プロローグ
世の中にはシアワセがある。
シアワセには種類がある。
大まかに分けて二つ、何かを得たり、願いをかなえたときのシアワセ。もう一つは憎むものに罰をあたえたり、*すという快感によって得るシアワセの二つ。
人が幸せになるとシアワセの玉が現れる。
シアワセの玉はシアワセハンターと呼ばれるシアワセを生むのに協力し、生まれたシアワセ玉を集める者達にしか見えない。
シアワセハンターは、シアワセを集めるごとに位が上がり、いままでに3人しか存在しないシアワセマスターを目指す。
この物語は何も知らない善の心をもつシアワセハンター見習いと、悪の心を持つシアワセハンター見習い、そしてすべてを知るシアワセマスターの物語である。
ある、夏の日。僕は偶然会ってしまった。
会った相手は黒髪のショートヘア。目は蒼く、身長は170センチくらいの女性だ。
僕は何も知らずにその女性に声をかけてしまった。なぜ声をかけたのか、僕にはわからない。でもそれは、間違いではなかっただろう。
「あ、あのっ」
「……なにかしら?」
「あ、いえ、その……」
「……あなた。シアワセハンターの素質があるわ」
「へ?」
「あなた、名前は?」
「あ、黒木茂と申します!」
女性はなぜか少し驚いたようだった。
「そう、茂君ね。覚えたわ。あなた、シアワセハンターの素質がある。シアワセハンターになりなさい。と、いわれてもまだ理解はできないわよね」
「いえ、判ります。私の父もシアワセハンターだったので」
「そう、やっぱりね」
「なにがやっぱりなんですか?」
「まあ、ここではなんだから中で話しましょう」
そして僕はその女性に連れて行かれた。
連れて行かれた先は普通の家。だと思う。
その家でその女性は自己紹介をした。
その女性の名は赤羽歌倶夜というそうだ。
僕はまだなにも考えていなかった。
これから先に起こる大騒動と、シアワセ狩りの大変さを、僕は知らなかった。
プロローグ 完