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第97話


 翌朝、俺たちは街の本館に顔を出した。前日の夜に門番から連絡があったんだろう。俺たちが本館の会議室に入るとそこにはサーラ長老をはじめ、いつものメンバーが揃っていた。


「東の端まで行ってきたのかい?」


「ええ、山の上から東方面を見てきました、森を抜けた先の草原の中にある城壁に囲まれた大きな街、あればマミナの街ですね?」


「そう。マミナの街じゃ。あの城壁の中の一軒家に我らの仲間が交代で住んで必要な物資を手当しておる」


 長老の話では、あの街に行くには山の上から山裾まで飛んで、そこから森を抜け、草原を歩いて街に行くそうだ。


「山の上からの移動は日が沈んでからじゃ。マミナの街は夜の時間は城門が閉まって街の出入りができぬ。なので城門の外側には誰もおらぬ」


 そうすると締め出された人たちが門の前で夜を明かしたりはしないんだろうか?そんな時に森から出て歩いて行ったらやばいんじゃないの?長老の話を聞いてそう思った俺。聞いてみようかなと思ったら先にカオリが同じことを聞いてくれた。


「大丈夫じゃ。あんた達はマミナの街の北に小さな村があるんだが見たかな?」


 確かにあったぞ、柵に囲まれている村だ。俺たちはありましたと頷く。


「あの村には宿屋がある。城門が閉まる時間が決まっておるので間に合わないと思った商人達があの村で夜を過ごして翌朝マミナに向かうんじゃ。我々もそうして一旦村に行ってそこで夜を過ごしてから街に入っておる。村は24時間開いている。マミナに入れなかった人たちのための宿や食堂で潤っておるそうだぞ」


 なるほど。一旦村に行ってそこで夜を明かして翌朝集団になってマミナの街に入るのか。確かにそうすれば見つかりにくい。ちくしょう、マミナの閉門に間に合わなかったぜ。なんて言いながら村に入って行って、女将、悪いけど一晩世話になるよ。こんな感じだろうな。


 ここまで転移してくると山の上から降りてマミナじゃなくてその村を目指すんだ。長い間にそんなノウハウを身につけたんだろう。ただ転移の距離が伸びるといずれ山の頂上から市内の一軒家にひとっ飛びで移動できるかもしれない。20Km転移できれば直接行けるだろう。まぁどうするかはこの街の人たちが決めりゃあいい事だ。


「それで今回東に行ってきたことでこの地方のおおよその地図が出来上がりました。距離については正確だと思います」


 俺はそう言うとポロで書いた地図に東方面を書き足した地図をテーブルの上に置いた。ちょうど東西の中間にこの山奥の街がある。地図を見ながらおおよその距離と途中の様子を説明する。地図を見せながら説明をするのはユイチの仕事だよとお姉さん2人に言われていたので昨日しっかりと部屋でリハーサルをしてきたんだよ。

 

 地図を見ていた長老は隣に座っているハミーさんに地図を渡すと顔をこちらに向けた。地図は彼女から次々と隣の人にまわっている。


「その地図は差し上げますよ。複写ですので」


 俺に顔を向けてありがとうと言った長老が続けて言った。


「つまり、ここは安全だということで良いのかな?」


「そうなりますね。東からも西からも直線距離で200Kmは離れています。しかも途中は全て標高が7、800メートル前後の山々が連なっています。当然山には道もないし魔獣がいる。この盆地のことは誰も知らない訳ですからここにピンポイントでやってくる事はまず不可能です」


「私たちは転移しながら東はもちろん、北と南方面も毎回見ていました。ずっと向こうまで山々が連なっていますよね。なのでこの街が見つかることはまずないでしょう」


 俺が説明した後にカオリが言った。当人たちも200年見つかっていないから大丈夫だとは思っていたがこうやって地図を見ると安心すると言ってくれている。作ってよかった。


 不在にしていたのは数日の間だったけど、その間も住民はしっかりと鍛錬を続けていたそうだ。この街の人は本当に真面目で熱心なんだよな。


 ただ全ての元になる魔力量を増やすのは一朝一夕にはいかない。長老らとの話し合いが終わると俺たちはグランドに出た。そこでは住民達が自主練を続けている。


 見ていると50名は槍を持って素振りをしたり、生活魔法で光の玉を作ったりしている。俺が見ていても最初の頃よりは光の玉が大きくなっている。魔法鍛錬組は何度もグランドを転移魔法で行ったり来たりしていた。


 俺たちを見ると自主練をしていた住民達が集まってきた。これは何か言わないといけない。そう思っているとカオリが皆の前で話出した。カオリかユキが言ってくれるとは思っていたけど万が一、ユイチ、お願い。なんて振られたらどうしようかとドキドキだったよ。


「皆さんこんにちは。私達がいない間もしっかりと鍛錬を続けていたのですね。地味な鍛錬ですがやれば必ず魔力量が増えます。元々魔力量が少ない戦士の私も魔力量が増えました。この鍛錬は引き続き行なってください。明日からまた午前中に鍛錬の指導をしますがこれからのおおまかな予定を説明します」


 指導の予定?まずいぞ。ノーアイデアだ。焦ったのが顔に出たのだろう。隣に立っているユキが俺の耳元で小さな声で言ってくれる。


「私が説明するからユイチは補足して」


「わかりました」


 助かった。頼りになるお姉さんだ。というか頼りにならない工藤悠一、俺だ。

 カオリの説明では槍の訓練を続けている人たちはもう少し魔力量が多くなるまでは魔法剣の指導はしない。引き続き魔力量を増やす鍛錬と槍に慣れる鍛錬を続けると言っている。次にユキが声を出した。


「転移の魔法を練習している皆さんも同じです。もう少し今の鍛錬を続けます。具体的にはこのグランドを20往復しても魔力が枯渇しなくなるまで続けます。20往復は4Kmになります。4Kmの転移ができるということは魔力量が多くなっていると言うことになります。その時点で浮遊魔法の鍛錬に移動します。浮遊魔法は最低でも5メートル浮き上がって10メートル移動することができるまで。それができたら召喚魔法になります」


 そう言うことかと俺は内心で納得していた。東に飛んでいる野営の時にユキからどれくらいの距離の転移が良いと思う?と聞かれていたんだよ。その時に俺は最低でも4Kmの距離の転移はできないと色々と困るんじゃないかという話をしていたんだけど、それはこういう事だったんだな。


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