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第2話


 異世界に飛ばされたと思ったらそこで無能扱いされてすぐにまた別の異世界に飛ばされてしまったよ。一体どうなっているんだ? 2度連続して飛ばされるってどういうこと?


 俺は木から伸びている太い枝の上に座り、木の幹にしがみつきながら考えていた。


 2度目に飛ばされ、気がついた時俺は森の中にいた。地面の上にうつ伏せに寝ていたところで気がついて立ち上がって周囲を見たが、周りは全て木々に囲まれている森の様だ、森林浴にはいいのだろうが今はそんな気分じゃない。あの騎士に言わせるとここも異世界なんだろう。どう考えても日本、いや地球のどこかじゃないのは感覚的に分かる。


 そこで思い出した。よくある異世界ファンタジー系の小説だと異世界の森の中には角のあるウサギやらスライムやらゴブリンらがいて人間を見ると襲ってくるって。森の奥ならそいつらのレベルが高くなって強くなっているって。やばい、何も持ってない、それどころか自分自身が強いのかどうかも分からない、いや間違いなく強くはないだろう。なんせ無能なのだから。


 小説だと異世界転生すると神様やらがチートな能力をくれたり、転送する相手が自分じゃなかったからと神様が土下座してとんでもない能力をくれるってのが多いが俺は2回も飛ばされたが神なんぞには会ってないし、何かが体に流れ込んできた。なーんて言う感覚もない。つまりただの生身の19歳の男だ。それより何より今のこの状態は架空の小説の話じゃなくて現実だ。異世界小説を書いている皆さん、いいですか、異世界転生が神のいたずらだというのは嘘ですよ。リアルではジャンピング土下座もないし俺様最強のチート能力すらありませんよ!



 ……虚しい……



 いずれにしてもだ、このままでは非常にまずい。ということでまずは身の安全を確保するために登りやすい木を見つけてなんとかその木の太い枝の上に辿り着いた俺は今そこに座っているという訳だ。登った木はまだまだ高く遠くを見るにはさらに木の上の方まで登っていく必要があるんだろうが日も暮れてきたし何より腹が減ってきた。結局あの家というか小屋では何も食べてない。


 木の枝の上で背中に背負っているバックパックから食べかけのカロリーメイトと飛行機の中でもらったミネラルウォーターを取り出して口に運ぶ。カロリーメイトのスティックはあと1本しか残ってない。やばい。このまま餓死してしまったら情けなさすぎる。右手に巻いていたハンカチは血が止まっていたので木に登ったところで外した。



 日が暮れた。明かりがないから当然周囲は真っ暗だ。暗くて静かで音がしない中、俺はコアラの様に木の枝に座って両手両足で幹にしがみついていた。落ちたら終わりだと思うと寝れらない。高い木々の枝と葉で空もよく見えない。星があるのかないのかすら分からない。唯一の救いは雨が降っていないということだ。これで雨でも降ってたら悲惨だよ。


5分、10分という短い睡眠を何度も繰り返していると外が明るくなってきた。睡眠不足だが木から落ちるよりはずっとマシ。腹は減っているが水だけ飲むと木を登り始めた。とりあえず高い場所に行って周囲を見る必要がある。サバイバル術を知らなくてもそれくらいは分かる。慎重に木の枝を掴んではゆっくりと上にあがっていくと1時間ちょっとで登ってきた木の上のてっぺんに近いところまで辿り着いた。そこの枝に両足を置いてよいしょと立ち上がると顔が木の上から出て周囲を見ることができた。


 森また森、一面森だ、これじゃあどっちに行けば良いかも分からない。正面、右、左と目に入るのは緑の森ばかりだった。最後に木の枝の上でゆっくりと体を移動して背後を見ると思わず声が出た。


「山だ!」


 登っている木が生えているところからそう遠くない場所に山裾が見えていた。山があって森がある。となるとあの近くに川がある。と信じたい。とにかくあの山に向かって進もう。闇雲に進むよりはいいだろう。それに山に登ればもっと遠くまで見られるかもしれない。


 目的地が決まった。今度は慎重に木を降りる。時間をかけて降りると抜き足差し足で森の中を進んでいく。おおよその方角は覚えている。山は大きいから少しくらい曲がっても間違いなく着くはずだ。それよりも他の生物に会う方が怖い。間違いなく勝てないというのが分かっているから会いたくない。


 木の間から周囲を見ては前進する。また周囲をきょろきょろと見ては進む、を繰り返した俺の前に山裾が見えてきた。最後はダッシュして山の裾についたよ。川はないがまずは山の上に上がらないと。上を見ると登れないことはなさそうだ。下から上を見ていると山裾から20メートル程上に洞穴があるのが見えた。中に何かいるかもしれないが木の上や山の斜面で寝るよりはいいだろうと意を決して山を登って洞穴を目指す。木登りに比べれば20メートルの高さの山登り、いや崖のぼりは全く問題がなかった。


 洞穴の入り口に着いたら奥は暗くなっていて見えない。ライトがないと思っていたらスマホにライトが付いているのを思い出した。電話やネットはできないがライトはバッテリーがあれば使える。ライトをつけると奥が見える様になった足元を照らしておっかなびっくりで奥に進んでいくと突き当たりの壁の前を見て思わず声を出してしまった。


「ひっ!!」


 スマホを落としそうになったがなんとか手で捕まえて洞窟の奥を照らすとそこには奥の土の壁にもたれる様に服を着た骸骨が座っていた。


「な、何なんだよ」


 衣服もボロボロになっているので相当前に死んだ人なんだろう。とりあえず襲ってくることはなさそうなのでライトでその骸骨の周辺を照らして見ると服を着ている骸骨の左右に木箱があり、骸骨の前には薄い板が何枚か重ねて置いてあるのを見つける。


 箱は後にしてその前にある重ねられている一番上の板を手に持ってライトを当ててみると板一面に文字が彫られていた。


 そこに書かれている、いや彫られている文字は日本語だった。


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