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第55話


 ユキは回復、強化魔法をしてくれる猫の姿をしている光の精霊のサクラ、土魔法と盾をしてくれるゴーレムの姿をしている土の精霊のレム。この2体の呼び出し、召喚には成功したが他の精霊はなかなか召喚できない。


「土の精霊の時みたいにギリギリの状況でないと召喚出来ないのかも」


 師匠の洞窟で休憩をしている時にユキが言っている。


「ユキ、焦らなくていいからね。サクラとレムが呼べるだけでもすごい事なんだし、戦闘中も大助かりなんだから」


 ユキは悩んでいるけどカオリの言う通りだよ。幻と言われている召喚魔法を覚えて2体も召喚できるんだよ。すごいよ。


「そうそう、普通じゃできない事をやっているんだよ、凄いよ」


 カオリと俺が言うとそうね、焦らずにやるわと言った。うん、焦る必要は無いよ。今でも十分に凄いと俺は心底思っている。


 その後3人で話をしている時に、召喚魔法は会得したけど周囲に人がいるところでは呼び出せないよねという話になる。見つかった時にどうなるかなんて俺でも想像が付く。転移魔法と同じだ。目立ちたくないのはここにいる3人の共通の認識だ。



 師匠への報告は終わっている。次はドラン村のナッシュ先生に報告だ。


「ユイチ、師匠の村までどれくらいで行けそう?」


 森でゴールドランクを適当に倒して自宅に戻ってきた俺たち。夜、食事をしている時にカオリが聞いてきた。


「どうだろう。途中でユキにも手伝ってもらうとしても魔力を回復する時間が必要だよね。1日で行けるか行けないか」


 安全な転移先は覚えているのであとは距離と魔力の減り具合だ。カオリは無理しない前提でいいわよと言ってくれたので。なら2日みてくれれば大丈夫だと答えた俺。


「途中で見つけた廃村までなら1日で行ける?」


「そこまでなら俺1人の転移の魔法で1日掛からずで行けるんじゃないかな。夜をその廃村で過ごせば魔力も戻るだろうし」


「私も手伝うわよ」


 俺の転移魔法の距離も以前よりもまた伸びている。毎日鍛錬しているからだと思うが、自分の魔力量が増えているのと魔法を発動した時の魔力のロスが減ったからだと思っている。知らんけど。それに同じ転移魔法が使えるユキがいれば何とかなりそうだ。


「ねぇ、こうしたらどうかしら。廃村まで3人で行って、翌日ユイチが1人で先生の村に飛んで先生と一緒に廃村に戻ってくるの。廃村なら精霊を召喚しても見られることはないでしょう?終わったらユイチが先生を村に届けてまた廃村に戻ってきてそこからポロに帰る」


 俺とカオリとのやりとりを聞いていたユキが言った。


「ユキ、頭いいじゃない。ユイチには負担かけるけど精霊を召喚して見てもらうのなら廃村が一番いいわね。あそこなら誰からに見られるということはまずないでしょうし。先生が住んでらっしゃるドランの村じゃ誰が見てるかも分からないよね」


 そう言ってから2人が俺に顔を向けてどうかなと聞いてきた。


 確かに先生の村に3人で出向いても召喚を呼び出す場所がない。土の精霊のレムは2メートル近い身長があって大きいしいな。なので先生をドランの村の郊外の森の中に移動してそこで呼び出すくらいなら俺が先生を自宅の庭から廃村までお連れした方が確実だ。魔力も持つだろうし送り迎えする程度なら何も問題ない。しかも普段は2人におんぶにだっこ状態の俺が貢献できる。


「ユキのアイデアでいいと思う。廃村に着いた翌日に俺が先生の村に行ってお連れしてくるよ」


 移動で2日、その次の日は廃村で先生に召喚した精霊を見せるとそのまま先生を自宅に送る。その日は次の日にポロに帰る。4日で行って帰ってくる予定だ。最初に比べたら随分と移動が楽になっている。転移先の景色を覚えているからだがそれでも誰かに見られる可能性はないこともない。廃村までの移動は夜がいいだろうということになった。


 ポロの街を1ヶ月近く離れる場合はギルドに一言言っておいた方が良いのだろうが今回はせいぜい3日、長くても4日だ。1週間程度までなら言う必要はない。強者の冒険者達は強い魔獣を求めてポロの南に出かけて1週間以上不在にするのはザラにある。いや、俺が知っているんじゃなくてこの情報はカオリとユキが教えてくれたんだよ。俺はボッチだから冒険者からの情報源はない。


 今回は4日、長くても5日なので俺たちは当然ギルドには何も言わない。


 移動する当日は昼間の活動をやめて各自が部屋でしっかりと休み、早めの夕食を取ると日が暮れたポロの街の自宅から外に飛んだ。


 途中にあるレンネルの街まではもう何度も歩いているので街道を通らなくても森の中に転移してまたそこから次の森の中に転移するということを繰り返して進んでいく。レンネルの東側まで飛ぶとしばらく夜の街道を歩いてから今度は北の森の中に移動してまた転移を重ねる。そうやって廃村に着いたのは翌日の昼過ぎだった。


 流石に結構な魔力を使ったのでここでしっかりと休んで翌朝に俺が単独でドランの村に飛ぶことになった。


 廃村での昼食が終わるとユキが廃村の柵を直してみようとレムを呼び出して指示をすると土の精霊のゴーレムがしっかりと仕事をする。柵を立てたり土で固めたりとユキの指示通りに動いてくれる。魔力量をみながら休み休みの作業だったけど夕方には痛んでいたり壊れていた柵が修復された。精霊が仕事をしはじめてしばらく作業を見ていた俺とカオリは廃村の外に出て周囲を警戒する。万が一ってのがあるからね。そう言ったのはカオリだ。俺はそこまで頭がまわらない。


「すごいね。しっかりと仕事をしてくれるんだ」


 廃村に戻ってみると村を囲っていた柵が綺麗に修復されていた。


「当然よ。私の精霊さんよ」


 俺の言葉にドヤ顔で答えるユキ。ドヤ顔になるのも分かるよ。しっかりと意思疎通ができているんだもの。いや、おみそれしました。


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