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第124話

 カオリが言ったあと4人はしばらく黙っていた。


「槍を持っている人がジョブを取るとどうなりますか?」


 ラックスが聞いてきた。これには槍を指導していたカオリが答える。


「槍だろうか片手剣だろうが武器を持っている人の多くは戦士になるの。私と同じね。戦士になると攻撃力や素早さが上がるわよ。山奥の街では言わなかったけど、槍を持つ人は戦士というジョブになると一段と強くなるのよ」


「パーティは最低2名から。普通は5名のパーティが多いわね。でも私たちの様に3人でもパーティとして登録はできる。命をかけて強い敵と対峙する気がないのなら5名じゃなくて3名や4名でも十分」


 カオリとユキが詳しく説明していく、それを聞き、時に質問してくる4人。


「たとえば今のこの4人でパーティを組むことができるってことですよね」


「もちろん。ジョブは関係なく組めるのよ。ただ実際は後衛ばかりのジョブ構成って聞かないけど。でもできない訳じゃない」


「あともう一つ」


 そう言った俺。


「転移、浮遊、収納などの時空魔法はジョブの僧侶、精霊士に関係なく使えるよ。俺たちがそうだから。そして召喚魔法についてはまだ100%間違いないと言い切れる訳じゃないけど、同じ精霊を召喚しても僧侶と精霊士では召喚した精霊が使う魔法が異なる」


 時空魔法は現地で俺もユキも何度も披露しているし、召喚魔法についてもリーズとハルという風の精霊を見ているから彼らも理解できるだろう。


「ユイチの言った通りね。ジョブを決めても時空魔法は変わらないわね」


「さらにもう1つ言うなら、もしジョブをとるのなら2パーティ以上作っておくとシルバーランクになったあとが便利かもしれない」


 確かに複数パーティがあれば交代でポロに駐留できるな。


 その後は冒険者の稼ぎに付いて彼らに話をする。これも大事な話だ。アイアンランクは正直稼げない。安宿に泊まってポロ市内のクエストをこなして日銭を稼ぐ。ブロンズになると街の外に出て薬草取りをしたり、弱めの魔獣を倒して魔石を取り出すことになるので生活レベルが一気に上がる。安宿からアパートに引っ越せるくらいのレベルになる。そしてシルバーランクになるとさらに稼ぎがよくなる。強い魔獣を相手にするがその分魔石の買取値段が上がるからだ。装備にはお金はかかるがそれでもまた十分なお金が残る様になる。山奥の街の近くで倒した魔石を持ち込めば更に実入りが増える。活動に制限がなくなることもありかなり自由度があがる。


「先生3人はゴールドランクですよね。ゴールドになるとシルバーよりもさらによくなりますか?」


「なるわね。3人でお金を出し合ってこの一軒家も買えたし、普段相手にするのがゴールドランクの魔獣になるので魔石の買取金額も高い。大金持ちとまではいかないけど中金持ちくらいにはなれる。強い魔獣を倒すという普通の人がしない仕事だから報酬が高くなるの」


 ユキがそういった後で、「でもね」と言ったカオリ。


「今の話は私たち冒険者側からの話。冒険者とはこういうものよと説明したの。それよりも前提というか、山奥の街に住んでいる貴方たちが冒険者という職業、ジョブという職種、それと新しいポロの街。これらに対してどう考えるのかというのをはっきりさせないといけないわね、すでにマミナという仕入れ先がある中でのこのポロの街をどう利用するのかをきちんと考えないとね」


 カオリの発言に頷いている4人。当たり前の話だが街の人全員が冒険者になる訳ではないだろう。冒険者にならなくても十分に生活できるし、年に数度の頻度なら銀貨1枚支払ってポロの街に入ってそこで仕入れをしても問題ない。今までの仕入れ先としてマミナの街もある。あちらがメインで時々ポロに来るということであれば銀貨1枚払う方が便利といえば便利だ。


「マミナの街は東の山の端からそう遠くない場所にあるけどポロは西の山の端からまだ4日ほどかかるのも考慮しないとね」


「そういうこと。街に戻ったらよく考えるといいわ」


 カオリとユキが話をしているのをジュースを継ぎ足しながら聞いている俺。このお姉さん達はおちゃらけている時が多いけど、こう言う場面では本当にしっかりしているんだよな。昼も夜も、やる時はやる人たちなんだよ。


「そうですね。私たちは今まで山奥の街にいて、唯一の外との接点がマミナの街でした。正直そこで仕入れているだけで普通に生活を送っています。今回このポロの街にやってきて、マミナ以外の新しい仕入れルートになりえるのかどうか調査しています。確かに品物は沢山あります、ただ先生が仰った様にこのポロに来るには時間がかかります。さらに、冒険者という職業にジョブ。一気に大量の情報が入ってきました。今後、私達の街をどうするるのか、そうすれば住民の暮らしが良くなるのか。今回のポロの街での視察を終えて自分たちの街に戻った後、長老以下街の幹部の方と相談、検討します」


 ハミーさんが言った。街の幹部の1人だけあってしっかりしているよ。俺だったらすぐに流されちゃうだろうけど、たいしたものだ。


 俺たちは期限のある話でもないし、山奥の街でじっくりと検討した方が良いと言ってこの話は終わった。


 明日は午前中は皆で武器屋と防具屋を訪ね、午後は彼らで好きにポロの街を探索する事になった。


 ご馳走様でしたと4人が御礼を言って家を出たあと、俺たちはキッチンからリビングに移動してソファに座って話をする。


「どうなるかな?」


「急な変化は長老以下、街の人たちも望んでないだろうね」


「となるとしばらくは銀貨払ってその都度来る感じ?」


 俺が言うとその可能性が一番高いんじゃないかというお姉さん達。一度来たくらいでは分からないだろう、今度は別のメンバーが来るんじゃないかと言っている。確かにそれもありそうだよな。


「ただ将来は分からないわよ。今日私達が話をした冒険者についての説明、それとこの街の様子、移動も含めて全てを勘案して結論を出すでしょうね」


 つまり今の俺たちにはこれ以上やることがないってことだ。明日案内し、その後も帰るまでにどこかに案内することはあるかもしれないが、全ては彼らが今後どうするかの判断材料集めだ。調べるのならこっちも隠さずにしっかりと教えてあげようと言うことになった。


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