田舎もんが徒党を組んだのかよ。止めとけ止めとけ。お前らじゃどんなに頑張ってもこのウィーレストじゃなーんもできねぇよ。とっとと田舎に帰れや」


 ダンは小バカにするように笑うと「なぁ、お前もそう思うだろ?」と言ってリネットの腕を掴んだまま固まっているルデリオにニヤニヤと嫌な笑みを向ける。視線を向けられたルデリオを「ヒィッ」と悲鳴を漏らしてリネットの腕を抱えるようにしてブルブルと震えている。


「何よッ!えッらそうに!あたしたちだってこれから一角兎(ホーンラビット)暴れ羊(バーサクシープ)を討伐するんだからすぐに追い付いてやるわよッ!」


「へぇー。一角兎(ホーンラビット)暴れ羊(バーサクシープ)ねぇ。まあお前ら田舎もんにも無理じゃねぇか?精々ビビッてションベン漏らす前に田舎に帰ってママのおっぱいでも吸ってるほうがお似合いだぜ」


 激高したリネットがまたダンに詰め寄る。だけど……なんだろう?リネットが「討伐」と言った瞬間、ダンの表情に一瞬だけど嫌なものを感じた。


「ちょと!まだ話は終わってないわよ!待ちなさいッ!」


「リ、リネットォォ~」


 俺がダンの表情に違和感を覚えたのは一瞬。気づくとさっきまでと同じこちらを小バカにしたような笑みを浮かべていた。奴は言うだけ言うともう用はないとばかりに俺たちに背を向けるとギルドの奥へと歩いていってしまう。ダメだ。とにかく今はリネットを止めるのが先だ。


「もう!何なのよアイツっ!!」


「とりあえずさっさと行こう。ルデリオも」


 未だに怒りが収まらない様子のリネットをルデリオと一緒に引き摺るようにしてギルドを出る。


「いい?ルー。絶対あたしたちも鉄級(アイアン)上がるわよ!」


 拙いな。このままだとルデリオを巻き込んでリネットが暴走しそうだ。さすがにこのままにしておくわけにはいかないな。


「ちょっと!セイマ!どうしたのよ!ほら、早く行かないとアイツに追いつけないじゃない!」


 俺がいきなり立ち止まったのでリネットがイライラしながら「早く早く」と急かしてくる。俺はそれを「まあ待て」言って一旦落ち着かせる。


「リネット、ルデリオ、冒険者にとって一番大切なことはなんだった?」


「何よ急に」


「いいから答えろ。レスタン講師が言ってた冒険者にとって一番大切なことはなんだった?」


「…………」


「……『生き残ること』です」


 あからさまに不機嫌なリネットに対して俺は有無を言わさず質問する。完全にヘソを曲げて黙り込んだ彼女に変わってルデリオが答えた。


「そうだ。リネット、お前が暴走して死ぬのは勝手だ。だけど、それでもし、お前じゃなくてルデリオが死んだらどうする?」


「ッ!?それはッ!」


 俺の言葉に何か言い返そうとしたリネットだったけど、何も言い返せないまま悔しそうに唇を噛んで俯いてしまった。そのリネットの様子にどうしていいのか分からないのかルデリオは彼女と俺を交互に見ながらおろおろしている。


「ダンの言い方には俺も腹が立った。だけど、それで焦って死んじゃったらそれこそアイツの思う壺じゃないか?そんなのもっと悔しいだろ?」


 俺はできるだけゆっくりと二人に語り掛ける。言葉一つ一つがきちんと二人の中に届くように。意味を咀嚼して血肉になるように。


「俺たちは俺たちのやり方でアイツを見返してやろう。なあ、リネット、ルデリオ。そう思わないか?」


 俺がそう締めくくったときには俯いていたリネットは顔をしっかり上げていつもの真っ直ぐな瞳で俺を見ていた。おろおろしていたルデリオの瞳にも何か決意のようなものが宿っている気がする。うん、もう大丈夫そうだ。


「よし!じゃあそろそろ行こう。俺たちでアイツを見返してやろうぜ!」


「ええッ!」


「はいッ!」


 二人の力強い返事とともに俺たちは森を目指して街を出た。

次回更新は1月17日21時の予定です。

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