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第107話


 この日は師匠の洞窟から奥の鍛錬場の洞窟に出向く日だ。朝ポロの街を出た俺たちは、歩いて森に移動しシルバーランクを倒して師匠の洞窟にお参りをしてからそのまま奥の洞窟に移動した。今日はここで1泊、明日は師匠の洞窟で1泊してポロの街に戻る。


 洞窟に入った時は日が暮れる寸前だった。魔道具のランプを設置すると持ち込んだ夕食を広げた。


「明日は昼過ぎまでここで鍛錬、それから移動しながら魔獣を倒して師匠の洞窟で1泊、翌日ポロに戻る。これでいい?」


 食事をしながらスケジュールの確認だ。もちろんユキも俺も異論はない。俺は自宅の部屋で精霊を呼び出す訓練を続けているが今のところ兆候は見られない。明日はここでしっかりと鍛錬しよう。


 翌朝、広い洞窟の中で3人がそれぞれ自分で決めた鍛錬をする。カオリは自分の片手剣に魔法を乗せたり、魔力を増やす鍛錬をしている。ユキは精霊を呼び出しては何か話かけていた。今は風の精霊のリーズを呼び出して、自分がしゃがみ込んで精霊と同じ目線になって何かを言っている。


 それにしても可愛いんだよな。ロリの趣味はないよ。純粋に可愛いと思ってるんだ。リーズを見ながら俺にも風の精霊が出てこないかな。


 ユキの精霊を見ながらそう思っていると突然足元が光った。次の瞬間リーズと瓜二つの風の精霊が現れた。双子みたいにそっくりで、全身が薄い緑色の衣装で地面から少しだけ浮いている。つぶらな瞳でじっと俺を見つめてくる。うは、めちゃくちゃ可愛い精霊さんだ。


 俺が何か言う前に2人は気がついていた。


「ユイチ、やったじゃん」


「私と同じ風の精霊さんね」


 鍛錬をしていたカオリとユキがやってきた。精霊は浮いたまま体を回してカオリやユキを見ている。


「外見は全く同じだけどこの精霊は風の攻撃魔法が使えるみたいだ」


「えっ!マジ?」


「そうなの?」


 頷く俺。風の精霊が出て来た時に頭の中に何かが入ってきた。この精霊は風の攻撃魔法で敵にダメージを与えることができると。


「先に名前を付けてもいいかな?」


「もちろん、何にするの?」


「この子の名前はハル。春一番から取った」


「ハル、いいじゃない」


 ユキが言ってカオリも賛成してくれた。俺はしゃがむと目の前にいる精霊に話しかける。


「風の精霊さん、貴女の名前はハル。ハルって呼んでいいかな?」


 そう言うとその場でクルッと回ると、今度は浮き上がって俺の左肩の上に乗ってきた。乗ってきたというが重さを感じないんだよ。乗ってないみたいに軽い。これも妖精だからかな。名前が気に入ってくれたみたいで安心したよ。


「すごいじゃない。いきなりユイチに懐いてるわよ」


「ほんと。肩に乗ってくるなんてね」


 こっちもびっくりだよ。そのまま立ち上がっても肩に乗っているハル。


「ハル。あの壁に魔法撃てるかな?」


 そう言うとどこからから小さなステッキを取り出して一振りすると強烈な風が洞窟の壁に当たり、壁が少し削り取られる。想像以上に威力がでかい。


 その威力を見た2人もびっくりだ。


「すごい威力。これは使えるわね」


「ユイチ、魔力はどう?」


 削られた壁を見ていたユキが俺に顔を向けて聞いてきた。


「うん、ユキが言ってたのと同じで呼び出して維持するのには魔力を使うけど魔法自体はこの子の魔力を使ってるみたいだ」


 幸いに俺は魔力量が多いのでしばらく呼び出していても問題なさそうだ。ハルを一旦戻してから俺達はその場に座り込んだ。色々と整理が必要だよ。


「水の精霊かと思ったら風の精霊が出てきたのね」


「いや、ユキがリーズを呼びだしてたじゃない。風の精霊って可愛いし、俺のところにも来てくれないかな。なんて思ったら出てきたんだよ」


 ちょっとしたきっかけで精霊さんが出てきちゃった。と言うのが正直な気持ち。3人で話し合って整理するとこうなった。収納に入っている筆記用具を取り出し、書いてまとめるのは俺の仕事だ。



・同じ精霊でも得意な魔法が異なる。これは呼び出した人によるのではないか? 回復、支援魔法が得意な人が精霊を呼び出すとその系統の魔法が使える精霊が出てくる。精霊魔法が得意な人が精霊を呼び出すと精霊魔法が使える精霊が出てくる。

(これはもう少し検証が必要)


・いずれの精霊も呼び出し、維持させるのは呼び出した人の魔力を使う。ただし精霊が発動する魔法については精霊の魔力を使っている。


・呼び出す精霊の属性は関係なさそうだ。回復系だからこの精霊、攻撃系だからこの精霊とはならない。


・精霊を呼び出す方法はまだ確認できない。(呼びかけ、戦闘中の救助要請か?)


 まだ風の精霊だけなので不確実なことが多いが、それでも今分かっていること、こうじゃないかと予想されることを書き出して整理しておくのは必要だよ。


 俺がまとめたメモに目を通した2人。


「召喚魔法については私たちにも誤解があったわね」


「それは仕方ないよ」


 俺にメモを返しながらカオリが言ったが、その通りだ。何せ先駆者がいないんだから、こっちも試行錯誤をしている所で、どれが正解かなんて分りはしない。


「でもユイチが召喚に成功したのは凄いわよ」


「そうそう。よく出来ました」


「ありがとう」


 お姉さん2人に褒められると頑張った甲斐がある。もちろん人前で披露することはできないけどそれでも精霊士でも召喚魔法が使えると分かったのは大きい。次に山奥の街に行った時に話をして、精霊を見せるとまた住民のモチベーションが上がるんじゃないかな。


 その後はユキと俺が風の精霊を呼び出した。精霊同士は喧嘩もせずに一緒に手を繋いだりしている。それがまた可愛いんだよ。その後お互いの精霊を肩に乗せたりして親密度を高める鍛錬をした。


 午後になると洞窟を出て魔獣を倒しながら師匠の洞窟で1泊。師匠には自分も召喚魔法で精霊を召喚できたことを報告する。



 今回の2泊3日の活動は中身が濃かったよ。


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