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第27話


 休養日明けの活動から俺たちは日々稼いだ金貨のうちから決まった額を積み立てることにする。その方がお金が貯まりやすいのは間違いないからね。積立をしなかったらいつになるか分からない。


 以前の活動が手を抜いていたとは思わないけど、今の俺たちには明確な目標がある。メンバーも3人でやっていこうと決めたことと、ポロで一軒家を買うためにしっかり活動しようと言うことだ。旅行は家を買ってからにしようということになっている。


 俺とユキが転移の魔法を使えるので効率的に狩りはできるがあまり派手にやると目をつけられるのでそこは気をつけないといけない。カオリがそのあたりのバランス感覚というか見極めがすごいんだよ。


「今日はこれくらいにしておきましょう」


 それが昼過ぎの時間でも倒した敵のレベルと数からおおよその金額を推定して目をつけられる前に狩りを終了する。逆に丸1日ガッツリと狩りをして多くの敵を倒した時はギルドに持ち込まずに日を空けて持ち込んだりとギルドから目をつけらない様にあの手この手を繰り出していた。収納魔法があるから出来るんだけどさ、それでも本当にすごいよ。俺はそこまで頭が回らない。狩ったら狩った分だけ買い取ってもらってただろう。


「目立たないってのも大事なのよ」


「出る杭は打たれると言うでしょ?打たれても強い杭なら問題ないんだけど私たちはそうじゃない。それにユイチも目立ちたくはないでしょ?」


「もちろん。俺は地味に生きていければいいと思ってるから」


 世間慣れしていない自分は駆け引きなんて出来る訳がない。ここはお姉さん2人にお任せだ。


 ここは俺の部屋だ。外から戻ってきて街の屋台でオークの肉串を買った俺たちはアパートに戻ってきて3人で夕食を摂っているところ。


「でも実際ユイチとユキの転移の魔法があるから移動が本当に便利よね」


「ユイチはまた距離が伸びているんじゃない?」


 ユキに言われるまでもなく自分でもまた距離が伸びたというか同じ距離を飛んでも魔力の減りが少ないと感じていた。俺がそういうとやっぱりねという2人。


「今でも毎日魔法の鍛錬しているんでしょ?」


「うん。部屋で1人の時は大抵しているかな。ユキもでしょ?」


 俺が聞くと頷くユキ。


「ラニア先生に聞いてからやってる。ユイチほどじゃないけど自分でも魔力が増えたなって思っているの。まだほんの少しだけどね」


「でもそれって積み重ねでしょ?私もやっているもの」


 そうなんだよ、この2人は基本何事にも真面目に取り組む人達なんだよな。俺は暇で他にやることがないから魔法の鍛錬を続けているけど彼女たちはしっかりと目的意識を持ってやっている。そしてそれを続けている。立派だよ。


「でも重力や浮遊の魔法はまだ会得できないんだよね」


 俺がそう言うと焦る必要はないからねと二人から宥められた。

 

 今の狩場は師匠の洞穴がある森の奥のエリアだ。ここは街から遠いこともあってほとんどライバルがいない。森の入り口にはたまにライバルを見かけるが奥に行くと日帰りができないこともあって人がいない。


 そんな中でシルバーランク、時々ゴールドランクの魔獣を倒しては魔石やその死体を持ち帰る。時には師匠の洞穴にお参りもする。ただ同じ狩場ばかりだと飽きてくるからという事でたまには転移の魔法を使わずに他のシルバーランクの冒険者がメインにしている狩場にも行って敵を倒す。


 今の俺たちには家を買うという明確な目標がある。それに向かって毎日狩りをしていた。こんな日々を繰り返していた数ヶ月後、積立てていた金貨が500枚を超えた。


 この日は3人で市内の不動産屋に顔を出した。このアパートを紹介してくれた不動産屋さんだ。事前にユキが話をしていたので俺たちが店に入るとすぐに物件を見に行きましょうと商業区から居住区に向かって移動する。今日は3件の物件を紹介してくれるらしい。


 どの家にするのかは基本2人にお任せだがだからと言って2人に丸投げはせずに一緒について行く俺。不動産屋にはこちらの希望を伝えてあるという。

・予算はマックス金貨600枚

・静かであること。大通りに面している必要なし。

・塀などで家や庭が外から見られずにプライバシーが完全に守れること。

・できれば商業区に近い場所


「こういう要求ってのはね。遠慮しちゃダメなの。高い買い物になるからこそきちんと希望を伝えるの。そして安易な妥協はしないこと。良い物件がなければ物件が出るまでは慌てて買わないからね」


 そう言っていた2人。その条件を出していた上で今日不動産屋が物件を案内してくれるところ見るとこちらの希望に合う物件があるということなのだろう。


 最初に案内された一軒家は商業区から入ったすぐの路地にある家だった。俺は一眼見てこれはないなと思う。ボロ屋とまでは言わないがそれに近い状態なんだよ。買ってから修理にお金をかけないと住めないだろう。


「安いけどここは無いわね」


 カオリが言った。ユキも同じ様なことを言っている。聞くと金貨400枚らしい。確かに安いが買った後で相当金がかかるのが見えている。結局高くつきそうな家だ。


「この物件は安いのだけが売りですから」


 不動産屋も分かっていたのだろう。次に行きましょうと別の路地に入っていった。その路地の奥に次の物件があった。外見は悪くない。家の中を見てみたが間取りもオーソドックスで悪くはない。ただこの家のある路地は雰囲気が良くない。長屋みたいな家が左右に連なっている。はっきり言えばガラが悪そうだ。勝手に庭とかに入ってこられたらたまったもんじゃない。


 この家は金貨500枚だという。


「ここはさっきよりはマシね。まだ紹介出来る物件があるんだよね?」


「はい、もう1件ありますよ。少し商業区から離れるんですけど」


 そう言って次の物件に移動する。今まで見た2軒は商業区から居住区に入ったすぐの場所にあったが次の物件は居住区に入って5分程通りを歩いてから路地に入ったところにあった。


 路地と言いながら道幅が広い。今まで見てきた2軒が建っていた路地の倍はある。そしてそこに並んでいる家は全て一軒家だった。ゆったりと家が並んでいる。木々も多い。


 その路地の中ほどに物件があった。周囲の家と似たような作りをしていて目立ってはいない。家の中を見せてもらうと中も綺麗で庭もそこそこの広さがある。そしてほぼ四方を高い塀と樹木で囲まれていた。聞くとこの路地の家は全てこの高さの塀と樹木で仕切ってあるそうだ。隣との距離もあり両隣の2階からでも庭は見えない様になっている。もちろんこちら側からも両隣は見えない。


 間取りは2階に広めの部屋が2室。1階は広いリビングにキッチン、バストイレ。そしてリビングの奥に2階の部屋と同じくらいの部屋が1室。全ての個室が広い。今までのアパートでいうと寝室と物置にしていた隣の部屋を合わせた以上の広さがある。


 見た感じいい家だ。ここに住むのなら俺は1階の部屋だな、と思っているとカオリとユキの声がした。


「いいわね」


「3軒の中じゃ一番よ」


「この家は金貨600枚になります。お得な物件ですよ」


 不動産屋さんがいう。確かに高いけどそれに見合う家なんじゃないかな。不動産屋によると本当はもう少し高く売りたいがこの家は個室が3部屋しかないので冒険者達には売れないので安くなっているらしい。確かに5名とかの普通のパーティじゃここは買わないな。どこの街でもそうらしいんだけど冒険者は不動産屋から見ればお得意様になるそうだ。


「ユイチ、私たちはここが気に入ったんだけどどう?」


「うん。俺も気に入った」


 積立てあるのは金貨500枚、3人で残りの金貨100枚を出して600枚を不動産屋に渡す、契約書にサインをし、鍵を3つもらってこの家は俺たちのものになった。こっちの世界は本当に不動産の売買がシンプルで早い。現金商売だから出来るんだろうな。ローンとか組んだら踏み倒されて仕事にならないんだろう。



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