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第93話

 まずユキが全員にその場で光の玉を作ってくださいと言った。光の玉の大きさ、輝き方を見れば魔力量が多いか少ないか、凡そ分かる。


 びっくりしたよ。皆この2ヶ月ちょっとしっかり鍛錬をしていたのが分かる。光の玉の大きさが以前とは全然違っている。大きさもそうだし輝きも今の方がずっと輝いている。想像以上だったよ。サーラ長老やハミーが作る光の玉は流石に大きく輝きも強い。


 住民達が作った光の玉を見ているユキが隣の俺に小声で言ってきた。


「皆短期間ですごく伸びてるわね」


「すごいね。びっくりした」


 やる気がある人が真面目に取り組むと成長がすごいというのを目の当たりにしたよ。俺みたいにのんびりやろうぜ。とか、まぁ明日でいいや。とか思いながらやると成長する速度が遅いんだということを再認識した。


「ちゃんと鍛錬を続けていたみたいですね。でも魔力量を増やす鍛錬は終わりがありません。引き続き毎日やってください。間違いなく魔力量は増えていきますから」


 ユキがそういうと全員が頷いた。地味な鍛錬だけど結果が目に見えるとやる気がでるよな。光の玉を消すと次は転移魔法を披露してもらう。


 20人のグループを5つ作ってグランドの中央からグランドの端、距離にして100メートルほど先にある5箇所の目標に転移し、そこから帰ってくるという指示を出したユキ。サーラ長老やハミー、ホートンもグループに入って転移をしている。この転移魔法も最初俺たちが見た時よりも素早くできる様になっていた。1度転移をしたあとで魔力量がどれくらい減ったか聞いてみると、皆まだまだ大丈夫だと言っている。


 100メートルの往復だからそれほど魔力は使っていないだろう。


「この前も言いましたが転移する距離は魔力量に比例します。基本は魔力量です。これを続けることで魔力量は増えますし、魔法を使うことで自然と魔力のロスが減ります」


 ユキが全部言ってくれているのを隣で聞きながら、この100人は転移の距離を伸ばすための訓練をした方がいいのか、それとももう少し転移魔法に慣れる方がいいのかどっちがいいんだろうと考えている俺。


 自分の時は少しずつ距離を伸ばしていったけど、それは俺の魔力量が多かったからで、その時の自分のやり方をここでやるのはまだ早いかもしれない。まずは魔力量だよ。


 転移をしている住民達を見ながらユキにその話をすると、彼女もまだ早いかもと言う。俺と同じ意見だ。全員が2度目の転移をしたところでユキが言った。


「転移の魔法の基礎はみなさんできています。魔力量を増やしてください。それから少しずと距離を伸ばして行きましょう。焦る必要はありませんから」


「ユキとユイチが新しい距離を指示するまでは、今の100メートルの往復を続けるということじゃな」


 サーラさんが聞いてきた。おそらく他の人たちもそこが知りたいんだろう。


「ユイチ、お願い」


「サーラさんの仰る通りです。距離を伸ばすのはまだです。100メートルの往復をしながら光の玉を作る鍛錬を続けてください。転移魔法も使えば使うだけ魔力量が増えますが、転移魔法は一度で使う魔力が多いので効率的ではありません。基本の光の玉や水玉を魔法で作るのが魔力量を増やす一番良い鍛錬だと自分は思っています」


 皆が分かりましたと頷いてくれている。そうされると本当に先生になった気分だよ。


 魔法は魔力を使う。魔力を使えば減る。減ると休憩が必要になるということで20分程休憩することにした。その間に俺とユキは少し離れた場所にいるカオリのところに足を向ける。


 カオリに近づきながら見てみると50名ほどの住民が皆槍を両手に持って前に突き出す鍛錬を繰り返していた。槍の長さは180センチ程だ。投げるのではなく持ったまま前に突き出す武器なので、ある程度の長さが必要になる。


 カオリは住民の中を歩きながら時々槍の突き出す角度や腰の動きなんかを指導している。見ている限りだと確かに剣を振るよりもずっと動きがシンプルだよ。


「あら、そっちは今休憩?」


 近づいてきた俺たちに気がついたカオリが聞いてきた。


「そうなの。魔力を回復する時間も必要だしね。見ている限り槍の方がよさそうね」


 カオリによると住民に聞いても槍の方が動きがシンプルなので覚えやすそうだと概ね好評らしい。武器素人の俺が見ても皆の動きが揃っている。片手剣の時は50名の動きが皆同じには見えなかったんだよ。口にはしてないよ、だって武器についてはど素人だからな。



 山奥の街で2週間が過ぎた。槍の使い方については全員がほぼその動きをマスターしたとカオリが言っている。一方魔法については今は転移の魔法を連続でやってもらっている。ただ、連続でやるにあたって俺とユキから住民に1つ条件を出していた。


「自分の魔力量が半分になったと感じたら転移することを止めてください。これは魔力欠乏を防ぐのと、自分の魔力量を管理する鍛錬でもあります。自分の魔力量をしっかり認識できる様になることで、魔法を使うタイミングを自分で管理しながら使えることになります」


 ここの住民達は皆真面目で熱心だ。俺たちが言ったことをきちんと守りながら鍛錬をしている。転移の魔法についても5往復で止める人もいれば、6往復してから止める人もいる。各自が自分の身体の魔力の量を管理しながら鍛錬をするんだよ。


 もちろんそれ以外の時間では各自が光の玉を作って魔力量を増やす鍛錬も日々欠かさない。



「しばらくはこのまま自主的に訓練を続けたら良いと思いますよ」


 本館の部屋でサーラさん達を前にして打ち合わせをしている時にユキが言った。


「槍も同じですね。魔法剣を会得する前に、今はしっかり形を作る鍛錬を続けた方が後で楽になります」


「分かった。しばらくは自分たちだけで鍛錬をしよう。それであんた達は自分の街に戻るのかい?」


 サーラさんが聞いてきた。


「ここから東に飛んで山の上から街を見てこようと思っています。元々東の端がどうなっているのか見てみようというのが目的でしたから」


 カオリが言うと、そうだったねとサーラさん。


「あんた達なら無茶はしないだろう。私たちはその間鍛錬を続けているよ」


 俺たち3人は頭を下げた。


「ありがとうございます。東に飛んで山の上から街が見えたら、またこの街に戻ってきます。もちろん無茶はしませんのでご安心ください」


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