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第129話

 俺が提案した洞窟2泊はお姉さん二人もOKしてくれた。なので、最近は師匠の洞窟で行きと帰りでそれぞれ1泊、鍛錬場の洞窟で2泊、都合4泊5日で遠出をし、それから1日、あるいは2日休養日をとり、休み明けの日はポロ郊外で体を動かし、その翌日から再び洞窟に出向くというローテーションになっている。


 森の奥の鍛錬場では精霊を呼び出して魔法を撃たせて魔獣を倒しているが、俺はまだ新しい精霊の召喚には成功していない。ユキは水の精霊のアリスを召喚できているけど、俺はまだ2体だけだ。


「精霊を呼び出すのは二人のライフワークになりそうね」


 自宅で3人でくつろいでいる時にユキが言った。新しい精霊の召喚に成功しても今のところ奥の洞窟か山奥の街でないと呼び出せない。今呼び出せる精霊だけでも十分に強い。慌てて呼び出そうとはせずに、ゆっくりとやろうという話だ。


「そうだね。焦っても仕方ないよね」


「精霊はまだいるとは思うの。だから呼び出す鍛錬は止めない。でも焦らない」


「了解しました」


 最近はほとんど決まったルートというかルーティーンをこなしている。幸いにカオリもユキも新しい場所、例えば北の国に行ってみようとか言い出さないのでほっとしている自分がいる。


 決まったルーティーンをしっかりこなしているとお金も貯まる。俺たち3人は装備や武器を更新した。防具屋と武器屋に言わせると今回買った装備がとりあえず今売られている中では最上級の装備になるそうだ。ローブとズボンはセットでキルト魔力量増、魔法命中増の効果があり、杖は魔力量増に加えて魔力の流れが良くなる効果がある。高い物だったけど命には変えられないよな。これより上の装備になるとダンジョンの奥にある宝箱から手に入れるかダンジョンボスを倒した時にてに入れるしかないそうだ。もちろん必ず宝箱があるとは限らないし、ダンジョンボスを倒しても毎回レアな装備が出るとは限らない。


 カオリも防具と片手剣を更新した。防具はレザーアーマーで生地は薄いが防御力はアップし、素早さが上がる効果がついているそうだ。片手剣は攻撃力と素早さがアップする効果がある。一つ言っておくと露出度は控えめのアーマーです。


「商売道具をケチっちゃ駄目だよね」


「お金はかかったけどまた稼いだら貯まるし」


 休日の夜、自宅のリビングでそれぞれが更新した装備を見せ合いしながら話をしている俺たち。


 お姉さん二人ともダンジョンに潜る気はないのでレアなアイテムなどを手にする機会はないが全然構わないと言っている。もちろん俺もそうだ。市内の店でそこそこの物が手にはいるのならそれで十分だよ。プラチナランクを目指すのなら別だけど、俺たちはそこまで頑張る気はない。ゴールドランクで一流冒険者と呼ばれる、一流だよ?十分じゃない。

 

 今のゴールドランクで人並み以上の生活ができているのに、その上の超一流なんて頑張りたい人たちが目指せばいいんだよ。最初に一人でこの街に来た時は死ぬまでブロンズで十分だって思っていたくらいなんだから。


 自慢じゃないが、冒険者になってから他人の装備を見て羨ましいと思ったことは一度もない。友達がいないから自慢されることもなければ聞くこともない。悲しいけどそのおかげで他人が気にならない。


 お姉さん二人には結構女性冒険者の知り合いがいる。装備の話なんかしてるのかなと思って聞いてみたがそんな話はほとんどしないそうだ。


「どこのお洋服屋が安いとか、新しい服が入ったとか、喫茶店の何が美味しいとか。そんな話、プライベートの話がメインよ。私もカオリも上を目指さないというのは周りは知ってるからそっちの話は振ってこないしね」


「そうそう。それに知り合いの中にも私たちと同じでゴールドで十分と考えている人もいるし。たいていは、たわいのない話ばかりね」


 日本にいた時の女性の行動パターンと同じってことだ。平和だな。いや平和が一番。


 それからも決まったルーティーンをこなしながら生活をしている俺たち。装備を更新して3ヶ月も経つとそこそこ財布にお金が貯まってきた。装備を買って金欠状態だったのから脱出できたよ。今のところ、何か欲しいものがあると言うわけじゃないんだけど、欲しいのが出た時にお金がないという事態は避けたいと思っていたのでこれで大丈夫でしょう。


 金の方は大丈夫になったんだが精霊の召喚の方は全然大丈夫じゃない。俺もユキもなかなか次の精霊の召喚に成功しない。自宅の部屋と第二洞窟で呼び出すんだけど出てきてくれないんだよな。ユキが4体召喚できて、俺は2体だけだからユキと比較をするのがおかしいと言う話もあるな。


 最近では自分が死ぬまでには新しい精霊を呼び出せればいいかと思う様になっている。最初は1体呼び出すのに成功したら次は早いと思っていたが、どうやらそう簡単なものじゃないみたいだ。精霊の世界はまだまだ奥が深いよ。


 図書館にも顔をだして色々な本を見ているけど、イメージが湧かないんだよな。実際氷の精霊のローズがウサギさんに似ているなんて召喚するまで全く想像もできなかったし。頭の中で精霊の形を思い浮かべるとダメなのかもしれない。


 夕食の時に俺が思っていることを言うとそれかも!とユキが言った。


「ユイチ、それはあるかもよ。私も生き物というか昔日本の絵本に書いてあった精霊をイメージしてるもの。でも実際に精霊を召喚できた時って生き物の姿じゃなくて、助けてとか手伝ってという時だったでしょ?そっちの方で考えてみた方がいいかも」


「ユキの言うとおりかもね。二人とも考え方を変えてやってみたら?」


 カオリが言った。言われてみればそうだよな。明日から方針を変更しよう。気がつくのが遅いよな、俺。



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