Requiem VI 【……聞かれた?】
「……ニオ、ほんとにくるの?」
「行きます!」
「……」
「二人の方が安全ですよ? わたし、見張ってあげますから!」
むふん、と胸を反らし、ニオはにこっと笑った。
……見張り、というより聞きたいだけなんじゃないの……?
そう思ったが、シェルファはふわっと口角を上げ、どこか底冷えのするような笑顔を浮かべる。
「……そっか。じゃあ、おねがいするね? ……もしちがうなにかにきをとられて、だれかがぼくのことみた、ってなったら……わかってるよね?」
「……はぃ。分かってます……」
「うん。それならいいんだよ」
丸いお団子をしゅんとさせて、ニオは肩を落とした。
そのしぐさに、シェルファはくす、と笑った。
「……? ニオ? どうしたの?」
「あ、いや……なんか、気配を感じた気がして。まあ、気のせいだとは思いますけど」
ニオがふと後ろを振り向いたので、シェルファは目をぱちくりとさせる。
ふるふると首を振って、ニオは何もなかったように歩き出した。
ことんと首を傾げながら、シェルファは彼女の背中を追った。
「……あぁ……」
ニオは、感嘆の息を吐いた。
主・シェルファは、扉を隔てた向こうで音楽を奏でている。
それは聞いたものを魅了する、神の如き音楽。
透き通った、けれど少し哀しげな、シェルファの本当の“こころ”の音楽。
「——っ⁉」
その時。
ニオは、ぞっと背筋を悪寒が走り抜けるのを感じた。
ばっと振り向くと、ひらりと赤いドレスの裾が月当たりに消えていった。
……聞かれた?
すっと目を眇めて、ニオはその裾を追いかけた。




