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Requiem II【彩りが亡くなった世界になどもう、用はない。】

「——レイグ!」

「おー? なんだー、レテルファ」


 レテルファ。当時6歳。


 しゃらしゃらと鈴が転がるように笑いながら、レイグを呼ぶ。


 その美しい少年に、レイグも思わず笑みが零れる。


「みて、どろだんご! きれいにできたのー!」

「おー、そうか! 綺麗だなー! すごいな、レテルファは!」

「えへへ」


 照れたように愛らしく笑う彼の柔らかく繊細な髪をくしゃっと撫で、レイ

グは真っ青の高い空を見上げた。


「……こんな日常が、ずっと続けばいいんだけどな」

「ん? レイグ、どうしたのー?」

「ん、あぁいやなんでもないぞ。じゃあ次は何して遊ぶ?」

「えっとねぇ……おにごこ!」

「鬼ごっこ⁉ 俺もうそんな元気ねぇぞ……」

「あははっ」


 きらきら、しゃらしゃら。


 鈴が転がるような、煌めくような笑い声が、うつくしい青空に消えていった。




 それから、3年後。


「——ねぇ、レイグ……? レイグ、どうしたの……?」


 レテルファが友人と遊び、家に帰ってくると、レイグが倒れていた。


 それから、体を揺さぶり、声をかけている。


 だが、返事は、ない。


「ねぇ……レイグ! レイグ、おきてよぉ……またおにごっこしようよぉ……! なんで起きないのぉ……!」


 レテルファが泣くと、すぐにレイグは彼のもとに来て、慰めてくれた。


 なのに、レイグはレテルファを慰めてくれない。


 あの大きな手で、頭をくしゃっと撫でてくれない。


「レイグ……レイグ……! うわあぁぁぁぁぁっ、あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……っ‼」


 涙が、レイグの顔にぽつ、ぽつと雨のように落ちる。


 レイグの目は、かたくおもく鎖されている。


「、ん……?」


 地面についていた手に、じわっと何かがしみ込んだ。


 何ともなしに手を見て——


 レテルファは、ひゅっと息を呑んだ。


「、血……?」


 いや、そんなわけない。


 だって、自分は血なんて流してない。


 けがなんて、自分は——


「れい、ぐ……」


 そろそろと、レイグの体を探る。


 そして、レテルファの小さな脆い手は、あるところでぴたっと止まった。


「……おな、か……」


 腹部から、レイグが——


 血を、流している。


「なん、で……?」


 あ。


「ころされた」


 そう言って、しっくりきた。


「ころされた。レイグは、ころされた……」


 あぁ。レイグは、殺されたのだ。


 なんで?


 なんで、なんで、なんでなんでなんで……?


 なんで、レイグをころしたの?


 レイグが、何かした?


 レイグは……何もしてない。


 何もしてない……!


 レテルファは、ふ、と一度嘆息すると、言った。


「レイグを、ころしたやつがいる……」


 はっ、と乾いた笑みが漏れた。


 それは、およそ9歳の少年とは思えないほどの、暗い笑み。瞳には、暗い

光。


「ふくしゅうしてやる」


 復讐、してやる。


 絶対に見つけ出して、殺してやる。


 レイグよりも苦しくて、辛くて、痛い思いをさせてやる。



 ——でも。



「今は、むりだなぁ……」


 父を、亡くして。


 母に、捨てられて。


 死にそうになっていたところを、救ってくれた。


 灰色だった、ろくでもないままだった人生を、救ってくれて。


 レイグにたすけられたときから、人生は色とりどりになった。


 レイグは、最期。


 どんな表情(かお)を、していたんだろう。


 その表情(かお)を見たやつは、レイグを殺したやつかな。


 レイグ。


 ねぇ、ぼく……


 レイグに、救われたんだ。


 レイグのこと、大好きだよ。


 だからさ。


 ぼく、レイグを殺したやつを、殺してやるからさ。


 ——ぼくのこと、迎えに来てね。


 でも、今は、レイグがいない。


 だからね。

 

 彩りが亡くなった世界なんて、もう。


「用は、ないよ」


 そして、レテルファは迷いもなく、


 滑らかに包丁で、自身の喉を刺した。



 苦しみながら殺された、レイグを想いながら。


 

 ——レイグ。


 大好き。

読んでくださってありがとうございます。

長めの作品ですので、最後まで応援して下さってくれればうれしいです。

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