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第78話


 翌日9時にハミーが迎えに来てくれた。彼女の後をついて昨日と同じ建物の2階の奥の会議室に入るとサーラ長老を始めメンバーが揃っていた。昨日はいた若い魔法使いのジャムスだけがいない。別の用事があるそうだ。


「よく休めたかの?」


「おかげさまでぐっすりと眠れました。ありがとうございます」


 カオリは如才のない対応をするからこう言う場面でも安心だよ。


「今日はまずお互いに魔法を披露しないかい?お互いの魔法を見た方がその後の話がしやすいだろう」


 席について挨拶を終えるとサーラさんが言った。カオリがユキと俺に顔を向けてくる。


「私はいいわよ」


 ユキが即答した。


「俺も問題ないよ」


 昨日の話では魔力量については長老のサーラさんが一番多くてユキの半分程という話だったけど実際魔法はどうなんだろう。個人的に興味がある。


 俺たちは座ったと思ったらすぐに立ち上がった。向かいに座っていた人も皆椅子から立ち上がる。


「この建物の裏に広場がある。そこでやろうかの」


 俺たち3人はサーラさんの後を歩いて建物の外、裏に出た。彼女が言っていた通りそこはちょっとした広場になっていた。中学校か高校のグラウンドくらいの広さがありそう。


 広場に出るとそこから街の周囲を囲んでいる山々が見えている。俺がキョロキョロと見ているのに気がついたのか長老のサーラさんが言った。


「四方八方全てが山だ。そして見えている山の奥もずっと山が続いている。ご先祖達は本当に良い場所を見つけてくれたものよ」


「そうですね。しかも空気が美味しい。いい場所です」


 カオリが言うとそうじゃろう?とサーラさんが表情を緩めて言った。皆で一通りぐるっと周囲を見る。本当に良い場所だ。


「早速じゃが時空魔法を順に披露し合おうかの」


 そう言ったサーラさんが真面目な表情になったぞ。こっちも気合いを入れないと。

 まずは転移魔法からだ。自分たちが立っている場所からグランドの端に飛んでそしてまたこの場所に戻ってくる。距離はせいぜい数百メートル程。


 俺とユキが立ち、街の人からはホートンとカシュ、ハミーの3人が俺たちと同じ場所に立った。


「いつでも良いぞ」


「ユイチ、やるわよ」


「はい!」

 

 俺はユキの声に返事をするとすぐにグランドの端に飛んだ。飛んだ先の隣にはユキがいる。そこから再び元の場所に戻ってきた。戻ってきてから見るとこの街の3人がちょうど反対側から飛んだところだった。すぐに近くの空間が揺れて3人がほぼ同時に姿を現した。俺が見てる限り魔法の始動が遅い気がするが偉そうな事は言わない方がいいと思って黙っているとサーラさんが言った。


「ユイチもユキも魔法の始動が早い。この3人も街の中では上位の魔法使いで転送も早い方なんじゃが全く勝負にならんの」


「魔力量の差でしょうか?」


 恐る恐ると言った感じでホートンがサーラさん聞いてきた。彼女はそれに答えずに俺たちの方に顔を向けた。


「お主達はどう思う?」


「転移の速度に魔力量は関係ないと思いますよ。魔力量が影響するのは一度で転移する距離ですね。なので転移速度が遅いのは脳内での詠唱が長いんじゃないですか?」


 ユキが答えてくれる。ユイチはどう思うと聞かれたが俺もイメージがクリアじゃないんじゃないかなと言った。


「あの辺に飛ぼう。じゃなくてあそこに飛ぶぞ!みたいな詠唱の方がいいんじゃないですかね。後は魔法に慣れることだと思いますよ」


 俺がそう言うと魔法に慣れる?とサーラさん以外の3人が口々に聞いてきた。


「ええ。自分たちは冒険者という職業柄、転移魔法も含めていろんな魔法を結構な頻度で使っています。時空魔法は流石に人前では使っていませんがそれでも自宅ではよく鍛錬しています。そうすることで身体と魔法の親和性が上がって同じ魔法でも強くなると信じてるからです」


 なんか偉そうなことを言っちゃったかなと思うとサーラさんがその通りじゃなとユキと俺の意見に同意してくれた。


「言われてみると確かに今2人が言った通りじゃな。脳内イメージを強く持つこと、そして魔法を沢山使用して自分のものにする事。この2つが合わさることで魔法が強くなる。わしも勉強させてもらったよ」


 街の偉い人からお礼を言われちゃったよ。他の3人も納得した表情だ。こんなんでいいのか?と逆に心配になってしまうよ。


「2人は一度の転移でどれくらいの距離を移動できるのかな?」


「私は10Kmは普通に飛べますね。20Km程飛ぶと魔法がほとんどなくなって休憩が必要になります」


「10Km」


 3人が驚いた表情になると同時に長老とほぼ同じ距離だとか言ってるがサーラさんは私は10Km飛んだら休憩が必要だよと彼らに言っている。


 サーラさんが俺に顔を向けた。


「ユイチ、隠す必要ないわよ」


 カオリが言った。嘘つくなってことだよな。じゃあ正直に言わせてもらおう。


「40Km程転移すると魔力が半分減ったくらいです」


「!!!!」


 サーラさんも含めて全員が驚いた表情のまま固まってしまっている。でも事実なんだよな。


「誇張でも何でもありません。転移先が一度でも実際に行っている場所であればユイチはそれくらいは普通に転移します。私たちが普段鍛錬をしている場所は自宅から徒歩で9時間ほど、距離にして40Kmほどの場所ですが彼はそこに1度の転移で移動してますから」


 カオリがフォローしてくれている。ポロの街から師匠の洞窟までは、平原を半日歩いて森に入って4、5時間程の場所だ。ほぼ1日歩いた距離になる。時速4Kmから5Kmの間で歩いているとして約40Km。うん、間違ってないな。


「ただ彼も最初からそこまで転移できた訳じゃないんです。これは私も同じですが。鍛錬を続けることで転移の距離が伸びていきました」


 ユキが言うと皆俺を見た。


「つまりユイチも最初は数Kmの転移だったと言うことか?」


「その通りです。鍛錬をして距離が伸びました。そして魔力量が多いせいか距離が伸びても魔力の減りが少ないのでどこまで伸ばせるかと鍛錬したところ今は40Kmです。本気を出せばもう少し飛べますがそうすると飛んだ先でぐったりしてしまいます」


 ここの住民はサーラ長老で10Km行くか行かないかだそうで、他の人はもっと少ない。ちなみにマミナの街に買い出しに行く住民は5Kmの転移ができる者を選抜したそうだ。


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