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終末世界の解析者(リコンストラクター)~現代ダンジョンに滅ぼされた世界で最強クラフトスキルを駆使して送る、快適楽園スローライフ!~  作者: はむかつ
4章『俺の手を汚す必要はないよ』

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34 プールサイドの攻防

 俺は不自然な小山に掛けられたブルーシートをめくろうと思ったが、その必要はなかった。

 懐中電灯が示した先、ブルーシートの端から人間の手がはみ出ている。


「これが同じ人間のすることかよ……」


 俺は急にタケル、アリサ、ミナの3人が心配になった。

 こんなことを平気でする奴らに生殺与奪の権利を握られている。

 慎重に事を進めたかったが、急いだほうが良さそうだ。


 俺は校舎の入り口にある下駄箱を超えて、2階へ通じる階段を上る。

 さっきから人の気配がまるでないのは、そもそも人の数が圧倒的に少ないからだろう。

 懐中電灯を照らしながら全ての教室の様子を覗いてみる。


「ここも……何もなし、か」


 代り映えのしない光景が続く。

 いくつかの教室を回った後、俺は『理科準備室』と書かれたドアを開けた。

 他の教室とは比べ物にならないほど、床に物が散乱している。

 俺は足元に転がっていた茶色のガラス瓶を拾い上げた。


 『金属マグネシウム粉末(Mg) ― 可燃性/高温注意 ―』


 そのラベルの下部には、手書きで『水厳禁!』と赤インクが走っている。

 俺は中学生の頃に授業でやった実験の内容を思い出していた。


「これ、使えるかもな」


 俺はそのガラス瓶を異空間ポケットに収納した。


 それ以降は特に目ぼしいものもなく、廊下の端まで来た俺は、屋上への階段を昇って行った。

 扉を開けると空気が屋内へ流れ込む。

 相変わらず辺りは暗く、懐中電灯がなければ前へ進むこともできない。


 俺は屋上の縁から敷地内を見渡した。

 基本的に暗くて何も見えないが、松明の明かりが揺らめいている場所が2ヶ所ほどあった。


「ん? あそこは……プールか?」


 体育館からほど近い場所に、コンクリートでできた長方形のゾーンがある。

 そのプールサイドに松明の明かりが二つあった。


「理由がなきゃあんなところに人を配置しないよな」


 俺は階段を降り、校舎の外壁を通ってプールを目指した。

 近くに来るにつれ、男二人の話し声が徐々に聞こえてくる。


「ふぅ、食った食った、久しぶりに腹いっぱいになったぜ」

「まぁ野菜ばかりだったけどな、腹が膨れりゃなんだっていいや」

「で? 二人のゲストが来たんだから、もちろん今夜はパーティだろ?」

「そりゃそうだろ、お頭なんて血が滾ってんじゃねえのかな。二人とも使い物にならなくなりそうだ……可哀そうに」

「お前、前回アリサに断られてたよな」

「そうなんだよ、お頭、手加減してくんねえかなぁ」


 ゲスい会話が聞こえてくる。

 アリサの名前が出てきたということは、やはり二人は捕まって監禁されているようだ。

 なんとか助け出さないと。


「なぁ、お頭が来る前にやっちまうってのはどうだ?」

「マジかよお前……死にてえのかよ」

「いやいや、こんなチャンス二度とないぜ? すぐ終わらせりゃあわかんねえって。お前にはミナのほうをやるから」

「……それもありだな。あ、でもダメだ。ここのカギはお頭が持ってるわ」


 二人してため息をつく。

 松明の先にコンクリートで出来た倉庫らしき建物がある。

 会話を聞くに、二人が監禁されているのはおそらくそこだな。


 しかし助け出すにしても、まずこの男どもをなんとかしなきゃならない。

 ひとりで立ち向かおうものならやり返されるだろうし、羽矢で狙撃しようにも角度が悪く、せいぜい松明を狙うことくらいしかできない。


「ん、松明か……使えるな」


 俺はさっき理科準備室で手に入れていた茶色いガラス瓶を取り出した。

 そして大きめのガーゼの上に瓶の中の粉末を出し、こぼれないように包んで輪ゴムで止める。

 完成した粉末玉をスリンガーにセットすると、俺は松明に照準を定めた。


「想像通りの展開になってくれればいいんだけどな」


 俺は粉末玉が空中分解しないよう、少し力を抜いてゆっくり目に放った。

 玉は弧を描いて松明の火に当たると、ボウッ! と爆ぜるような音とともに、周囲が白光で満たされた。


「ぐあっ!」

「げぇ、な、なんだ!?」


 視界が一瞬で真っ白に塗り潰され、男どもは呻き声を上げながらその場にうずくまった。

 目をつぶっていた俺はすぐに階段を駆け上がり、男どもの前に立つ。


 ゴンッ ゴンッ


 鉄パイプの一撃を頭に食らった男どもはその場に崩れ落ちた。


 マグネシウムの粉末は、燃焼させると太陽光に近い白色光を発する。

 特に暗闇に目が慣れた状態でその光が目に入れば、視細胞が飽和してしばらくは何も見えなくなるだろう。

 想像通りの反応が出てくれてよかった。


「よし、今のうちに二人を助け出そう」


 しかし男どもの言っていた通り、金属製の扉には鍵がかかっていた。

 俺は少し逡巡するが、周りの壁がコンクリートで出来ていることを思い出した。


「あ、そうか」


 扉の横の壁に手を当てる。


 『修理分解リペアブレイク


 ドザザザササァァァ


 目の前のコンクリートが砂のように崩れて地面に流れる。

 人が一人通れるくらいの穴がそこに開いていた。


「大丈夫か?」

「え、ユウト? なんで……?」


 穴から中を覗くと、アリサが目を丸くして驚いていた。

 その隣で泣きそうになっているミナ。


「二人を助けに来たに決まってるだろう? さぁ、今のうちにここを出よう」

「ユウちゃぁぁん!」


 ミナが俺の首にしがみ付く。

 いつも元気が取り柄のミナがここまで取り乱しているのは初めて見た。

 というか、気が付けば二人とも下着姿だ。


「えーと、ミナ、ちょっとだけいいか?」


 俺は努めて冷静にミナの身体を離すと、着ていた上着を脱いでミナに掛ける。


「あ、そうだった……ちょっと恥ずい」


 ミナは肩にかかった上着の両端をぎゅっと胸元で握った。

 俺は異空間ポケットから自分の替えのTシャツを取り出すと、アリサに渡した。


「すまん、こんなものしかなくて……もっと服を持ち歩いていればよかったよ」

「ううん、大丈夫、ありがとう、ユウト」


 俺は少し落ち着いた二人を連れて、プールサイドから離れた。


「どこへ行くの?」

「そこの体育館でジュエリと待ち合わせしてるんだ」

「え、彼女も来てるの?」


 体育館への渡り廊下を進んでいると、突然曲がり角で下っ端のひとりと鉢合わせした。


「え?」

「はぁ?」


 その男は咄嗟に松明をこちらに向け、戦闘態勢に入る。


「誰だテメエ、その女をどこに連れてく気だ!」


 男がもう片方の手に持った鉄の棒を振りかぶる。

 こっちは武器をしまったままだ、まずい。

 俺は咄嗟にアリサとミナを庇った。

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