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第13話


 神様に認められるというのはどうやら本当の様だ。ジョブを正式に決めた翌日、外に出た俺たちはその言葉が本当だったのを実感する。カオリもユキも、そして俺もそれぞれの威力がアップしていたのだ。

 

 カオリは剣の切れ味と体の動きが良くなり、ユキは回復魔法と強化魔法が目に見えて強くなっていた。そして俺の精霊魔法もしかりだ。最初のオークに今までの威力で魔法を撃ったらオークが爆発して跡形もなくなってしまった。


「またやってしまった」


「大丈夫。それよりまた一段と魔法の威力がアップしたわね」


 落ち込んでいる俺の肩をトントンと叩きながらユキが慰めてくれた。それから加減してようやく迷惑をかけない程度の威力を覚えた。


「ジョブを得たし、ブロンズにも上がった。また相手を変えないとね」


 外から戻ってきて精算が終わったあとでギルドの酒場にあるテーブルに座って飲み物を飲んでいる俺達。夕刻の混雑する時間にはまだ早いせいか酒場は空いていた。以前夕刻になって戻ってきたらギルドのロビーや酒場には凄く多くの冒険者たちがいて、しかもカオリとユキはその場でナンパされたりしている。それ以来ピーク時間を外してギルドに来る様にしていた。


 ちなみにナンパされた時はカオリもユキも半分キレて、


「私達は仕事で冒険者をやってるの、男を探してるわけじゃないんだからね」


「男には飢えてませんので結構です」


 とえらい剣幕で相手がタジタジになっていた。俺は2人の後ろに隠れる様に立っていたが男には飢えていませんと言われた時はちょっとだけ嬉しかった。


「さっき受付で聞いたらブロンズになったらオークの強い方やあとはトロルっていうオークの上位の魔獣が相手になるみたい。場所も聞いてきたわよ」


 俺がナンパの時の事を思い出している間に2人は明日からの予定について話をしていた。慌てて現実に戻って相槌を打つ。カオリとユキのお姉さん2人が決めたことに異議を挟むなんて考えられない。2人もブロンズになったし、これでいいんじゃないの?と本音では思っているがこの流れの中ではとてもじゃ無いが言えない。


「きつかったらオークに戻ってもいいしね、とりあえずやってみましょう。ユイチもそれでいい?」


「問題ないね」


 思わず言ってしまった。


「決まりね」


「それでね、いくつかブロンズランクの狩場はあるんだけど、その1つが例の洞窟の森の入り口付近なのよ。せっかくだからそのエリアにしてさ、狩りをする前にお参りしようか。野営前提になるんだけどいいかな」


 和田師匠の洞窟にはしばらく行っていない。二人もちゃんと覚えていてくれた様だ。もちろん俺もお参りは大賛成だ。


「しばらく行っていないしね。俺が花を買っておくよ」


 

 翌日カオリが代表でクエストを受けると俺たちは師匠がいる山を目指して歩いていった。ブロンズの狩場はポロの街からそう遠く無い場所が他に数ヶ所あるのだが今回は師匠のお参りという目的があるので遠い場所を選んでいる。


 ただ遠いから他のライバルがいないかもとお姉さん2人が言っていた。確かにそれはあるかも知れない。普通は野営するか日帰りかとなったら日帰りの場所に行くよな。俺だって本当は日帰りの場所で地味にやりたいが師匠のお参りと聞けばそれは別だ。なんと言っても俺から見れば師匠はこの世界で生きていくためのバイブルを書いて残してくれた偉大な人だ。おろそかにはできない。


 森に入ってしばらく歩くと一角ウサギが現れたがカオリが瞬殺していた。最初に来た頃にビビりまくっていたのが懐かしい。今は見てもビビらなくなっている。自分自身もちょっとは強くなっているという自覚はあるんだよ。


 夕方遅い時間に師匠の洞窟に着いた。あたりは暗くなっていたのでライトの魔法をつけて洞窟の中を明るくする。二人からすごいねと褒められたがこれはアパートの部屋で暇な時に練習をしていたので慣れたものだ。俺がこのパーティに貢献するにはどうすれば良いかってのを考えた。その1つがライトの魔法だ。魔力もまあこの程度であれば照らし続けても問題ない。ライトの灯りの中で野営の準備をする。洞窟の中はまるで蛍光灯が点灯している程に明るかった。最初の豆電球の大きさと比べれば雲泥の差だ。


「ユイチのご飯、美味しそうね。私のと少し交換しない?」


「私もお願い」


 そうやって3人で持ち寄った夕食を交換しながら話をする。話と言ってももっぱら俺は聞き役だが。2人は盾ジョブの人を探しているのだがなかなか良い人が見つからないらしい。ちなみに俺は料理は以前から好きだった。それがここで役に立つとは。


「できれば男性はパスかな。変な人だったらヤダし」


「そうそう。いい人かどうか判断が難しいよね」


 いやいや、俺も立派な男性だぞ。しかも大人だし。そう思っていると2人が俺に顔を向けて言った。


「ユイチは特別よ。別格だからね」


「そうそう。ユイチはいいの」


「そ、そうなのか」


 何が別格で何がいいのか良くわからないが2人がそう言ってくれるのならそれ以上深く考えるのはよそう。


「まぁ焦らずに探しましょう」


 夜にお祈りをしたが、翌朝はしっかりと花を添えてまたお祈りをする。女性2人も手を合わせていた。お参りが済むと洞窟から森に移動して、そこで遭遇する魔獣を相手にする。角が2つある二角ウサギというのもブロンズの相手になるらしい。一角ウサギよりも体も大きくて素早い。なんだウサギじゃねぇかと思うと痛い目にあう魔獣だ。


 それをカオリが避けるわ避ける。ひょいひょいと身を躱しながら片手剣で傷をつけていく。傷がついて動きが遅くなったら俺の出番だ。精霊魔法を撃って大きなダメージを与えて止めを刺す時もあるし、カオリが止めを刺す時もある。威力が大きすぎると爆発して何も残らないから加減しながら精霊魔法を撃つ俺。慣れてくると自分の中で撃つ威力の管理ができる様になった。


 無能でも学習すればそれなりに覚えるんだよ!


 その日は森の中で一日中トロルをメイン、時々二角ウサギの相手にして夕刻に洞窟に戻って夜を過ごした俺たちは翌朝に洞窟を出た。


「師匠、またお参りに来ます」


 両手を合わせた俺たちはそのまま森を抜けて夕刻にポロの街に戻ってきた。2泊野営をしただけだがポロの街に入るとホッとする自分がいる。カオリとユキもそうだったらしくやっぱり街はいいわねと言っていた。ちなみに泊まりでトロルやニ角ウサギを倒しまくったせいか報酬は1人金貨2枚以上になった。


 ギルドで清算をした俺たちは市内のレストランで夕食を摂る。休日前の儀式だ。久しぶりに自分のベッドで思う存分に寝られるぞ。


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