表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/137

第38話


 翌日の夕刻にギルドに換金に言ったユキが自宅に戻ってきた。


「噂のパーティがギルドに居たよ。ちょうど外から帰ってきたタイミングだったみたい。イケメンっちゃイケメンだけど私はいいかな。リーダーはもちろんだけどあとの4人もちょっと怖い感じね」


「そうそう。皆本心を見せないというか何考えているのか分からないって感じだよね」


 夕食をとりながらそんな話をしている2人。俺は食事をしながら2人のやり取りを聞いている。とりあえず目の前のお姉さん2人が王都からやってきたイケメン連中に興味がないってことで安心した。


 昨日今日としっかり外で金策をしたので明日、明後日は休養日だ。


「イケメンはどうでもいいんだけどさ。カオリ、明日一緒に買い物行かない?欲しい服があるのよ」


「いいわね。私も見たい服があるの」


 2人は明日は買い物か。俺はどうしようかな。昼間庭で浮いたり消えたりするのはまずいから魔力を鍛えるとしてそれだけじゃ時間を持て余しそうだ。そんなことを考えていると2人から予定を聞かれた俺。


「とりあえず朝は庭で鍛錬して、午後は図書館にでも行こうかな」


 ぼっち時代は1人でスマホを見て過ごしていたがこっちの世界に来てからは静かな図書館が気に入っている。


「新しい魔法?」


「じゃなくて取り合えず時間を潰すのにいい場所だから」


 俺がそう言うとユキとカオリが交互に言った。


「ユイチは真面目よね」


「そうそう。そこがいいのよ。浮気の心配もしなくていいし」


 いやいや、浮気なんてするわけがないじゃない。目の前に美人で性格の良いお姉さんが2人もいるんだよ?ないない。

 

 何か新しい魔法があったら教えてねと言われるがそうそう新しい魔法なんてないだろうと思っている。ただこちらの世界の人が御伽話の世界の魔法だと思い込んでいた移動魔法や収納魔法、重力魔法が実際に存在していたのも事実だ。まだ他にもあるかも知れない。


 どっちにしてもだ、図書館が俺のお気に入りの場所であることは間違いない。司書の女性からは変わった男だと思われているかも知れないが気にしないことにしよう。



 翌日午前中3人で庭で魔力の鍛錬を終えると2人は街に繰り出していった。俺は最後に家を出ると図書館に足を向ける。相手が俺のことを内心でどう思っているかは別にして司書の女性とも顔見知りだ。


 図書館のどのあたりにどんな本が並べられているのかと言うことも覚えている位に結構な頻度でここに通っている俺。今日は昔からこの国に伝わっている神話の本を何冊か手に持つとテーブルに移動した。平日の午後の図書館はほとんど人が居ない。読書をしている人も数名だけでそれぞれが離れた場所に座って自分の世界に没頭している。俺も他の人の邪魔にならない様に離れた場所に座った。


 日本でもそうだったがこの世界にもあちこちに御伽話や言い伝えが残っている様だ。読み始めると普通に面白い。龍に関する御伽話が多いなと思いながら読んでいる俺。日本でも神話に龍が出てくるがどこの世界でも同じなんだな。


 村でバカにされていじめられていた少年が迎えに来た龍に乗って山の奥に飛んでいったとか、龍同士が激しく戦い、その跡が今の谷になったとか。俺はページを捲りながら各地に伝わっている御伽話、昔話を読んでいた。


 読んでいくと面白い御伽話を見つけた。昔、山奥にある小さな村に住んでいた人たちは自分を護衛する精霊を魔法で召喚し、それで身を守りながら生活していたらしい。その村では村人と精霊とが仲良く暮らしていたという。


 精霊を召喚する魔法。召喚魔法とでも言うのかな。そいつが居たら確かに安全だろう。自分の代わりに戦い、身を守ってくれるだろうしな。


 俺は席を立つと魔法の棚から書物を取り出して中を見てみるが召喚魔法やそれを意味する魔法に関する記述はない。時空魔法や重力魔法はあるが精霊を呼び出す魔法は魔法関連の書物には載っていなかった。


 やっぱり御伽話なのかなと再び御伽話の本を読むがその後の2つほど同じ様な精霊を召喚して生活をしているという記述を見つける。1話だけじゃなくて3話あるぞ。それもこの本を見る限りだと場所が違っていそうだ。ということは精霊を召喚する魔法ってあったのかな。


 仮にあったとしてもだ。どうやって精霊を召喚するのかが分からない。いや、その前にだな、精霊ってなんだろう?



「精霊って森の中に住んでいる背中に羽が生えて飛び回っている生き物じゃないの?」


「カオリ、それって精霊じゃなくて妖精じゃないの?」


「あっ、そうか。でも精霊と妖精って違うの?」


「さあ、どうなんだろうね」


 家に帰って夕食の時に図書館で読んだ御伽話の話をするとカオリとユキが2人でこんな会話をしている。例によってイメージが乏しい俺は頭の中に何も浮かんでこない。


「でもさ、本当に召喚魔法があってさ、盾してくれる精霊なんか呼び出せたらいいよね」


 と能天気なことを言うカオリだが、もし彼女の言う通りの精霊が召喚できればこれ以上の戦力はないだろうというのは間違いないな。普段は3人で活動していてここ一番の時に呼び出す。精霊さんだから人間関係がおかしくなることもないだろうし。


 でも精霊ってなんだ?それにその精霊ってのがいるとしたら、どこにいてどこから現れるんだ?



 翌日も休養日だったので俺は再び図書館に顔を出した。今日は御伽話ではなくて精霊について書かれているであろう書物をいくつか棚から取って読んで見る。それによると精霊とは人間は見ることができない魔獣の一種だという記載がある。


 ん?魔獣?


 続けて読んでいくと魔獣は魔獣だが俺達が普段倒している魔獣とは同じ魔獣でも括りというか種類が全く違うという説明があった。


 ー 精霊とはこの世界のあちこちに存在していると言われているが、その姿を見た者はいない ー


 おいおい、ちょっと待て。姿を見た者がいないのにどうしてこの世界のあちこちに存在しているって分かるんだよ。ツッコミどころが満載だよ。


ー 姿を見たものはいないが多くの人がその気配や存在を感じたことはあろう。虫の知らせという言葉があるだろう。それは皆精霊の仕業だと言われている ー


 これも無理矢理感が強いな。確かに虫の知らせという感覚は自分にもある。あるがそれを精霊と結びつけるのはどうかなと思う。飛躍しすぎてないか?


 結局精霊がいるのかいないのか。精霊とは何なのか。そして精霊を召喚できるのかできないのかは分からないまま俺は図書館をあとにした。


 図書館にはまた出直そう。他にも本があるかもしれない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ