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第35話


 次の日、ユキがギルドに精算、換金に出向いて自宅に戻ってく来ると私もギルマスに呼ばれたと言った。


「魔力が多いってことと、カオリとユイチの3人でやってるということで色々聞かれたわ」


 ギルドから戻ってきた彼女によれば俺と同じ様に精算のためにカウンターに出向いたら職員からギルマスの部屋に案内されてそこでギルマスと話をしたらしい。


「これからも3人でやっていくつもりなのかって聞かれたのよ。だから自分たちはしゃかりきになって上を目指すつもりは全くない、今後も3人で自分たちのペースで活動を続けるつもりって言ったら納得してくれたわ」


 ほとんどの冒険者が5名のパーティを組んで活動をしランクをあげていく。そんな中3名で活動をしている自分たちのパーティは異質だ。上を目指すのなら5名は無理でも盾ジョブを入れて4名で活動すれば楽になると周囲は考える。ギルマスもそう考えたからユキに聞いてきたのだろう。ゴールドランクに昇格する時期は5名の冒険者よりも遅れるかもしれないが不可能な到達目標ではない。ユキによると彼女の説明でギルマスも納得したと言うことだしとりあえずは安心かな。


 3日目にカオリが出向いた時はギルマスには呼ばれなかったらしい。普段からギルドとの窓口をやっているからなのか俺とユキから話を聞いて納得したのか。


「いずれにしても余計なことを聞かれなくてよかったわ」


 ギルドから戻ってきたカオリはそう言った。


「ただこれからも気をつけましょう。ギルドは私達の想像以上に所属している冒険者を見ているわね。今後はユイチとユキの移動魔法、そしてユイチの浮遊、重力魔法は絶対に周囲に見られない様に気をつけないといけないわよ」


 カオリが言う通りだ。これらの魔法を使えるということが周囲が知ったらとんでもない事になりそうだ。時空魔法については今までも安易に使ってるつもりはないがこれからは今まで以上に慎重にならないと。


 幸いにして今の俺は自宅の庭から師匠の洞窟の前まで一気に飛ぶ事ができる。行きは庭から現地に飛んで帰りは様子を見て場合によっては徒歩で帰るか、夜に庭に飛んで帰ってことにしようと方針が決まった。目立たないためならなんでもやりますよ。目立たず、地味に生きていくというのが俺のモットーなんだから。


 俺とユキがギルマスに呼ばれて10日が過ぎた。その後は特に何も変わったことはない。街の外でシルバーランクやゴールドランクの魔獣を倒して魔石と死体を持って帰ってギルドで清算をする。ギルドに精算に出向くのは相変わらカオリだ。俺とユキは外から戻ってくるとそのまま自宅に先に帰って彼女を待っていた。


 今日はユキが夕食担当でキッチンで料理をしている時に精算を終えたカオリが家に帰ってきた。その夕食時にカオリがギルドで聞いてきた話を俺たちにする。


「精算を終えてからギルド内のホールの酒場にいた知り合いから聞いたんだけど、来週あたりに王都からゴールドランクのパーティが来るらしいの」


「何しに来るの?」


「ポロで強い敵を倒すんだって。なんでもプラチナランクに一番近いパーティってことで結構有名らしいわ」


 俺は食べながら2人の話を聞いていた。どこから誰がこようが俺には関係のない話だ。上を目指す人はどんどん目指してもらおう。ランク上位の人が多くなればなるほど万が一何かが起こったしても下々の俺のところには話が降りてこない。王都から来る人たち、頑張ってくれ。


 どうやらユキも同じ考えだったみたいだ。


「どこから誰が来ようが関係ないわね。勝手にランク上げてちょうだいってところ」


 俺は食べながらそうだそうだと頷いている。ユキの料理が美味しくてパクパクと食べていて常に口の中に料理が入っていて話せないんだよ。


「ユキの言う通り。私も勝手にやって頂戴って思ってたの。ただ彼らが来るっていうのが話題になっていたのはそのパーティってリーダー以下メンバー全員がイケメンらしいのよ、中でもリーダー格の男性が超イケメンなんだって」


 ん?俺は動かしていた口を止めた。イケメン?しかも超がつくほどのイケメン?それで今はゴールドランクでプラチナランクを目指してこのポロの街にやって来る?すごい男じゃないの。俺とは大違いだ。この2人もそのイケメンを見てそっちになびかれたら困るぞ。そうなったらパーティ、そしてこの家から追い出されるのは俺だってのは火を見るより明らかだからな。


 心中穏やかではないが、かと言って俺がどうこう言える立場にはない。黙って食事をしながら聞いているとユキが言った。


「カオリってイケメン好きだっけ?」


「違うわよ。そう言う話じゃないのよ」


 また様子が変わってきた。少し気持ちが落ち着いてきたぞ。で、どう言う話なんだろうか。


「恋愛の対象とか抱かれてみたいとか言う話じゃないの。私たちにはユイチがいるでしょ?それだけで十分よ」


「そうよね。私たちにはユイチがいてくれるしね。それでどう言う話?」


 2人のやり取りを聞いて盛大に安心する俺。腹芸ができない俺の安堵の表情を見たのだろう2人が声をかけてきた。


「ユイチ、何心配してるのよ。大丈夫だって。本当に心配性なのね」


「そうそう、ユイチと私たちは一心同体。どんと構えてらっしゃい。お姉さん達に任せておけばすべて上手くいくから」


 口に料理を入れたまま大きく頷く俺。


「それでね」


 そう言ってカオリが話始めた。自分たちは日本人でこの異世界に飛ばされている。美的感覚というか日本人から見ていい男、いい女という基準とこっちの世界の人が言ういい男、いい女の基準が同じとは限らない。なのでこっちの女性が言ういい男。超イケメンってのがどんな顔なのか見てみたいのだという。


「なるほど。言われてみればそうよね。自分達が持っている感覚とこっちの人が持っている感覚が同じとは限らないよね」


 ユキが言うとそう言うことよとカオリ。俺個人としては自分の容姿に全く自信がないのに女性に容姿を求めるのはどうかと思っている。それにもともとメンクイでもない。こんな事を二人の前で言ったら絶対に怒られるから黙ってるけど。


 その俺の目から見ても今のポロの街にいる女性冒険者の中にも綺麗な人はそれなりにる。ただその彼女達がこの世界の男性からどう見られているのかは知らない。言われてみれば2人の言う通りだ。


 カオリとユキはまず性格がいい、それに加えて顔もスタイルも良い。俺には過分なほど良い女性達だよ。


「ユイチ、今私たちのこと考えてたでしょう?」


 俺が物思いにふけたのを見ていたユキが言った。相変わらずこの2人は鋭いんだよな。鋭い二人と腹芸ができない俺。いつも最初から駆け引きにならないんだよ。


「もちろん、私たち以上にいい女っていないって思ってたんだよね?」

 

 そう言ったカオリを見てその通りだと答える。


「当然です。俺にとっては2人が一番いい女です」


 そう言うと2人が顔を見合わせて小声で話をしてから俺に顔を向けた。


「ユイチ、今夜は庭での魔法の鍛錬は無しよ。あとで2人でユイチの部屋に行くからね」


「はい!分かりました」

 

 カオリの声に即答しました。


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