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第46話


 ポロに戻ってきて2日間休んだ俺たちは活動を再開した。活動を再開して気がついたが王都からやってきたイケメンパーティはまだポロにいるらしい。上のランクを目指すのならやっぱりポロの街一択なんだよな。


 今回王都やその近郊をうろうろしたがシルバーやゴールドクラスの敵には一度も遭遇しなかった。もっと森の奥深くに行けばいるのかも知れないが、ここポロなら街を出て少し歩けばシルバークラスが徘徊しているエリアがある。彼らはゴールドランクだから鍛錬するには王都じゃもうダンジョンくらいにしか敵がいないのだろう。知らんけど。


 ポロの街に所属しているゴールドランクの冒険者達は皆ポロの南部の高ランクの敵がいるエリアで活動をしている。ゴールドからさらに上を目指すには南のエリアでランクが高い敵を倒して経験を積んで実績を上げるしかない様だ。


 カオリもユキもイケメン連中がいよういまいが関係ないって感じで過ごしている。もちろん俺もだよ。俺たちは今まで通り自宅の庭から師匠の洞窟まで移動してその森でシルバーランクや森の奥でゴールドランクを倒しては戻ってくると言うルーティーンをこなしながら、召喚魔法の習得のための鍛錬をしていた。


 精霊は森の中の方がいそうじゃない?というカオリのアドバイスで師匠の森で狩りをしながらその合間に召喚魔法のイメージ作りの作業をしている。


「精霊さんおいで。じゃ来ないかぁ」


 何度かそう言っているユキだが周辺には何も変化がない。周りは深い森で何かが起こりそうな気配はない。


「私を手伝ってとかどう?」


 カオリが言うとその言葉を口にするがそれでも何もない。10分ほどいろんな誘い文句を口にするが周囲に虚しく響くだけだった。俺も同じ様にやってみたが当たり前だが何も起こらなかった。


 1日でモノにできるとは思っていないので引き続き森の奥で召喚の鍛錬を続けることにして再び狩りに戻る。


 こんな調子で3日働いて1日、時に2日休みのローテーションを守りながら狩りと魔法の鍛錬を続けている俺たち。俺も自宅の部屋や庭で自分が召喚したらどうなるかと思いながら色々と鍛錬をするが当然ながら何も起こらない。


 ただ自分たちはそうやって何も起こらなかったところから時空魔法を身につけたという実績がある。なので何も起こらなくても鍛錬を止めることはなかった。カオリもユキもすんなりと身につけることができる魔法だとは思っていない。


 精霊を呼び出す召喚魔法は存在していると考えていた俺たち。ナッシュ先生の話を聞いてそれが今では確信になっている。


 あとはどうやって精霊を呼び出すか。そこについてはまだ糸口すら見つかっていない。ただすぐに会得できる魔法ではないだろうと3人共思っている。いつまでに会得しなければならないという期限もない。何かのきっかけで覚えるかもしれない。焦らずにやりましょうということになっていた。



 俺は時空魔法を覚える鍛錬を始めた頃からこの世界での出来事を記録している。これは最初にこの世界に飛んだ時、洞窟の奥で見つけた師匠が木の板に彫ってくれた記録を読んで大いに助かった経験があるからで、俺たちの後に来るかもしれない誰かのために、そして俺たちがいずれ冒険者を辞めた時に何か自分たちが活動をしてきた記録を残しておいた方が良いだろうと思ってメモ程度だけど書き始めたものだ。


 この世界に飛ばされた日から師匠の洞窟を見つけポロの街に入って生活を始めたことやカオリ、ユキと言った同郷の日本人と出会って一緒に活動をしていることなども書いている。ランクアップについても当然書いているよ。


 魔法の会得については、図書館で時空魔法というものを知ってからそれを身につけるまでの鍛錬の過程や会得したあとの転移の距離の伸びなんかをメモしている。


 今はドランの村でナッシュ先生から聞いた話、召喚魔法について気がついたことをメモに書いていた。失敗し続けているがそれもメモしている。むしろ失敗の方が後から読む人がいたとしたら参考になるだろう。どういう失敗を繰り返して最終的に成功したのか。この過程が大事なんじゃないかと思っている。


 日記というかメモを書き終えた俺は今まで自分が書いたものを読み返してみる。不定期に書いているメモだが気がつけば結構な枚数になっていた。


 このメモがこの世界での自分の記録だ。ポロの街に来た最初の頃は一人でこの街で死ぬまでブロンズで地味に生きていこうと決めていたが色々あって今では仲間と呼べる人たちもできて一軒家に住み、ランクもシルバーになっている。


 当初決めたこととは大きく違っているがこの変化は悪い変化じゃないと思っている。2人と知り合ってからは性格も少しは外交的になったんじゃないかとも思うし、何より毎日が楽しい。これが俺にとっては一番大切なことだ。


 2人に言われて以来最近は地味には生きるが生きることには手を抜かない様にしている。周りに迷惑をかけないとはそう言うことだと知った俺。今までいかに適当にやっていたかと反省をしつつ少しはマシになろうと自分なりに頑張っている日々だ。


 おそらくだけど、俺は異世界に飛ばされなかったらずっとつまらない人生を送っていただろう。全てに対して適当でまあいいや。で片付けていく。きっと社会に出たとしてもまともな社会人にはなれなかっただろう。それについては自信がある。


 人というのは周囲から影響を受けながら成長するものだと言うのをこの世界で実感しているよ。そして知らないうちに周囲に影響を与えているのだろう。


 自分自身は周囲に良い影響を与えることができる様な人間になれるんだろうか。自問自答してみるが今はまだそのレベルじゃないなと頭の中で俺が言っている。今はそのレベルじゃないならレベルを上げるしかない。幸いに近くに優秀な先輩が二人もいる。彼女たちを見て良い点を学んで真似をすることで少しでもレベルが上がるかも知れない。いや、上げなければならない。


 気がついたらすっかり遅い時間になっていた。


 今日はもう寝て明日また頑張ろう。



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