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第122話

 それから2日間は4人を案内していたが、3日目からは自由に行動してもらう。いつまでも保護者の様に付いていくのも彼らも気を使うだろうし。


 俺たちは3日目からポロでの冒険者活動を再開した。3日目は日帰りで街の外でシルバーランクを倒して身体を慣らせ、次の日から師匠の洞窟とその奥にある第二洞窟で鍛錬をする。


 久しぶりに訪ねた師匠の洞窟、花を捧げ、祈りを捧げるとその夜は洞窟で野営をする。これもいつものパターンだよ。


「彼らはこれからどうするかな?」


 俺が洞窟の入り口で見張っている時、先に夕食を食べているカオリとユキの話し声が聞こえてきた。


「マミナとポロの2拠点にするんじゃないかな」


「カオリもそう思う?私もなの、いずれこの街でアパートか家を持って物資の買い出しの拠点にしそうだよね」


「拠点が2つあったら便利だからね。メインは山奥の街から行きやすいマミナでしょうけど、こっちがサブになるんじゃない?ひょっとしたらあっちには無い品物がポロにあるかもしれないしさ」


「マミナで買った杖は重たかったよね。こっちで手当するんじゃないかな」


 話を聞いていた俺が顔を外から洞窟の中に振り返っていうと、それはあるかもと2人が同意してくれた。あっちとこっち、どっちの文明が進んでいるのかは俺たちは知らないが、山の街の人たちの格好や持っている道具を見る限りではそう差がないんじゃないかな。ただ細かいところで、たとえば重かったり、使いにくかったりというのはあるだろう。仕入れ先が複数あればそこはチョイスできるよ。マミナの品物の方がいい場合もあるだろうし。


 4人が長老や街の人から何を頼まれているのかは知らないけど、おそらく今後ポロの街に出向くメリットやデメリットを調査するのも目的の1つになっているんじゃないだろうか。


 買い出しするに値する街? 治安はどうか? 人々の生活習慣は自分たちの街と同じか?など調査をして長老や街のお偉いさん方に報告するのかもしれない。


 そう思いながら俺もそんなことを考える様になったんだと思うと感慨深い。いや、大袈裟に取られるかもしれないけど、日本にいた時なんて周囲に対してほとんど無関心だったからね。友達が少ない、もとい、ほとんどいなかったけど俺にはスマホがある。と思っていたよ。実際スマホなんて単なるツールでそれ以上でもそれ以下でもないのにさ。相手の顔も知らないのに友達って何なんだよ。と今になって言える。


 次の日は森の奥でゴールドランクを倒しながら第二の洞窟まで移動した。そこで各自が鍛錬をする。俺は早速ハルとローズを呼び出した。ユキもサクラ、リーズ、レムを呼び出したので精霊達はみな集まっているよ。こうしているだけで親密度が上がるから俺もユキも見ているだけだ。


 カオリは片手剣の上に魔法を乗せては消す鍛錬をしている。各自がそれぞれ鍛錬をしてから夕食になった。


「明日はこの森でゴールドランクを倒して師匠の洞窟でもう1泊、明後日にポロに戻る感じでいいかな?」


「いいんじゃない?」


「問題ありません」


 夜は交代で洞窟の入り口で見張りをする。俺の担当は真夜中だ。ここから山裾にそって右に歩くと師匠の洞窟の前を通って森を抜けるが途中に川があるのでそう簡単に人間がやってこられない。ということで俺はハルとローズを呼び出した。ハルは俺の左肩に乗って足をぶらぶらさせているし、ローズは座っている俺の膝の上にちょこんと座って丸まっている。こうしているだけでも親密度が上がるのでちょうど良い鍛錬になるんだよ。


「ハルとローズの他に精霊さん、出てこないかな」


 小声で言ってみたが何も変わらない。ローズの時は出てこい!と思ったら出てきたんだけど、そう何度も上手くはいかないか。


 肩に乗っているハルは時々浮かび上がっては洞窟の中をグルリと一回りしてからまた肩に戻ってくる。俺が何も言わなくても洞窟の外には出ないんだよ。できた精霊さんだよ。雪ウサギのローズは俺の膝の上がお気に入りなのかずっと丸まったままだよ。時々大きな2つの耳がぴくぴくと動くのがまた可愛い。癒される。


 外の真っ暗な森を見ながらこれからどうなんるんだろうな。なんて考えてみる。山奥の街に出向くのはこれからは頻度が減るだろう。新しい場所って言えば北に別の国があるが、俺としてはそこまで行きたいとは思わないんだよな。面倒くさいってのもあるし、基本ポロでのんびりと暮らしていきたいという気持ちが強い。人見知りするし物欲もないし。金銭欲もない。ほどほどの生活をしているのが自分には一番あってるんだよ。そうは言いつつもお姉さん2人が行こうと言ったら結局行くことになるんだろうけど。少しはマシになってるけど基本チキンで日和見主義者なんだよな。


 冒険者としてゴールドランクまで上がってそれなりの暮らしもできている。このままポロの街で緩やかに歳をとっていくのが理想だ。



 次の日は予定通り森の中で結構な数のゴールドランクの魔獣を倒し、師匠の洞窟で夜を過ごした俺たちはポロの街を出て4日目の夕刻前に街に戻ってきた。今回はがっつりと稼いだのでお財布がかなり暖かくなったよ。


「彼らは楽しんでるかな?」


「そろそろ慣れてきたんじゃないかな。山奥の街よりも広いからあちこちウロウロしてるんじゃない?」


 屋台で串焼きを買って自宅で串焼きとビールを飲んでいる時に山奥の街から来ている4人の話題になった。


「4日目か、そろそろ慣れてきた頃だろうね」


 そう言って俺は串焼きにかぶりついた。濃いめのタレが肉と合う。最初にポロの街に来て以来、あそこの屋台の串焼きはずっと俺の中でのお気に入りだよ。


「だよね」


 森の奥の洞窟に足を伸ばして活動をして戻ってきた翌日は休養日だ。明日は休みだから酒でも飲むのなかなと思っていたら、食事が終わるとカオリが先にシャワーに行った。彼女の後ろ姿が消えるとユキが俺に顔を向けた。


「ユイチ、今日は私と一緒にシャワーよ」


「はい!分かりました」


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