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第91話

 山奥の街に持ちこむ木刀、模擬刀、槍、杖を少しずつ買い集めている俺達。次に行くとしばらく行かなくなるかもしれない。なので多めに準備している。俺たちの間では槍の方がいいだろうと言う考えだが、あちらの人がどうしても片手剣で覚えたいと言うかもしれず、剣と槍の両方を準備する。俺とユキの収納魔法があるから量が増えても何も問題ない。


 もちろんポロでのメインは買い出しじゃない。俺たちのメインは冒険者として森の奥で魔獣を倒して魔石を取り出して金策することですよ。


「今度山奥の街に行ったらさ、帰る時でもいいから東方面に行ってみない?一度は見ておきたいのよ」


 師匠の洞窟で野営をしている時にカオリが言った。俺は洞窟の入り口で見張りをしているが、奥にいる2人の会話は聞こえてくる。


「サーラ長老も行くのは構わないって言ってくれていたしね。遠くから街が見える場所まで行けば東がどうなっているのかが分かるしね」


 東がどうなっているのか、それは俺も見たいと思っている。街にまで出向く気はないけど山の先の風景は一度見ておきたい。見ることで東の街から山奥の街までのおおよその距離もわかるだろう。自分たちがいる大陸の東西の幅がどれくらいの長さなのかは知りたいところ。別に知ったからどうなるの?って聞かれると自己満足としか言えないんだけど、この大陸の地図を作る上で参考にしたいんだよ。


 誰かに見せるために作る地図じゃない。自分のための地図だ。時空魔法、地図についても誰かのためじゃなく自分がこの世界で生きている証として記録しておきたいと思っている。


 東の山の端に行くことについては、山奥の街に出向いた時にもう一度長老に話をして許可をもらうことにする。勝手に黙って行くなんてことはしないよ。


 翌日は師匠の洞窟経由で森の奥の第二拠点に移動してそこで鍛錬をする。ユキが呼び出せる精霊は今のところ2体だけだけどこれを増やすために彼女はここでイメージを膨らませながら鍛錬している。カオリは魔力を増やす鍛錬と魔法剣の鍛錬だ。俺は洞窟の端から端に飛んだり、中で浮き上がって移動したりしている。普段はおちゃらけていることが多いお姉さん2人も鍛錬の時は真剣なんだよな。当たり前だけど。もちろん、俺も真面目に鍛錬するよ。やったらやっただけ自分に返ってくるのがわかるしね。


 休憩を挟みながら丸1日鍛錬をした俺たちは第二拠点で野営をし、翌日はまた森の中をゴールドランクの魔獣を倒しながら師匠の洞窟経由でポロの街に戻ってきた。今回は野営を3泊しての狩りになった。


 ギルドで魔石を換金するとレストランではなく、市内の行きつけの屋台で串焼きを買って自宅に戻ってきた俺達。。個人的にはオークの肉の串焼きは好物だからレストランに行かなくて毎日これでもいいくらいだ。冒険者になった最初の頃はこれが毎日のメインディッシュだったし。


 自宅に戻ってシャワーを浴びてからキッチンでオークの串焼きを食べながらジュースを飲んでいる俺たち。


 2人は最初の頃は野営をすると体臭が気になっていたんだと言う。ただ冒険者とはそう言う職業だ。最初の頃は匂いを気にしていたらしいけど、周りが皆自分たちと同じなのでそのうちに慣れてきたと言っている。


「本当はさ、毎日シャワーを浴びて汗を流したいのよね」


「そうそう、でもこの仕事だとそれは無理でしょ?自分たちだけじゃなく周りもそうだからもう気にするのはやめたけどね」


 そう言うが俺自身は自分や周囲の体臭なんか気になったことがないけどな。俺がそう言うと男性と女性は違うのよと2人から言われた。なんとなく分かる。2人によると日本人は毎日お風呂に入る習慣があるが海外では必ずしもそうじゃないらしい。そう言えばそんな話を聞いたか、本で読んだ記憶があるよ。


「女性が香水をつけるのは体臭を消すという目的もあるのよ」


「つまり毎日身体を洗っていないってことよね」


「なるほど」


 2人の言葉に頷く俺。色々と勉強になるよ。ただこの世界では香水ってのはあるのか?そう思って2人に聞くとあることはあると言う。このポロの街でも香水を売っている店がいくつかあるそうだ。


「ただね、冒険者は香水はつけないのよ。香水の匂いで魔獣に気が付かれたりするでしょ?」


 確かに。森の中で匂いをぷんぷんさせてたら自分たちはここにいますよ。と教えているのと同じだ。いろいろと勉強になるな。



 その後も外で活動をしながら遠出の準備を進めている俺たち。この日、夕刻にポロに戻ってくるとギルドで精算を済ませた俺達は市内のレストランに足を向けた。夕刻で賑やかな時間帯だったが幸いに席が取れた。ここは女性に人気があるレストランで客を見ても7割ほどが女性だ。


「来週くらい?」


 注文した料理が聞いて食べ始めるとカオリが行った。


「そうしようか。来週後半くらいかな。ユイチもそれでいい?」


 肉にフォークを突き刺したままユキが俺に顔を向けた。思わずフォークに目がいっちゃったよ。


「問題ありません」


 出発は来週後半、それまでは従来のペースで活動をする。第二拠点まで足を伸ばす必要がないので師匠の洞窟の周辺での狩りと休養日は買い出しだ。山奥の街に出向けば毎日禁断の魔法の鍛錬ができるからね。


 俺たちの行動はポロの他の冒険者達にはもちろん、ギルドにもバレてはいけない。なのでできるだけ今まで通りのパターンで活動をする必要がある。目立たない様に活動するのは自分のポリシーにも合っているので問題ないよ。


 カオリとユキは知り合いにはまた近々半分旅行で国内をうろうろするつもりだと言っているそうだ。


「私たちの知り合いもそんな言い方をするのよ。なので不自然ではないわよ」


 そのあたりの匙加減はずっと2人に任せている。友人がいない俺には無縁の話だ。

 

 街の外で鍛錬と金策をし、休日は休んだりアイテムや食料の補充をつづけた。ポロに戻ってから2ヶ月ちょっとが過ぎた日の朝早く、俺たちは街を出て再び東の山奥の街に向かった。


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