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第77話

 この街ではほぼ全員が魔法を使える。だからご先祖達は迫害されてここまで逃げてきて街を作ったんだけど、転移魔法が使える事を逆手に取ってこの街から転移の魔法で自分たちが元々住んでいた国まで出向いてはそこで物資を買い付けているそうだ。

 

 サーラさんの話によると出向いている国はアルキダ国という国で、その中の山沿いにあるマミナというそこそこ大きな街が彼らの物資調達の拠点になっている。マミナの街の中に一軒家を買ってそこを拠点にし、住みながら街で必要な物資を買い付けているそうだ。


 常時5名程のこの街の人たちがその街の中の一軒家に住んでいて1ヶ月交代で次の5名がその家に住む。この近くで倒した魔獣の魔石は市内にある商会に卸して現金化し、それを元手に物資を調達する。次の5人がくれば彼らは調達した物資を収納に入れてこの街に持ち帰ってくる。こんなシステムらしい。ローテーションを組んでいるんだな。


「5人にしているのは収納が多い方が良いというのはもちろんあるが、一度で転移する距離と魔力消費量を考えて5人が順に転移するのが一番効率が良いことがわかったからじゃよ」


「5人でここからそのマミナまで転移魔法でどれくらいかかるんですか?」


「5人が交代で転移魔法を使って4日と言ったところかの。さっき選ばれた魔法使いと言ったがそれは一度で転移できる距離が長い人を選んでおるということじゃよ」


 俺たちがポロの郊外からここまで飛んできた距離から予想するとそのマミナと言う街はこの山奥の街から直線距離で200Km近く離れているってことかな。いや、彼らが一度に転移できる距離が分からないからそうだと決めつけられないぞ。ただかなり離れているのは間違いないだろう。そして途中の山を幾つも越える必要があるとなればここまで探索に来ることはない。道はないし魔獣は生息している。だから200年もの間見つからなかったんだ。


 一軒家を持っているのなら街の外から直接そこに転移してもまず見られないだろうし、買った物資を一時的に保管することもできる。よく考えたなと聞いていて感心したよ。


「まだまだ話すことがあるがそろそろ日が暮れてきた。今日はこの街に泊まるとよいじゃろう。空いている家があるのでそこを使いなさい」


「ありがとうございます」


「食事は大丈夫かな?」


「ええ。収納にたっぷりと入ってますから」


 カオリの言葉に頷いたサーラ長老。隣に座っていたハミーという女性に空き家に案内する様に言った。俺たちが立ち上がると明日また来てくれるか?と聞いてきた。


「分かりました」



 俺たちは長老のサーラさんがいる立派な建物を出て10分程歩いたところにある一軒の家の前に案内された。ここが今夜の宿代わりの家だ。ここまで歩いてくる間にカオリとユキがハミーさんと話をしているのを聞いていた俺。


 この街は外から人がやってくることがないので宿というものは無いらしい。確かに不必要だよ。レストランはあるらしいが俺たちは余所者だ。今日は家で食べることにする。


「サーラ長老はこの街でもう10年以上長老として街を見守ってくれています。一番の魔力量を持っている魔法使いで精霊魔法が得意ですね」


 彼女がこの街のトップか。ジョブは俺と一緒の精霊士なんだな。あと転移、収納魔法はもちろん浮遊魔法も使えると言う。俺が本で見た時空魔法を全てマスターしているんだろう。


 明日の9時に迎えに来ますと言って家の前で別れた俺たちはそのまま家の中に入った。中は広くて1階が広いリビングにキッチン、バス、トイレがあり、2階は個室が4部屋ある。その内の3部屋を使うことにする。


 一通り家の中を見た俺たちはリビングのソファに腰を下ろした。この街を見つけてからは怒涛の展開だよ。


「食事の前に色々整理しましょう」


 カオリのその声で3人で思いついた事や疑問点を話しする。整理したらこうなった。


・この山奥の街はポロの東にある山の上から直線距離で約200Km。マミナの街からの距離は?(これは今はわからないが200Kmくらい?)

・召喚魔法、魔法剣は彼らの前で披露するのかしないのか。

・ここから東の街まで行くかどうか。

・時空魔法が使える魔法使いはどこででも迫害されている。


 書記をしている俺が紙に書き出してテーブルの上に置くとそれを覗き込む2人。


「ユイチ、来る時は転移の目印がなかったから時間が掛かったけどさ、ここから西の最初に登った山の上まで帰るとしたらどれくらいの時間で行ける?」


「直線距離を200Kmと仮定すると俺の今の転移の距離から見ると4回の転移で行けそう。ただ長い距離を2回飛ぶと魔力量の回復が必要だから1日じゃ無理。2日はかかるよ」


 カオリの問いに頭の中でざっくりと計算をして答える。


「それでも短いわね」


「ユキならどう?」


「私ならユイチの倍はかかるかな。どのみち途中で野営する前提になるからそうなると遠くに飛べるユイチをメインにして移動してどうしてもと言うときに私が転移するという流れがいいかも」


「俺はそれで構わないよ」


 転移魔法は自分がこのパーティでの数少ない活躍場所だ。当然頑張るよ。


「じゃあ次ね。ユキの召喚魔法と私の魔法剣は披露するか、それとも披露しないか」


「この街に住んでいる人が一体どの魔法を使えるのかを先ず知りたいわね。今のところ召喚された精霊は目にしてないけどひょっとしたら召喚できる人がいるかも知れない」


「そうね。これは相手の出方を見て考えましょうか?ユイチもそれでいい?」


 召喚魔法や魔法剣は俺は使えない。なのでお姉さん2人にお任せ。


「いいです」


「じゃあ最後。東の海が見えるところまで行ってみる?」


「行くならこの街の人たちの許可がいるわね。もし私たちが見つかったら彼らの今までの苦労が全部水の泡になっちゃう」


「じゃあ許可が出たとしたら?」


 ユキが答えるとまたカオリが質問を投げかけてくる。俺は黙っていたがそうなったらどうなるんだろうと考えていた。山の上から見下ろすくらいかな。そこから街は見えるだろう。それで十分今回の目的を達した気がする。


「私の意見はそれでも山から降りたり、街の中には入らな方が良い気がする。山の上から隠れて街と海を見るだけかな。海は見られないかもしれないけどそれは仕方ないよね。万が一にも他の人たちに見つかっちゃいけないのだから」


 おっ、ユキが俺と同じ意見だ。


「ユイチはどう思う?」


「俺もユキと同じ。今回の目的は東の端まで行ってみようって事だったけど、今日の話だとその街から東に行けば陸地があって海があることが分かった。東の端の山の上から海側を見るだけでいいと思う」


「私も2人と同じ意見。部外者の私たちが勝手に動き回るのはよく無いと思う」


 3人の意見がまとまった。仮に東に行くとしても山の上からこっそり街を見るだけにする。せっかくここで暮らしている人たちに都合が悪い事はできないよ。それに2人には言わなかったけどその街の人がどう言う人か分からない。もし好戦的な人が多かったら間違いなく俺は絡まれるだろう。それは勘弁願いたい。近寄らないのが一番だよ。


 とりあえず今日のところはここまでだ。俺たちは収納から取り出した夕食を食べると交代で久しぶりにシャワーを浴びてそれぞれの部屋で疲れを取った。


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