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第54話


 固定概念を捨てて発想を変えようと言ったものの、2体目の精霊の召喚には苦労しているユキ。ちなみに俺も自宅の部屋で光の精霊を召喚すべく鍛錬を続けているが一度感じた小さな変化から一向に進まない。


 ナッシュ先生が言っていたジョブと精霊の関係で精霊士は精霊と相性がよくないのかもしれない。それでもやらないよりはやった方が良いのは当たり前だ。俺は時間がある時に鍛錬を続けている。コツコツやるのは嫌いじゃないんだよ。


 今のところ召喚できるのはサクラだけだがよく考えたらそれってすごい事だよな。誰も使えない召喚魔法を使えるのだから。


 サクラは森の奥で狩りをする時でも呼び出すときと呼びださない時とがある。どこで誰が見てるかもわからない。リスクはできるだけ避けるというパーティの方針だ。


 

 この日、例によって師匠の森の奥でゴールドランクを相手にしていたときにゴールドランクの魔獣が3体リンクしてしまった。2体のリンクの経験はあるが3体は初めてだ。しかも3体全てが自分たちより格上の魔獣だ。カオリが前に立って3体の攻撃を受け止めながら片手剣を振っているが正直形勢が良くない。


「ギリギリまで頑張ってみるけど、転移の魔法の準備をしておいて」


 3体と対峙しているカオリが叫んだ。


「OK」


「任せて」


 剣を振っているカオリにユキと俺が答える。俺は精霊魔法を撃ちながら、ユキはカオリに回復魔法を撃ちながらいつでも転移できる準備をしていた。飛ぶ先になる俺たちの自宅の庭は隅から隅まで覚えている。


 五分五分の形勢だったのが俺たちが押され気味になってきた。これはヤバい。そろそろ転移かなと思っていると突然カオリの横に土か石で出来た人間、いや魔獣?何だこれは? と言うのが現れたかと思うとゴールドランクの魔獣に殴りかかった。カオリを攻撃していた他の2体も新手の何かにターゲットを変えたがいくら殴られてもその何かはダメージを食らった様子はなく、ドンドンと岩のゲンコツで殴っていく。ターゲットから外れたカオリが今度は横から魔獣に片手剣を振る。何か、が現れたことで一気に形勢が逆転して俺たちは3体のリンクを倒し切った。


「出たわよ、土の精霊さんよ」


 戦闘が終わるとユキが言った。俺は改めてその何かをよく見る。全身が茶色の固い石でできていてよく見ると目や口もある。鼻はないが。当たり前だが坊主頭というか岩だ。身長は2メートル近くあるだろう。見てる限りとても硬そうな精霊だ。


 そいつは戦闘が終わるとユキの横に来て仁王立ちになって周囲を睥睨している。すげぇ格好いい。


「助けて、私たちを守ってって言ったら出てきたの」


「そうなんだ。極限状態で呼んだから通じたのかもね」


 俺たちはとりあえず森の中から師匠の洞窟に飛んだ。そこで帰還させた土の精霊を呼び出すとユキの隣に立って周囲を見渡す。一度呼び出すと次からは問題なかった様だ。


「呼び出してからの魔力はサクラよりもずっと使った。戦わせてるからかしら」


「そうじゃない。でもものすごく敵対心が高いのね、現れたと思ったらあっとうまにタゲがそっちに移ったもの」


 今は呼び出しているだけなのでそれほど魔力を使っていないと言うユキ。精霊は何か使役させると魔力を消費して実行するということが分かった。


 ひとしきり話をしてから名前をどうするかという話になった。こいつはどう見ても男だ。俺の頭の中にはイワオ(岩男)、イワキチ(岩吉)、イワノシン(岩の進)が浮かんだがどう考えても冴えない。岩の進って相撲取りの名前みたいだな。


「何かのゲームでゴーレムってこんな格好じゃなかった?」


「ゴーレムあったね」

 

 ユキとカオリが話をしている。それを聞いていた俺もゴーレムって名前には聞き覚えがあると思い出した。


「ゴーレムのままじゃ当たり前過ぎるわね」


「ユイチ、何かいいのある?」


 カオリが振ってきた。この前はサクラが採用されたがありゃ偶々だ。基本俺はネーミングセンスが皆無だよ。


「ゴー君とかレム君とかかな」


 ゴーレムを2つに分けただけだよ。相変わらずセンスがない。自分が嫌になってくる。


「レム君良いわね」


「そうね。レム、レム君。うん可愛いじゃない」


「えっ!?」


 ひょっとしてこの2人のセンスは俺並みか?いや絶対に口にはしない、できないけど。あっさりレムに決まったよ。


 早速洞窟でユキがレムを呼び出した。いきなり身長2メートル近い岩の精霊が出てきてびっくりする。


「土の精霊さん、貴方の名前はレムよ。レム君。よろしく」


 ユキが言うと両手で胸を叩く土の精霊。何だレムって、もっと格好いい名前をつけろよとその場で暴れられたらどうしようかと思っていたがどうやら気にいってくれたみたいだ。


 俺たちは時空魔法に続いて召喚魔法を会得したことを報告する。節目節目での師匠への報告は欠かしちゃいけないよね。


 洞窟を出た俺たちは新しく仲間になったレムを最初から呼び出して戦闘をした。いやぁ固いのなんの。カオリが喜んでるよ。


「好きに攻撃できる様になったわ。周囲に誰もいないという条件が付くけどこれは楽よ格上でも関係ないもの」


 今までカオリが前衛1人で全ての攻撃を受け止めていてくれた。当人は言わないけどかなりの負担だったことは俺だって想像できる。


「出しっぱなしで戦闘させると結構私も魔力を使うわ。長期間の戦闘では一度引っ込めることもあるかも」


 サクラは呼び出して強化魔法をかけると今のところそのあとは何もないので戻しているがレムとなると盾、攻撃となるので長期間使役することになりユキの負担が増える。


 精霊を呼び出して戦闘させるとどれくらい減って時間的にどれくらいは大丈夫なのかと詳しく検証しようということになって森の奥のシルバークラスの魔獣を相手に何度も呼び出して戦闘させた。


 その結果今のユキの魔力だとサクラを呼び出して魔法をかける、そのあとでレムを呼び出して戦闘に参加させる。敵がシルバーランクの1体なら3体までは連続で倒しても魔力が半分ほど残るがゴールドになると3体目を倒すと半分以下になっていた。ただカオリとレムが前衛で敵と対峙するので戦闘時間は以前よりもずっと短くなった。


「これから他の精霊を召喚できたとしても同時に呼び出す数は1体、せいぜい2体までね」


 自分の魔力を使っているユキが言うのだから間違いないだろう。


「ここ一番ってのがあるかも知れないから、あまり魔力を使うのも問題よね。ユキの魔力が半分を切らない様にしようか。余力があった方がいいでしょ?」


 当然だ、不測の事態に陥った時に魔力がないってのは洒落にならない。


「体内の魔力の減り具合は感覚でわかるから声かけるね」


「お願い」


 ユキに楽をさせるためには俺の精霊魔法もしっかりと威力を出して命中させないといけない。これまでは余り強い魔法を撃つと魔獣が俺に襲いかかってくることがあるからとヘイトの管理をしていたけど精霊が高い敵対心で敵のヘイトを持っていてくれるのであればこっちも最初から飛ばせる。それで戦闘時間が短くなれば魔力を使う時間が短くなる。


 3人でパーティを組んで長い。俺でもその程度はできる様になっているんだよ。



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