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第28話


 家が決まってアパートを引き払い、新しい家に引っ越した俺たち。2人の収納魔法があるから引っ越しも楽だったよ。


 部屋割りは女性2人が2階を希望したこともあって俺が1階の部屋になった。


「ユイチは構わないの?」


「全然。1階で問題ないよ」


「ユイチがそう言ってくれて助かるわ。1階のユイチの部屋なら少々大きな声出しても大丈夫だしね」


「それそれ。声を我慢しなくてもいいっていいよね」


 相変わらず過激というか何というか。今でも結構大声だと思っているんだがあれ以上になるのか。無毒のペンダントもしているし、こっちも体力を付けないと。



 各自の荷物を部屋に入れると3人でリビングの応接セットやキッチンで使う物なんかを市内の店で仕入れる。新居は居住区にあるといっても商業区まで5分、ギルドまで15分程。慣れちゃえば気にならない距離だろう。庭から街の外に飛んでもいいし。


 全てが終わったのは家を買った2日後の午後だった。自分たちの家だからと結構良い物を買ったりして皆また金欠になったがそれに十分に見合う家具や台所用品が揃った。冷蔵庫も家族用というか大きなサイズの物を買った。


 俺はほとんどの私物をアパートから持ち込んだがベッドだけは女性2人の希望で今のよりも大きなサイズのベッドに買い替えた。2人からそうしてくれと頼まれたんだけど正直嬉しいと感じている自分がいる。



「やっと落ち着いたわね」


「自分の家、いいわね」


「庭も広いし日当たりも良い。いい家が見つかってよかった」


 3人でそんな話をしながらキッチンテーブルで夕食を取る。ちなみにこの日は3人で食事を作ったがこれからは毎日交代で食事を作ることにし、休養日は各自で食事を作るか外で食べるかにする。最低限のルールを決めるのは大事だよ。もちろん屋台で買ってきてそれを自宅のテーブルに並べるのでもOKだ。


 ポロの街にやって来てついに一軒家まで手に入れた。実際は3人で買った家だがそれでも最初にこの街に来た時に泊まった安宿で一生を終えるだろうと思っていた頃の自分とは大違いだ。よくまあここまでになったよ。感慨深いものがるが、これもお姉さん二人のおかげだ。彼女たちに出会わなかったら俺は今でもボロ宿に住んでブロンズクラスの冒険者として毎日薬草取りをして暮らしていたのは間違いない。



 翌日は休養日にして各自で部屋の整理や足りない物の買い出しなどに当てることになった。元々アパートでも私物が少なかったので部屋は広々としたままだ。ベッドに机と椅子、そして数少ない私服と下着が入っているクローゼット。サンロケで買った小物や置物だけ。

 

 あまりに何もないので何か部屋にアクセントが欲しいなと市内に繰り出した。もちろんローブ姿だよ。冒険者の格好だと絡まれないしね。


 床に敷く敷物、カーテン、足の低いテーブル、クッション、部屋の灯りとは別に小さな魔道具のランプにラックなどを買ってきて部屋に置くとようやく部屋らしくなってきた。それでもまだまだ余裕がある。机と椅子はアパートに引っ越した時に買ったもので傷んででいないから十分に使える。それ以外は新しく買い揃えた。


 部屋のドアを開けたまま買ってきた荷物を整理していると開いているドアをノックして私服姿のカオリが中を覗いて入ってもいい?と聞いてきた。もちろんOKだよ。


「綺麗な部屋じゃない」


 部屋に入ってきて中をひと回り見てからそう言ったカオリ。


「ありがとう。ようやく何とか格好がつく部屋になったよ」


「この敷物もいいわね。ふわふわで床に座っても痛くなさそう」


 そう言ってからどこで買ったのか聞いてきたので店を教えると私もそこで買おうかななんて言っている。


「ユイチの部屋からだとそこの窓を開けると直接庭に出られるのね」


 そうなんだよ。部屋に入ってから気がついたけどこれは意外と嬉しい。足元までの大きな窓でそれを開けるとすぐに目の前の庭に出ることができる。採光も取れるしね。聞くと2階の部屋の窓はここまで大きくないらしい。


 休養日なんかに部屋からすぐに庭に出て日向ぼっこをしながらのんびりと過ごせる。元々アウトドア派じゃない俺は自宅でのんびり過ごすのが苦にならないので1階でよかったと思ってたんだよ。


「私の部屋も見てみる?」


 一通り俺の部屋を見たカオリが言った。


「いいの?」


 もちろんというので彼女について2階に上がっていく。階段に近いのはユキの部屋でカオリの部屋は奥だ。どちらの部屋も庭に向いている。


「あら」


 ドアが開いていてユキが俺たちを見つけて声を出した。私の部屋を見せてあげようと思ってというとユキも後でこっちにも来てねという。


 カオリの部屋は一言で言えば落ち着いた部屋だ。暖色系の家具やカーテンでまとめられている。女性の部屋らしくクローゼットの数が多い。棚の上にはちょっとした置き物が置かれている。


「落ち着いた部屋だね。いいね」


「そう?ありがと」


 それから2人でユキの部屋に顔を出したがこちらもいかにも女性の部屋と言った感じだ。部屋のレイアウトはカオリの部屋とは少し違ってはいるがこちらは落ち着いた茶系でまとめられていた。2人ともセンスがいいんだよな。


「ユキの部屋も落ち着いた感じでいいね」


「ありがと。私にもユイチの部屋を見せて」


 再び3人で1階に降りて自分の部屋に案内する。2人の部屋に比べると物が少ないこともあり同じ広さの部屋なのに広く見える。はっきり言っちゃうと殺風景なんだよな。


「ユイチらしい良い部屋よ」


「この魔道具のランプなんてセンスあるわよ」


 2人に誉めてもらえて一安心だ。俺は日本にいた時から部屋にあまりものを置かなかったのでその癖が今でも残っているみたいだ。1人暮らしをしてたから掃除が楽になることを考えるて物が増えない様にしていたんだよな。こっちに来たらそれを考えなくても良いんだろうけど昔の癖はなかなか抜けない。その上にインテリアのセンスの無さには自信がある。


 部屋の床に敷いている敷物はユキもいいわねと気に入ってくれた。それはいいのだが、その後にやわらかい敷物の上に座ると、


「柔らかくてクッション性がいいわね。この上ででも出来そうじゃん」


 とボソッと言ったのでびっくりする。いや、大きいベッドを買っただろう?と思うがもちろん口にはしない。その場面を想像してニヤついていると2人から声がした。


「ユイチも満更でもなさそうね」


「まだまだ教えてないことがいっぱいあるわよ。時間をかけて色々教えてあげる」


「お願いします」


 二人が部屋に戻ってからも置いたものを違う場所に置き直したりと部屋の整理を続けていてようやく何とか納得できる様になったときはもう外が暗くなっていた。


 こうしてみるとアパートも悪くなかったけど一軒家は全然違うなと実感したよ。両隣の家とも距離を取ったゆったりとした造りになっていることもあって本当に静かなんだよな。これならしっかり休めそうだよ。



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