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第4話


 師匠が言っていた通りだった。朝早くに山を降りて山裾を右に見ながらに歩くと昼過ぎに森を抜けた。目の前に緑の草原が広がっていた。最初は永久に出られないのかと思っていたから森を抜けた時は思わず万歳したよ。万歳なんて一浪して大学の入試に受かった時以来だ。入試の競争率が1倍を切っていたけど関係ないね。合格は合格だ。


 木の実は赤も緑も両方ともとてもおいしかった。水気を含んでいたので腹も膨れるし水分もしっかり取れる。角ウサギってのに注意をして歩いていく。幸いにウサギさんに会うこともなかった。ほっとしたよ。


 森を歩いて草原に出てまっすぐに歩いていると右手に大きな城壁が見えてきた。あれがポロという街だろう。街に向かって土の道が伸びている。俺は道にでるとそのまま街を目指して歩いていった。草原に沈む太陽、じゃないが明るくて大きな星が見えていた。


 街の入り口、頑丈そうな石で作られている城壁にある城門にはあっちの世界とほぼ同じ格好をした中世の騎士みたいな人が2人立っている。1人は槍を持ってこちらをじっと見ている。


「身分証明証は持っているか?」


 槍を持っていないいかつい顔をした人が聞いてきた。おおっ、相手が話している言葉が分かるよ。言語理解の水晶のおかげだ。感動しているといかつい顔のおっさん、兵士がもう一度、さっきよりも強い口調で話かけてきて我にかえる。


「身分証明書は持っているかと聞いているんだ」


「すみません、持っていません」


「じゃあ街に入る入場料として銀貨1枚だ。それと手をこの水晶に置くんだ」


 俺は言われるままに銀貨1枚を差し出し、右手を水晶の上に置いた。水晶は全く光らなかった。


「よし。問題ないな」


「えっと、この水晶は?」


 水晶から手を離して聞いた。


「これか?これは犯罪歴があると光るんだよ。お前は光らなかったから大丈夫だ。それとだ、身分証明書を持っていないのなら早く作る方が良い。でないと毎回ここで銀貨1枚を払わなければならないぞ。見た感じ冒険者希望だな。冒険者ギルドは街に入って大通りを歩いたすぐの右手にある。早めに手続きをした方が良いぞ」


 顔はいかついおっさんだが親切に俺に教えてくれる。やっぱり身分証明書がないと不自由しそうだ。


 門をくぐって街の中に入るとそこはゲームでよく見たのと全く同じ世界が広がっていた。すげぇよ。でもこれ、ゲームじゃないんだよ、リアルだよ、リアル。


 ヨーロッパの中世風の建物の街が城壁の内側に広がっている。大きな通りの左右には建物が並んでいてその通りをこれまた様々な人が歩いていた。


 しばらくその景色を見ていた俺は言われた通りに通りを歩くと門番の騎士が言っていた冒険者ギルドの建物が通りの右手に見えてきた。建物の入り口の上に大きく剣と盾のマークがあるので間違いないだろう。両開きの扉を開けると広めのロビーがあり、入って右側の壁には掲示板があり多くの紙が貼ってある。左手はテーブルと椅子があり日本のモールにあるフードマーケットの様な感じだ。そして入って正面、ロビーの奥に受付のカウンターがあって女性が3人座っていた。


 カウンターに近づいていくと1人の女性が立ち上がった。


「こんにちは。どう言ったご用件ですか?」


「冒険者登録をお願いしようと思って」


 そう言うとわかりましたこちらにどうぞと受付嬢が立ち上がりカウンターの奥に案内してくれた。そこは小さな部屋で部屋の中央にあるテーブルの上に小ぶりの水晶を置いた受付嬢。


「これに両手を触れてください。これは魔力があるかないかを測定する魔道具です」


 ”まどうぐ”と言うのが何か分からないがとにかく手を置けばいいんだな。と思ったところで気がついて目の前に立っている女性に言う。


「あの、俺左手だと水晶が光らなくて、右手だと光ると思うんですけど両手で触れます?」


 俺の言葉を聞いて一瞬驚いた表情になった受付の人。


「じゃあ両手、そして左手、右手と触れてもらえる?」


 言われた通りにまずは両手で水晶に触れると水晶が輝いた。次に左手だけで触れると全く光らない。そして右手だけで触れると両手よりもずっと派手に輝いた。


「魔力があるのは間違いないけれど流れが極端に悪いみたいね」


 魔力の流れと言われてもピンとこないから黙っていると女性が言った。


「でも魔力があるから魔法使いとして登録しましょう。カードを作りますね」


 受付カウンターに戻ると名前を聞かれたので工藤悠一だと言うと、俺の顔を見て一言。


「長いわね」


「じゃあ悠一で」


「わかったユイチ君ね」


「いや、悠一」


「だからユイチ君でしょ。はい出来たわよ」


 あっという間に出来たカードをもらうとそこにはしっかりユイチと書かれていた。


「これが身分証明書になるんだよね?」


 そこが知りたいんだよ。


「そうよ。ギルドカードはこの大陸での身分証明書になるの」


 それを聞いて盛大に安心する。とりあえずこの世界で生きていくために最低限必要な身分証明書を手に入れたぞ。名前はもう気にしないことにする。日本の常識をこの世界に持ち込んでも仕方がない。俺が感激していると受付嬢が続けて教えてくれる。


「今ユイチ君が持っているのはアイアンランクのカード。冒険者は皆アイアンからスタートするの。実績に応じてランクが上がっていくのよ。アイアンからブロンズ、そしてシルバーからゴールド。シルバーになると一人前の冒険者ってとこかしら。ゴールドからその上にプラチナまであるけどプラチナランクの冒険者はこの大陸でもほんの数名。とりあえずシルバー目指して頑張ってね。ただ無理はしないでね。あとこのカードは無くさない様に。再発行は金貨1枚かかるから」


 金貨1枚と聞いて名前を変更するのを諦めた。この世界でも金は高いのは間違いないだろうし。


 一気に説明をしてくれた受付嬢。門番もそうだったけど親切な人が多いのかな。説明がわかりやすい。お礼を言ってカウンターから離れようとした俺に彼女が続けて言う。


「ユイチ君は魔力の流れが悪そうだから一度見てもらったら?ギルドが契約している治療院が近くにあるの。紹介状を書いてあげるからそれを先生に見せるといいわ。それとその治療院の近くに初心者冒険者御用達の安い宿があるわよ」


 待っていると紹介状を渡してくれて治療院の場所を教えてもらう。お礼を言ってギルドを出た俺は言われた通りに大通りを少し歩いて、目印の店を右に曲がって路地に入ると、入ってそう歩かずに目的地に着いた。ドアに看板が掲げられていた。


『ラニア治療院』


 ここだな。


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