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第135話


 山奥の街に来て4日が過ぎた頃、朝の鍛錬を終えるとそこにいた長老が話があると俺たちを本館に案内した。ハミーとカシュも一緒だ。


「一度マミナの街に行ってくれないか?」

 

 部屋に入ると長老が言った。


「マミナに?」


「そう。あんた達の目でポロとマミナの違いを見てもらいたいんじゃ」


 長老が言うにはそれまでは仕入れ先の選択肢がマミナしかなかったのでそこから買うしかなかったが、ポロという2つ目の選択肢ができた。色々と制約はあるがポロからも物資を調達することができる様になって住民の暮らしも少しずつ良くなっているという。そのタイミングでポロの街に長く住んでいる俺たちにもマミナの街を見てもらって、どういう差があるのか、何をどっちの街で買えばいいのか、その辺りの意見が欲しいそうだ。


「2日後に交代メンバーがマミナに向かう。彼らと一緒に移動してもらってまずは我々が拠点にしている家に飛んでもらう。その後はそのままそこを拠点にしてもいいし、宿を借りても構わない。帰りは我々と別行動で問題ない。我々より転移の距離が長いし、魔力も多いからの」


 往路、ここからマミナの街まではここの住民と一緒に移動し、拠点に飛ぶ、そのあとは好きに動いて調査が終わったら自分たちだけで戻ってくるってことか。


 思いもかけずにマミナに行けることになりそうだ。せっかくならついでに海も見てみたいな。いや、観光で行くんじゃないんだ。いかんいかん。


 長老からはお願いするからお礼は魔石で渡すと言われたがそれはカオリが断っていた。ユキもいらないと言っているし、俺もお礼なんて必要ないと思っている。


「この街の家にも家賃を払わずに住まわせてもらっていますし、この街に来ているおかげで自分たちも好きに禁断の魔法の鍛錬ができている。それだけで十分にお世話になっていると感じていますから」


 ユキが言った。俺も全くその通りなので大きく頷く。俺の仕草を見ていた長老。


「そう言う事ならお言葉に甘えようかの」


 行くことにはなったが、俺たちはマミナの街を知らない、もちろんマミナがある国についても知識がない。


 長老に代わってカシュが東のエリアについて説明をしてくれた。


・マミナの街があるのはアルキダ国の南部。

・山裾から街までの距離は約10Km。夜の間に山裾に降り、森を抜けたところから一気に街の中の拠点に転移する。森を抜けたところから拠点までの距離は訳7Km。

・街の出入りは自由だが夜間は城門が閉まる。

・街の治安は良い。

・アルキダ国にも魔獣を倒して生計を立てている人たちがいるが、彼らはジョブを持っていない。精霊、回復魔法が得意な人、武器が得意な人という区別がされている。彼らのことは冒険者とは呼ばずにハンターと呼ばれている。

・街の周辺に魔獣はほとんどいない。南部の森に生息しており、ハンターはそれらを倒して魔石を取り出して業者に販売している。


 ジョブがないから魔法が使える人という一括りになっているんだ。ローブや杖もよく言えばオールマイティ、悪く言えば最低限の能力しか付与されてないんだろうな。となるとあまり高価なローブを杖で街の中を歩くと目立つということになるのかな。


「その通りです。なので街の中では私服で過ごすのが良いと思います」


 俺が思ったことを聞いたらカシュがそう答えてくれた。これは事前に聞いていて良かった。お姉さん二人はマメに着替えているけど、俺なんてほとんど年中ローブとズボンという精霊士の格好だよ。


「あとは気にすることはないですね。旅行者として振る舞って問題ありません。治安も良いですし」


 街には兵士がいて定期的に街を巡回しているそうだ。治安がよいのはそのおかげだろう。


 その後、俺たちがこの街の郊外の山で倒した魔獣の魔石の一部をアルキダ国の通貨と交換してもらった。俺たちはあちらの国の物資に対する相場観は持っていないが、カシュやハミーによるとそこそこの宿に連泊しても問題ないほどの金額になっていると言う。万が一足りなければ、一緒に移動するこの街の人に換金を頼めば良いと長老が言った。


「マミナもポロも我々が生きていく為の物資の調達として大事な街だ。その2つの街について第三者の印象を聞くのは大事なことだと考えておる」


 

 本館を出た俺たちはそのまま仮の自宅に戻ってきた。リビングに座るとジュースを飲んで喉を潤す。


「ユイチは私服は持っているの?」


「2着収納に入ってる」


「なら大丈夫かな」


 お姉さん二人には聞くまでもない。その後3人で話し合ってマミナの街に着いた翌日に宿を探してそこに宿泊しながら街の中を探索してみようと言うことになった。


「山奥の街の人たちは信用できるけど、やっぱり同じ屋根の下で寝るというのはね」


「そうそう。ユイチとなら全然平気なんだけどね」


「ありがとうございます」



 俺たちがマミナに行っている間はこの街の住民の鍛錬というか指導はお休みになるが仕方がない。明日は彼らにいくつか課題を出して、自分たちがいない間にそれをこなしてもらう。


「こういう形でマミナに行くとは思いもしなかったよね」


 カオリが言っているが全くだよ。山の上からマミナの街を見て終わりだと思ってたら街の中の様子を見ることになった。


「滞在期間とか言われていないからさ、マミナに行ってからの判断でいいけど、街への出入りが自由だとしたら東の端まで行ってみない?」


「いいね」


 ユキの言葉に思わずいいね!を押した俺。


「元々東の端に行ってみようって思いから始まった東方面の探索だしね、ユキの言うとおり、マミナに行って様子を見て、行けそうなら端まで行ってみましょう」


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