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 ミランダは、自身の背後に控えていた側使えに扇子で合図を出し、束となった書類をアレクシスに見せつけながら言った。


「ここにある書類には、殿下が国庫から多額の税金を取り出し、それらを使ってアイリス・フレッチ男爵令嬢に貢いだ事が書かれています」

「な、なんだと……ッ!?」

「殿下のおっしゃる崇高な愛を保つ為の品位維持費――としては、些か度が過ぎていると思われるかと……。中には、他国の重要人物に国家機密を漏らした――と言った、由々しき事態を告げる書類もございますわ」

「ッ……!?」


 衝撃の告発に貴族達がどよめく。

 アレクシスが手を出した国庫の中には、貴族から徴収した税金も納められているのだから当然だ。

 「よくよくみれば……」と言って、貴族の一人がアイリスを見ると、男爵令嬢には似つかわしくないほどに豪奢なドレスを身に纏っている。

 まるで未来の国母を名乗るような場違いなドレス。

 現在の王妃の存在すらも食ってしまいかねない行き過ぎたドレスは、どれだけ煌びやかに見えても下品に見える。

 アレクシスは心当たりがあったようで、ミランダの告発に動揺して言葉を発せないでいる。

 そんなアレクシスに寄り添い、うるうると目の縁に涙を浮かべる豪奢なドレスを身に纏う男爵令嬢。


「ミランダさまっ、こんな仕打ちあんまりです……! 殿下はただ、建国記念パーティと言う豪華な場で、私が気後れしないようにとドレスを用意してくださっただけで……!」

「そのドレスが良いとねだったのは、フレッチ男爵令嬢――貴女でしょう? そんな会話も、この記録珠きろくじゅに残されてますのよ?」


 ミランダがそう言うと、側使えが持っていた記録珠に魔力を流し込み、記録されている音声記録を流し始めた。


『レクス~。私、このドレスでは胸を張ってパーティに出席出来ません~。もっと、煌びやかなドレスじゃないと……』

『そんなに心配しなくても、アイリスの魅力ならどんなドレスを着ても会場中の視線を集めるに決まってるさ』

『そんな……恥ずかしいっ。私の存在を掻き消してしまうほどのドレスがあれば良いのに……。レクスしか、見つけられないような……』

『あぁ、アイリス……。なんて可愛らしい事を言うんだ? そうだな……。それなら、僕の目の色の宝石を散りばめたドレスなんてどうだい? それなら、君の存在を隠した上で、僕にしか見つけられないようになるだろう?』

『素敵……! レクスったら、本当に天才ねっ』

『ははっ。可愛いアイリスの為なら、幾らでも頭を捻れるさ――』


 聞くに堪え難い会話の一部を途中まで再生したところで、側使えは魔力を流し込むのをやめた。

 それらの録音を傍で聞いていたミランダはフッと笑い声を漏らす。


「可愛いフレッチ男爵令嬢の為なら、幾らでも頭を捻れるのですよね? アレクシス・ペリンジー第一王子殿下?」


 それなら、この場をどう切り抜けるのか見せてみろ。

 そんな心の声が聞こえてくるような挑発にアレクシスは顔を真っ赤に染め上げて「ぐぬぬ……」と拳を握りしめる事しか出来ていない。

 パチンと扇子で手の平を叩き、ミランダは言う。


「こちらの横領の証拠は国王陛下に提出させて頂きます。それから婚約破棄に関する書類も共に」


 くるりと踵を返し、パーティ会場を後にしようとした瞬間。


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