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第11話


 一角ウサギだと物足りないという二人の意見で翌日からターゲットを変更してゴブリン相手に戦闘をすることになった。パーティとしての方針はお姉さん二人が決めて俺に意見は求められない。逆に求められても困る。薬草取り、せいぜいウサギ退治でいいんじゃない?とはとてもじゃないが言えない雰囲気だ。二人に任せておけば波風が立たないしな。


 翌日は場所と獲物を変えてみたが、正直ゴブリンも相手にしたら弱めだった。自分でもそう思う位だから二人にとってはまだ物足りないのだろうなと想像する。剣と魔法で倒し、耳を切り、魔石を取り出す。二人に混じってたまに魔法を撃つが強く撃つとゴブリンが爆発してしまって部位や魔石が取れないので威力を落として、かつ二人の迷惑にならない様に加減しながら魔法を撃っていた。威力を落としているせいか魔力が減ったという気が全くしないまま1日が終わった。貢献度低いな、俺。


 1日外でゴブリンを倒すと銀貨80枚前後になる。ウサギの50枚よりもさらに多くなった。3日程外で狩りをすると1日休日というローテーションはカオリが言い出したのだがこれが体調管理に良い。休みの日が決まっているのは精神的にも助かる。何でもCAの時の勤務ローテーションを参考にしたらしい。



 この日はゴブリンや一角ウサギらを倒して夕刻に街に戻ってきて清算をするとギルドの中ではなく街のレストランに移動してそこで夕食を取る。休日の前の日の夜はレストランで夕食を何度か続けているとその流れができてしまっていた。


「明日はお休みでしょ?私たちは別の宿かアパートを探そうと思っているのよ。ユイチはどうする?」


 美味しそうにビールを飲んでいるユキが聞いてきた。


「僕は部屋でゴロゴロしていようかと思ってる」


「分かった。じゃあカオリと二人で出かけてくるけどいい?」


「どうぞどうぞ」


 自分自身は今のボロ宿で何の不自由もないが、女性二人はトイレが共同というのと壁が薄いのが気になるらしい。その気持ちもわからなくもないので二人が宿かアパートに引っ越すのはありだろうなと思いながら聞いていた。二人がポロの街にやってきて1ヶ月が過ぎている。市内の状況もわかってきただろうし色々と考えているんだろう。


「ちゃんといいのを見つけてきてあげるから期待していいわよ」


 カオリの言葉を聞いて混乱した。見つけてきてあげる?ん?どういうこと?


「そうそう。静かで広くて治安がいいのを探してくるからね。お姉さん二人に任せなさい」


 あれ?俺もなのか。いや、俺は今の宿でいいんだけど、安いし。

 そう思ったが目の前の二人はもう俺も一緒に引っ越しするという前提であーだこーだと話をしていた。このタイミングで俺はパスとは言えなくなってきた。


 結局最後にはお任せしますと言ってしまう。こういうところがチキンというか優柔不断なんだよな。昔からこの性格だ。



 翌日は宣言通り部屋でゴロゴロしていた。昼ごはんを食べた時にそう言えば俺の装備って最初に買ったままだったなとふと思い出してお金も溜まってきたから買い換えようかと一瞬考えたが、今日宿かアパートを探している二人が見つけてきた物件、部屋が高かった場合、先に防具を買っていると住居の金がないという情けない事態になったらまずいので防具を買うのはやめて午後も部屋でゴロゴロとしていた。


 夕刻前にノックの音と同時にユキが部屋に入ってきた。


「ユイチ、出かけるわよ。宿をチェックアウトして!」


「はい!わかりました」


 急いでいる雰囲気を出していたので俺も慌てて返事をして、すぐに部屋を出る支度をする。もともと部屋の中にほとんど私物がないのであっという間に部屋を出る準備ができた。宿をチェックアウトするとそこで待っていたユキと一緒に市内の通りを歩く。

 

「いい物件、アパートが見つかったのよ。ちょうど3部屋続きでね。人気の物件だからすぐに契約しないとなくなりますよって言われているの」


 歩きながら話をしてくるユキ。それって不動産屋が客に言う常套句じゃないのかよと思ったが、自分より先輩で人生経験が豊富であろうお姉さんが言うのだからその通りなんだろうと自分を納得させて大通りを歩いていると、通りから路地に少し入ったところにカオリと不動産屋の女性らしき人が俺たちを待っていた。


「ここなのよ。こじんまりとしてるでしょ?1階、2階とも3部屋ずつしかないのよ。ちょうどこの2階に住んでいた冒険者の人たちが他の街に行くからって部屋を解約したところだったのよ」


 カオリの説明を聞きながら2階に上がって部屋を見てみるとこれが想像以上に良い部屋だった。日本式で言えば1LDKというのか。広いリビングにキッチン、シャワーとトイレは別になっていて、リビングの奥にはもう1部屋ついている。


「どう?ユイチも気に入った?これで月に銀貨80枚よ。お手頃でしょ?」


 見た時は金貨1枚以上かと思ったが銀貨で80枚なら確かにお手頃だ。いいねというと決まりねとその場で契約を交わす。最近の活動で3人とも銀貨80枚の手持ちはあるのでお金を払って鍵をもらった。これで契約は完了だ。あっさりしてるが人の移動が多いこの世界ではこれが普通なのかもしれない。


 アパートの2階の3部屋は階段側から俺、ユキ、そして一番奥がカオリになった。自分はどこでも良かったので部屋割りも女性二人に丸投げする。彼女たちは自分たちで決めていくもののちゃんと俺の意見というか同意を求めてきて決して俺を蚊帳の外にはしない。本当に出来た人たちだよ。


「これでポロでの拠点ができたわね」


 契約が終わって3人でレストランで夕食をとりながら話をする。


「それでね、ユイチ。明日も休みにしたいの。色々買い物があるから」


「いいんじゃないかな。俺も部屋に置くものを買わないといけないしね」


 その翌日俺達3人はベッドやテーブルや椅子、そして日用品と街に買い出しに出かけた。師匠からもらった魔法袋の容量が半端なく多いので女性二人の分まで次々と袋の中に入れていく。下着類は二人とも袋に入れて渡してきた。はじらいがある女性はいいよね。


 俺自身は少ないだろうと思っていたがいざ買い始めるとあれもこれもと結構な買い物をして散財してしまった。


 防具を買い替えなくて良かったよ。


 結局その次の日も休養日として各自が部屋の整理をして昼過ぎには全てが終わった。

 ポロの街で本当の意味での拠点ができた。


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