表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/140

第59話


 今度は廃村関係の書物を手に取った。読み始めると廃村の場所というよりは、どうして村が廃れて誰もいなくなったのかという考察をしている本だった。別の本を見てもほぼ同じ内容になっていたがこちらにはその廃村になった村が多いエリアという書き方で大雑把な場所が書かれていた。


 それによるとメインの街道から大きく外れたエリアで廃村が多く、国内でここ20年の間に廃村になったの2つあると書かれてた。20年の間と書いているがこの本はいつ書かれたんだ?と見てみると今から10年ほど前の本だった。つまりこれが書かれた時からさらに10年が経っているということになる。


 廃村の本と地図を見比べていた俺はおおよその状況が把握できた。1つは先生が言っている国の北東エリアの山側、もう1つは国の南東エリア、ここポロから東の山の方に進んだ山裾周辺のエリアだ。そのエリアに本当に廃村があるかどうか、そしてその場所の魔獣の生息状況とそのレベルの調査が必要だ。


 いずれのエリアでも廃村が増えた理由は住民の高齢化だと本に書いてある。若い人の多くが仕事を求めて街に出かけたことで農業を継ぐ人が少なくなってきた。一方で大きな街から近い場所にある村は他の村人を受け入れることで大きくなり、それが田舎の廃村化に拍車をかけたということらしい。


 図書館を出ると街中の屋台で串焼きを買って食べた俺はギルドに顔を出した。この時間なら強者達がいないのを知っているので安心だよ。


 2階の資料室に上がって魔獣の生息図を探すとすぐに見つかった。テーブルの上に広げて見てみる。流石に冒険者ギルドだ。かなり詳細に書いてある。ポロの東エリアの方はブロンズからシルバーランクの魔獣で山に入るとゴールドに上がっている。ただ山に入ってもすぐはシルバーのエリアらしい。


 一方先生が教えてくれたエリアではブロンズとシルバーランクでゴールドランクは山の奥に行かないと生息していない様だ。


 感覚的には国の北東部と南東部では魔獣のレベルはほぼ同じかやや南東部が高い。どちらのエリアも山の中にまで入っていかなければ問題はなさそうだ。


 この生息図と廃村があればその位置関係の検証が必要だよな。村があったってことは人が住めて人が行き来していたということだ。シルバーランクがうようよといるエリアには村はないだろう。それとも元はいなかったシルバーランクが現れ出して村を捨てざるを得なかったのかも。


 悪い頭でいろいろと考えてみるがこれはお姉さん二人のアドバイスを貰った方が良さそうだ。いずれにしても現地の調査は必要だろうし。


 生息域の書かれている地図を自分の手帳に書き写した俺はギルドを後にする。今日の夕食は俺が当番だ。途中の市場で食材を買ってから俺は自宅に戻った。



「本当にユイチの料理は美味しいのよね」


「そうそう。普通に市場で売っている食材なんだけど美味しいのよ」


「そう_特別なことはしてないよ」


 お姉さん二人から褒められると作った甲斐があるよ。自分でも今日の料理は上手くできたという感覚はある。塩加減がよかったんだろう。


 食事を終えるとソファに移動せず、キッチンテーブルに座ったまま打ち合わせをする。リビングのソファよりもこっちの方が地図とか広げるスペースがあるんだよ。最初に俺が図書館とギルドの資料館で集めた情報を二人に説明する。彼女達は知り合いの冒険者達から話を聞いてきていた。


「魔獣の生息地については当たり前だけどギルドの情報と知り合いの冒険者達から聞いた情報と同じ。ただポロの東側は魔獣が固まっている場所が少ないのと狩場が遠いので効率的じゃないって話よ」


 カオリが言った。それって逆に俺たちにとってはいい話じゃいの?


「ユイチも分かったみたいね。そうなの。固まっていない方が私たちにとってはいいわよね」


 腹芸ができない俺は考えている事がすぐに顔にでる。方や百戦錬磨の元CAさんだ。表情からこの乗客は何を考えているのか読み取る能力が半端ない。と俺は信じている。俺が何も言わずとも考えを読まれていた。


「ただシルバーがいるというのがね。廃村がそのエリアだとしたら柵は頑丈に作らないと」


「でもそのエリアに廃村があるとしたらそこは比較的安全な場所だったということにならない?」


「あっ、そうか」


 二人で話をしているのをうんうんと頷きながら聞いている俺。


「ユイチ、イグナスの村ってここから半日くらいだって聞いているんだけどそれくらい?」


 突然話を振られたけどそれ位なら即答できるぞ。


「地図を見た限りだと半日、6時間はきつそう。もう少し掛かりそう」


 朝早く出たら昼過ぎ、夕刻の前に着く。歩いて7、8時間というと二人が納得してくれた。同じじゃねぇかと言われるかも知れないけど6時間と8時間は2時間も違うぞ。


「知り合いに聞いてみたらたまにクエストでイグナスの村を起点に周辺の魔獣を倒しているんだって」


 魔獣の間引きのクエストの事かな。俺たちは受けた事はないがクエスト用紙を見た事はある。


「ということはイグナスより先には街がないってこと?」


 俺がいうとそれなのよとカオリが言った。


「私もユキも今ユイチが言ったことを言ったの。そうしたらあそこから先に村があるって話は聞かないって。でもその話からすぐに村がない、廃村がないと決めつけるのは早いよね」


 そりゃそうだ。話を聞かないからイコール村がなくて人が住んでいないとは決めつけられない。ひょっとしたら人が住める安全な場所があるのかもしれないし。


「あと廃村がイグナスの東側と決めつけるのもまずいわよね。北や南にあるかもしれない。いずれにしてもイグナスに行ってそこで情報収集しましょう」


「そうそう、実際に現地に行かないとわからない事もあるしね」


 仮に廃村に拠点を作るにしてもポロの街に近い方がずっと便利だ。場所にもよるがその廃村から1度の転移でこの自宅の庭に飛んで来られるのなら見られるリスクはほぼゼロになる。そんな俺たちにとって都合の良い廃村があると良いんだけど。


 もし自分たちに適した廃村が見つからなかったら先生の住んでるエリアの近くで廃村を探そう。レムが手直しした廃村でもいいんだけどひょっとしたらもっと良い、つまり人が全く来そうにない廃村があるかもしれない。


 基本はポロで目立たない様に活動を続けるが、万が一の時を考えて事前に第二の拠点を作っておく。それと人前では披露できない魔法の技術レベルをキープする。これが廃村探しの目的だ。ポロで生きていく大前提は変わらない。


 やることが決まった。明日は午前中に少し野営の食料などを買ってそのまま東に向かってイグナスの村を目指すことにする。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ