Requiem IV【うつくしい音楽】
「——様? シェルファ様……?」
アイヴレイヴ王国・王宮。その一角、第三王子シェルファの部屋。
そこに、ある一人のメイドが来ていた。彼女は遠慮がちにコンコンと扉を叩き、彼女の主の名を呼ぶ。
しかしいつまで経っても出てこないため、メイド……ニオはかちゃりと扉を開けた。
その瞬間——
彼女はその光景に、音に目を、耳を、心を奪われた。
——きれ、い。
その音以外、それを奏でている主以外、目に、耳に、心に残らなかった。
頬を勝手に滑り落ちた一筋の滴も、気にならない。
ニオは、主から片時も目を、耳を、心を離さなかった。
「——、あれ……? ニオ?」
「ぁ……シェルファ、さま……」
「……ニオ……みた、の。きいた……の」
涙目でこくっと頷くと、主——シェルファはふ、とあきらめたような息を吐いた。
「……みちゃったんだ……」
ニオにはそれが自分への諦念に聞こえ、うるうると目を涙で濡らした。
「ごめんなさい……っ‼」
しかし、予想に反しシェルファは、きょとんと驚いたように目を丸くした。
「え、どうしてニオがあやまるの? ……あやまらなきゃなのは、こっちのほうでしょ? かってにがっきつかってるから。メレディーナねえさまに、おまえはがっきにさわるなっていわれてたのに」
こて、と首を傾げ、シェルファはそういった。
……ほんとにあの人××でくれないかなほんとに××てくれないかな×ねよ×ね×ね×ね×ね×ねシェルファ様はあんたなんかと比べ物にならないくらいなのにお前が指図すんなよく×が……
ぐっと拳を握り締め、ぼそぼそと第一王女メレディーナへの呪詛を呟く。
そして、主をきっとにらみつけた。
「あれは、メレディーナやr……うん。サマのたわごとでしょう。シェルファ様がお気になさることではございません」
ニオの言葉に怒りがにじんでいることに気づいたのか、シェルファはぱちぱちと瞬きをした。
「え、あ……ごめん」
その謝罪に、ニオは怒りがどんどんすぼみ逆に悲しみが膨らんでいく、風船のような気持ちの感覚を覚えた。
——あぁもう、ほんとにわたしの主様は……。
「とにかくっ、シェルファ様が謝ることじゃないですからっ!」
ニオはそう言い捨て、扉を開ける。
「あ、ぇ? え、あ、うん……?」
シェルファの戸惑うような声が聞こえたが、ニオは無視してそのまま部屋を出て行った。
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