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第137話


 翌朝、と言っても結構早い時間に俺たちは彼らのアドバイスに従って裏庭から一旦墓地の敷地に出た。庭に小さな戸が作ってある。そこから墓地に出てぐるっと回ってくると彼らの家がある路地に来ることができる。彼らも普段はここから出入りしているそうだ。


「ではこれで」


 庭の扉のところまで4人が見送りに来てくれた。


「ありがとう。頑張ってね」


 挨拶を終えると俺たちは墓地に出て、そこから彼らの拠点がある路地の入り口に戻ってきた。


 昨日は暗くなっていたし、その上庭から直接家に入ってきたので、拠点の周りの状況が見えていなかったんだ。


 拠点の左、通りに近い手前側には高い木と塀があり、隣の家とはお互いに全く見えない様になっている。彼らの家がある路地は彼らの拠点の家で行き止まりになっていた。その奥には柵があり、その先は墓地の敷地だ。拠点の向かいは塀と高い木々に囲まれている家があるが、見る限り平屋の様だ。


「奥は行き止まりと墓地。左隣とはしっかりセパレートされている。向かいの家は平屋建て。ベストじゃない?」


「本当ね。この場所ならまず見つからないわね」


「よくこんな場所を見つけたもんだよ」


 あまりその場に立ち止まっているのもマズいだろうと路地から離れると通りを歩く。初めてのマミナの街だ。住宅街を歩いていると早起きしている住民とすれ違う。男性はポロの街で見る格好と変わらない。シャツにズボンと言った服装の人が多い。女性はロングスカートの人が多いかなと思って見ているとカオリとユキが話している声が聞こえてきた。


「色使いがポロとは違うわね」


「原色が多いね。派手目かも。山奥の街の女性達が身につけている服と同じよ」


 それを聞いて女性を見ると確かに赤や黄色と言った原色を使ったスカートを履いている女性が多い。上は白やブルーのシャツだ。原色は使っているけど上品な感じ、あくまで自分の感じだよ、そんな人が多い。ちなみに俺は美的センスはゼロだと自覚している。


「ここら辺りは高級住宅街かも」


 そう言われてみれば大きな家が多い。宿も押さえる必要もあるし、街の中心部に行こうと俺たちは住宅街から街の中心部に向かう。歩きながら見る景色はポロの街とそう変わらない。カオリやユキも同じ感想だ。


「ユイチ、あまりキョロキョロしていると不審者と思われちゃうわよ」


「すみません」

 

 初めて見る街なので無意識のうちに首を左右に大きく動かしてあちこちを見ていたよ。目立たないという基本を忘れてしまっていた。お姉さん二人はその辺が上手いんだよな。さりげなく周囲を見ている。


「仕事で使っていたテクニックの1つね。見てない様でお客様を見る。訓練したの」


 目の動きよとユキが教えてくれた。俺みたいに顔を大きく動かしてあちこち見ていると不審者に思われるわよと言われて落ち込んだよ。彼女の言っていることが正しいから何も反論できない。気をつけながら通りを歩いていると大きな住宅からこじんまりとした家やアパートがあるエリアに入ってきた。そこにいる人たち、特に女性だが相変わらず原色を使った私服を来ている人が多い。


「開放的なのかもね」


「ポロとは違うね」


 国やエリアが変われば文化や生活スタイルも変わる。どちらがいいとか悪いとかじゃいんだよ。歩いている人の表情を見るとこれはポロと同じで明るい表情、元気のある表情の人が多い。生活が苦しくないからだろうな。


 歩いていると店が多いエリアになった。中心部に近いのかな。


「宿を押さえましょう」


 カオリが言って店先に立っている人に声をかけていく。男性も女性も聞かれたら丁寧に教えてくれる。


「旅行者ならあそこかな」


「どれくらい滞在するつもりなの?1週間? ならあそことかあそこが有名よ」


 俺たち3人は今日は私服だ。旅行者と見られているのなら私服が正解だったということだ。数人の住民におすすめの宿を聞くと、その宿に出向いては場所を確認し、料金を直接聞いた。


「ここにしようか」


「いいんじゃない?」


「ユイチもここでいい?」


「もちろんです」


 3部屋を1週間押さえて拠点ができた。値段を確認したが手持ちのこの国のお金で十分に払える範囲内だった。ポロで言えば中クラスのやや上の宿になる。


 宿が決まったので市内の探索、調査を開始する。1日では当然回りきれないので宿を中心として調べるエリアを東西南北の4つに分けた。そのエリアを順に回っていく作戦だ。まずは拠点の家がある住宅街の方角、北側のエリアを探索する。


 歩いていて商品を売っている店を見つけるとその値段や数、そして品質をチェックしていく。店の中や通りでメモすると怪しまれるので3人で分担して頭の中に数字を叩き込んでいく、俺は記憶力がよくないが、そんな言い訳をすることはできないので必死で記憶したよ。


 外のレストランでランチを食べながら数字をメモに書き写して記録する。ランチが終わるとまた市内をぶらぶらと歩き、気になる店があったらチェック。夕方宿に戻ってきたときはぐったりしたよ。ある意味ウインドウショッピングだ。女性は平気なんだろうけど、目的もなく街を歩くことなんてない俺にはきつかった。冒険者として師匠の洞窟にでかけたりするのは大丈夫なんだけどな。これは男じゃないと分からない感覚だぞ。


「衣料品の値段はポロと同じくらいと感じたんだけど」


「値段はだいたい同じね。デザインはポロの方が多いかも。でも色使いは全然違うわね」


 こんな感じでお互いに思ったことを言ってはメモにまとめていく。俺は書記も兼務なので必死でメモってるよ。そしてたまに思ったことを言う。


「ポロでいう冒険者、こっちだとハンターか。今日歩いたエリアだとその格好をしている人をほとんど見なかったな」


 俺が言うとその通りと頷いてくれるお姉さん二人。探索したのが昼間ということで街の外に出ているのかもしれないが、ポロでは昼までも結構な数の冒険者が市内を歩いている。これはポロの街が冒険者の街と言われているくらいに冒険者が多いのが理由だろうが、それでもマミナではハンターの姿を見ない。


「確かハンターの狩場街から南に行った先の森だって言ってたよね。北のエリアだから少ないのかもね」


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