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第12話


 宿からアパートに引っ越しをして10日も経つと新しい家での生活パターンができた。朝は各自が勝手に部屋で朝食を食べ、各自で昼ご飯を用意し、それからギルドに顔を出してクエストを受ける。ご飯は俺の魔法袋にいれておく。時間は止まらないので生の食事はダメだが。


 夕刻にポロの街に戻ってくるとギルドで清算。その後は市内のレストランで食べたり屋台で買って帰って部屋で食べたりする。休日は基本各自が自由に過ごす。


 俺自身はこういう生活が嫌いじゃないので結構楽しんでいる。生活が落ち着いたタイミングでようやく防具と杖を買い替えた。前のよりも少しお値段は高いがそのかわりにローブには魔法命中が少しアップする機能がついているし、杖も同じで少し能力がアップする。


 同じ魔法使いのユキは俺の新しい装備をみて私も変えようかなと言っているが彼女達の装備は俺のよりもずっと高価なのは間違いない。前の世界では装備が支給されたということでその装備を使っているが、人殺しを前提としている兵士の装備だ。剣士のカオリにしてもしっかりとした作りの武器や防具だ。


「今日は相手を変えるわよ」


 朝、ギルドでクエストを受けてきたカオリが戻ってくると言った。パーティのリーダー格のカオリに任せているのではい、分かりましたというだけの俺。


 街の外に出ると今までとは違う方向に歩き出した。


「今日の相手はね、オーク。アイアンランクの討伐クエストの中ではオークが一番報酬が高いのよね」


 カオリがそういうと楽しみだねとユキが言った。俺はオークと聞いてギルドの資料室で見たオークを思い出した。体長は人間とほぼ同じか少し高くて体重が重い。豚面をしていて人間の女が大好きな変態野郎だという記憶がある。


「オークって豚面してる魔獣のこと?」


「そうだよ。ユイチも知っているんだ」


 知っているがこの二人はオークが女好きの変態だということは知っているのだろうか。まぁオークにこの二人が犯されるとは思えないが。


「私がオークを探して引っ張ってくるからユキとユイチの魔法で倒してね」


「分かった」


 森に入るとカオリが一人奥に駆け出していったかと思うとオークを1体引き連れて戻ってきた。お世話になっているお姉さん方が薄汚いオークのおもちゃにされるのはなんとしても阻止しなければならない。俺が魔法を撃つとオークの首が綺麗に飛び散って絶命した。


「ユイチ、いい感じよ」


「その調子で頑張ってね」


 首のないオークの胸を裂いて平気で魔石を取り出しながらカオリが言った。その後もダメージソースはなぜか俺になってカオリとユキは魔石を取り出す係となる。たまにユキも魔法を撃っているがユキに言わせると俺の方が魔力があるからメインで倒してねと言われた。まぁオークなら全力の魔法もいらないし、魔力も減らないからいいかとその日はほとんど朝から夕方まで魔法を打ち続けた。


 夕刻に戻ってきて清算をするとなんと3人で銀貨120枚になった。ゴブリンで平均で銀貨80枚だったからそれに比べるとすごく増えている。金貨1枚越えだよ。12万円だよ!この金額なら2日活動すればアパート代の1ヶ月分になる。すごい。


「これだけ稼げると楽ね」


「そうそう。それにしてもさ、ユイチって魔力多いわね。今日魔力切れにならなかったでしょ?」


 想像以上に稼げたというので今は市内にあるレストランで夕食を食べている俺たち。


「そうだね。まぁ魔法も全力で撃っていないのというもあったけど、魔力が乏しくなったという感覚は今日はなかったよ」


「そこまで魔力があると楽よ。私はカオリが疲れた時に回復魔法を撃つだけでいいもの」


「じゃあブロンズに上がったらユキは僧侶でユイチが精霊士だね。私は戦士。いい組み合わせじゃない」


 この世界では冒険者はアイアンランクの間は前衛、後衛、つまり戦士と魔法使いという区別しかない。ブロンズに上がって始めてジョブを選択することができる。ちなみに俺はブロンズだがジョブを選択していない。外に出る気もなければ他の人とパーティを組む気もなかったからだ。受付嬢は呆れていたがまぁいいわ、それも冒険者の自由意志だしとジョブを決めないでいる俺を許してくれていた。


 前衛だとナイト(盾)、戦士、狩人、シーフ。後衛は精霊士、僧侶となる。要は魔法がメインのジョブが後衛でそうでないのが前衛だ。3人でも悪くないけど盾ジョブってのがあると自分がもっと楽になるんだよな。そう思っているとカオリが自分と同じ事を言った。


「あとナイトさんがいてくれたら文句ないわね」


「でも変な人はパーティに入れたくないわ」


 ユキの言っていることもわかる。俺は2人のやりとりを聞きながら食事をしている。2人の間では一応探すけど急がない。いい人が見つかるまでは3人で頑張ろうという結論になった。


「ユイチもそれでいいわよね?」


 もちろんそれに異存ありません。俺は口の中に肉を入れたまま頷いて答える。


 正直オーク相手なら盾がいなくても問題ない。魔法一発で倒れてくれるから楽だ。一度同時に2体やってきたが俺とユキがそれぞれ魔法を撃つと2体とも倒れてくれた。これに味をしめたのかカオリその後時々2体を引き連れて来る様になった。


 数を倒せば実入りが増える。1日活動してギルドに戻って精算すると銀貨200枚になる日も出てきた。それとオークを倒すとたまに肉をドロップする。ギルドではこれを買い取ってくれるので魔石代以外に肉代が入ることもあった。


 そうしてオークを倒して2週間経った頃、彼女達はアイアンクラスからブロンズクラスに昇格した。毎日あれだけオークを倒していればそうなるわな。


 ブロンズに昇格すると同時にギルドにジョブ登録をする。打ち合わせ通りにカオリが戦士、ユキが僧侶、そして俺が精霊士になった。登録した後でギルドの中にある部屋に移動し、そこにあるジョブ水晶なるものに両手で触れると自分のジョブが神に認められてそのジョブでの威力というか効果が増すらしい。一度決めたジョブは変更できないそうだ。


 異世界に2度も飛ばされた時に、神様の恩恵を全く受けなかった俺は神に認められると聞いた時にホンマかいなと思ったが水晶に触れてみると何かが身体の中に入って来る感覚があった。


 どうやらこの世界の神は全ての人に平等で、依怙贔屓をしない様だ。神様に好かれているかどうかは分からないが、少なくとも嫌われている様でもないと知って少しだけ安心した。


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