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第131話

 彼らが家に来た翌日は休養日だった。あの4人は今日も市内のあちこちをうろうろしているんだろう。山奥の街に帰る前に挨拶に来ると言って帰っていったが、俺たちは、彼らがポロに来るのも2度目だし、基本は彼らの好きにさせてこちらから手を差し伸べる事を控えようと決めている。自分の目で見て、周りの人に聞いて、そして判断するのが一番だよ。


 自宅にお姉さん二人がいたので、俺は昨日感じたことを二人に話をした。長老とハミーのケット・シーというか猫の精霊が同じスキルで、ハミーの風の精霊はユキと同じスキル。関係性はどうなんだろうという話だよ。


「ユイチが言う様にジョブを取っている、取っていないというのは関係あるでしょうね。その上で元々猫ちゃんは1種類しかいないのかも知れないね」


 俺の話を聞いたユキが言った。


「サンプル数が少ないよね。山奥の街の人たちがもっと精霊を召喚できた時に傾向がはっきりするかも知れないわね。それでユイチはどう考えているの?」


 俺は聞いてきたカオリに顔を向けた。カオリは召喚はできないが、だからこそ第三者の目で冷静な判断をしてくれるんだよ。


「自分のジョブと、召喚した精霊が使えるスキル、魔法は関係があると俺は思っているんだよ。そんな中で長老の猫が同じだったとなると、ユキが言う様に回復魔法のスキルを持っている精霊は猫の精霊だけと言うことになるのかなと思ってる」


 そう言ったものの、確かにカオリが言う通りで、まだサンプル数が少ない。何より俺自身が猫の精霊の召喚ができていない。猫は回復魔法系の人が呼び出す精霊かなと思っていたらサーラ長老が召喚した。となると俺にも召喚できるってことだよな。


 休養日開けは街の周辺で軽く身体を動かしながらBランクを中心に討伐し、翌日から遠出になる。俺は毎回新しい花を買っては師匠の霊前にお供えしている。これは欠かしちゃいけない。この世界の日本人の先輩でもあり、生き方を教えてくれた師匠に敬意を払うのは当然だ。もちろんカオリもユキも俺と同じで毎回お祈りをしている。


 翌日、師匠の洞窟から出ると森の中の敵を倒しながら奥に進んで第二拠点の洞窟近くまで移動した。ここが俺たちのメインの狩場だ。周辺にはAランクがいるしライバルはいない。ここでがっつりと魔獣を倒して魔石や死体を持ち帰ることで金策になる。


 精霊を召喚して戦闘をする時は洞窟からさらに奥に進んだところでやる様にしている。途中に川があって普通じゃ渡れないのでまず問題ないとは思うけど、それでも慎重になるに越したことはない。精霊を戻すと夕方まで俺たち3人でAランクの敵を倒してから洞窟に飛んでそこで野営する。最近はここで2泊するのがルーティーンになった。


 ここは地面から少し高い場所にあるのでまず見つからないし、魔獣が入ってくることもまずない。この場所を見つけられたのは本当に僥倖だったよ。


 交代で食事を済ませると俺とユキは洞窟の中で精霊を呼び出す。ハルとローズを呼び出すとユキが呼び出した精霊達と一緒に洞窟の中で走り回ったり、レムの腕や頭に止まったりと遊んでいるがそれを見ているのが楽しい。


 カオリはそれを見ながら魔法剣の鍛錬をしている。


「今日森で敵を倒した時に感じたんだけどさ、サクラとリーズの魔法がまた強くなってた気がした。素早く、そして長い間動けるのよ。サクラの強化魔法も強い気がしたわよ」


「そうみたいなの。自分でもこの前よりも強い?って思っていたもの。カオリもやっぱりそう感じてたんだ」


 二人がそんな話をしているが俺にはわからなかったぞ。もっともサクラとリーズの魔法の恩恵を受けていないから仕方がないといえばそうなんだけど。何だか寂しいものがある。アリスはまぁユキ専属みたいなものだから俺に恩恵がないのはわかるんだ。


「ローズとハルの魔法はどんな感じだった?」


 カオリが俺に顔を向けて聞いてきた。


「この前と同じかな。少し前にレベルアップというか、威力が増したのでしばらくはこんな感じじゃないかな」


「でも強烈よね。ハルもローズも精霊魔法一発でAランクに大きなダメージを与えるんだもの」


「そうそう。おかげでその後に私が剣を一振りしただけで倒れてくれるからすごく楽」


 そうなんだよな。俺の精霊達に魔法を撃たせると強い魔法を撃ってくれるので短時間で討伐できる。おかげで敵を倒す数が増えて効率がいいんだよ。精霊を呼びっぱなしという訳にはいかないけど、それでもトータルで倒した魔獣の数が増えることで俺達の見入りが増えているのは間違いない。しかも俺が魔法を撃つ回数が減って楽ができる。


 ユキが精霊達を戻した。俺はまだ魔力があるのでそのままにしているとハルとローズが俺のところにやってきた。ハルはいつもの指定席の左の肩に、そしてローズは俺の膝の上に乗ってくる。それを見ているカオリ。


「山奥の街の人ってやっぱり優秀なんだろうね」


「そうだよね。真面目に鍛錬に取り組んでいるのは間違いないよね、それにしてもさ、この短期間で5人が召喚に成功したってすごいことだよ」


 ローズを撫でている俺も全くその通りだと思っていた。


「今来ているハミー達が山奥の街に戻ってしばらくしたタイミングで私たちもあの街に出向いてみようか。向こうで皆の鍛錬を見ることで何かヒントが見つかるかも知れない」


「得るものがなくても気分転換にはいいかも。1年以上行ってないから行ってもおかしくはないわよね」


 カオリとユキがそんな話をしているのをローズを撫でながら聴いているとカオリが顔を俺の方に向けた。


「ユイチはどう思う?」


「気分転換にはなるね」


 違う場所で鍛錬することで何か見つかるかも知れない。見つからなくても問題ない。そんな軽い気持ちで行こうよとカオリが言った。


 俺はなんとかして3体目を召喚したいと思って色々と自分なりに頑張ってはいるけど、今のところその気配が全くないし、召喚するイメージも湧いてこない。おかしいな、上手くいかないな、とウジウジしているばかりなので、久しぶりに山奥の街に出向くことで気分転換になってその後でいい結果になるかもしれない。知らんけど。


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