第139話
次の日、宿を出た俺たちはまずは魔道具屋に顔を出した。マミナは街中にある店の店構えもポロとは違う。ポロというかレアリコでは魔道具やだと魔道具のランプが描かれている木の札が看板になっているけど、ここでは『魔道具販売店』と文字で書いてある。魔道具屋に限らず、他のお店も看板が名前なんだよな。『⚪︎⚪︎衣料店』とか『⚪︎⚪︎家具店』とか。
分かりやすいのは分かりやすいんだけどさ。イラストもあっていいんじゃないか?と思うんだよ。でもずっとここに住んでいる人にとってはこれが当たり前なんだろうな。ハミーとかはポロ街でイラストの看板を見てどう思ったんだろう。聞いてみよう。
魔道具店に入って陳列物を見るとどれも結構いい値段がする。ポロに比べて高いんだよ。ポロで買うことができる魔道具は一通り売っているが全体的にお値段お高めなんだよ。ユキが魔道具の部屋の灯り、ランプを1つ買った。実際に使ってみたら比較できるよな。
魔道具店を出て女性用の私服を売っている店や家具店にも顔を出した。女性服の店では俺は入らずに外で待っていたけどね。家具店に入るとタンスやベッドが売っているが木が違うのは俺が見ても分かる。よくいえば重厚、悪くいえば重い。魔法使いの杖も重かったし、このエリアには強くて軽い木が多く生えていないんだろうな。
昼食は市内のレストランで食べたが、味は美味しい。肉、野菜、魚と皆別々の料理を頼んだんだけど皆の意見はポロに比べて味付けは薄めだけど美味しいということだ。俺は鹿肉料理を食べたけどマジ美味かった。
調味料が違うのかもという話になってその足で調味料を売っている店に入るとポロでは見ない調味料がある。片っ端から買ったよ。
次に武器屋、防具屋をのぞいてみた。武器屋では片手剣や槍、短剣、弓などが売ってある。店員のおばさんに手に取ってもいいかと聞いているカオリ。許可を取って手に持っては軽く腕を上下に振ったりして、重さやバランスをチェックしている。杖も売っていたが、何というか大きな箱に杖が何本も立てられているだけだ。どう見ても1種類の杖しかないぞ。これは俺とユキが手に取ってみたがやっぱり重い。他の杖を持ったがそれも重かった。効果を聞くと魔力量が増えるんだよと教えてくれたおばさん。杖はこれだけかと聞いたらそうだよとあっさり言われたよ。
「ありがとうございました」
カオリがお礼を言って店を出て過ぎは防具屋に入った。ここにはローブやズボンが売っているがそれも白と黒と茶色の3種類だけ。店員のお姉さん曰くどれも同じ効果で魔力量が増えるという効果が付与されているという説明。うん、シンプルだよな。
前衛の防具はというと皮のベストとズボンだ。これも2種類あるが白はなくて黒と茶色の2種類。効果は特に付与されていないそうだ。皮だから普通の服よりも少し衝撃に強いだけだろう。普段着の上からベストを着るのだと教えてくえた。
口にはしないけど、どうみてもショボい。巡回している兵士の方がずっと良い装備を身につけてるよ。
確認のために他の武器屋と防具屋を覗いてみたけど同じだった。
「夕方になってきたし、どこかで食事をして宿にもどろうか」
「賛成です」
外で夕食を食べて宿に戻ってきた俺たちは、俺の部屋で今日の調査の結果を話し合っている。もちろん書記は俺だよ。
「武器と防具は論外。この街で売っているのってポロだと初心者用のものよ」
「その通り。ユイチが言ってたけど、集団で倒すから何だっていいんだろうね」
「でもどうして良い装備を作らない、売らないんだろう。兵士の方がずっと良い装備をしてたよ」
俺がそう言うとカオリが俺に顔を向けた。
「だからよ」
と訳が分からないことを言った。だからよ。って何よ?俺が間抜けな顔をしていると彼女が説明してくれた。
「冒険者、ここではハンターだっけ?彼らが良い装備を持って強くなって領主に歯向かってこられると困るからじゃない?兵士には良い装備を持たせる。ハンターは安物を持たせる。そうすることでハンターに変な気を起こさせない様にしているのよ」
「なるほど。流石です」
俺が感心した声を出すと、ドヤ顔をしてもっと褒めていいのよと言うカオリ。彼女の言う通り、ハンターが強くなりすぎると領主は心配になるだろう。最低限の装備だけは持たせていると考えると納得できる。
ユキが買った魔道具のランプに魔石を入れて魔力を通した。しっかりと輝いている。
「効果は同じね。でも魔道具の種類や数、それはポロの方が多くない?それにポロの方が安い」
「それにデザインもポロの方が洒落ているわ」
光っているランプを見ながらユキとカオリが言っている。確かに品数や種類はポロの方がおおい。デザインもポロで売っている方が凝っている気がする。
「ユイチはどう思う?」
「二人が言った通りだと思う。こっちのは良く言えば機能重視、シンプルだよね」
それ以外の日用品、食料についてはどちらも大差ないという結論になった。物価も物により多少の差はあるにせよ、ほぼ同じだろう。
つまり俺たちは調査すべきところを調査したってことになるのかな。
「明日は午前中市内をウロウロしてから外にでない?東に行ってみようよ。そしてそのまま山奥の街に戻るというのはどう?」
カオリが提案してきた。俺もユキも即賛成だよ。大まかな街の雰囲気は掴んだ。相場感も大体わかった。つまり長老から依頼されたミッションは達成したことになる。
なので俺たちが東を目指した本来の目的である東の端まで行ってみることになった。
「街を出る時は私服よ」
「了解しました」
言われなければローブを着るところだったよ。




