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最終話 勝利


 エリーシアがディークを殺そうと引き金を引こうしたその瞬間。

 フィンがその場へ駆け付けた。

 


「フィンさん……。どうしてここへ……?」


「どうしてってその男の叫び声を聞いたからよ。それにあなたがこの男に復讐しようとしているんじゃないかってさっき気が付いてね」


「そう……ですか。わかってるなら放っておいてください。あと少しで終わりますので」


 そう言いエリーシアは再度引き金に指をかける。

 するとフィンはそんな彼女をディークの上から下ろす為、全速力で突進した。



「いったぁ……。何するんですか!?」


「何するんですかじゃないよ! あなたこの男を殺したらどうなるかわかっているの!? この男が死んだ事に気付いた人間が大勢を引き連れて仕返しに来たらどうするの!? あなた、私達に戦争でもやらせるつもりなの!? 戦争が起これば沢山の同族が死ぬわ……。あなたはそれでもいいの!? ねぇ! エリーシア!?」


 フィンがそう怒鳴るとエリーシアは大粒の涙を流し始めた。


「わ、わかってる……。わかってますよそんなこと……!! でも……わたしの家族を奪われたこの憎しみは……悲しみは……怒りは……! どうすればいいんですか……!!」


 するとフィンはエリーシアを優しく抱きしめ、諭す様に話を始めた。


「実は私もね。幼い頃に人間の街へ出掛けた時にお母さんを攫われて奴隷商に売り渡されたのよ。私は早くにお父さんを亡くしたから、家族がお母さんしかいなかったの。悲しくて悲しくて、毎日泣いたわ。……でもね、族長がその時言ってくれたの。エルフ族は皆が家族だって。里が皆の家で、苦しい事も悲しい事も皆で乗り越えていけばいいって」


「………………っ」


「だからね? エリーシアも一人じゃないのよ? 私達家族がいるの。だから一人で抱え込まないで。憎しみも悲しみも苦しみも。全部私達も一緒に抱えてあげるから」


「うっ……うぅ。うわぁーーーーーん! フィンさぁぁぁーーーん!!」


 エリーシアはフィンの優しさに、エルフ族の愛の深さに触れ、両親を亡くしたあの日以来、一度もしなかった大泣きをした。


「おぉ〜よしよし。大丈夫。大丈夫だからね」


 そしてフィンは優しく抱きしめながらエリーシアの頭を撫でた。



 ◇◇      ◆


 

 暫くそうしているとエリーシアはようやく落ち着きを取り戻し、涙を拭いた。


「ごめんなさい、フィンさん。沢山泣いてスッキリしたよ。ありがとう」


「いいのよ、別に! それにほら! 諸悪の根源の盗賊の頭だってここに――」


 フィンがそう言い、ディークが倒れている地面に目を向けた。


「――――――ってあれ!? あの男どこ行った!?」


「え!? もしかしてわたしが泣いている間に逃げられちゃったんですかっ!?」


 そして辺りをキョロキョロと見渡すと、森の出口に向かって一目散に逃げて行く男の影を見付ける。


「いた……! あの男……まだあんなに逃げる元気が残ってたとはね……」


「腕、二本じゃ足りなかったみたいですね……」


「そうね。あの様子だとまたここへ来るかもしれないわ」


「果たしてそうですかね? まぁ殺さないにしても、あと足の二本や三本くらい潰さないと懲りないんじゃ?」


「ふふ。そうね。じゃあ作戦通り、あなたの矢で最後の一撃を決めちゃいなさい!」


「うん! ありがとう、フィンさん!」


 そう言いエリーシアは弓を手に取り矢を放った。

 しかしやはりと言うべきか、彼女が放った矢はあさっての方向へと飛んで行く。


「まったく……。最後くらいちゃんと決めなさいよ。まぁあんたのその腕じゃ的に矢は当たらない事くらいわかってたわよ。あなたの両親を救えなかった少しの罪滅ぼしとして、私にも手助けくらいさせてよね……!【ウィンドショット】!!」


 するとフィンが放った風魔法はエリーシアの矢をかすめ、方向を変えさせた。


「ヒィッ! ひぎゃあぁぁぁぁぁ!!」


 そしてその矢は、物凄い風圧と威力を伴い、泣き叫びながら逃げるディークの股の間を抜けて行った。

 その衝撃でディークの足はあらぬ方向へと曲がり、彼自身も森の外まで吹き飛んだ。


 


「二度と来るなよ!! クソ野郎がぁ!!」


「ふふふ。これで少しはスッキリした?」


「うん!」


 飛んで行ったディークを眺め、エリーシアはそう叫んだ。

 そしてそれに対しフィンが微笑みながら声を掛けると彼女は満面の笑みを浮かべた。




 ◆◇◆◆◇◇◆◆◆◆◆◆  ◇◇◇



 丁度その頃。

 捕まった三人を救う作戦を実行に移す機会を伺っていたイルス、ニーナ、ミリアの三人は未だ動けずにいた。


「ねぇ! ミリア、まだなの!?」


「まだや。まだ時やない。必ずチャンスは来る。それまで待つんや……!」


「そんな事言っても本当にチャンスなんて来るのかし――――――」


 そう言いかけたイルスは物凄い風圧を察知し、後ろを振り向いた。

 そして自慢の目を凝らし良く見ると、泣き叫びながら走る男と、その後ろに物凄い勢いで飛んで来る矢を視認した。

 


「どうしたのイルス? あなた今何か言いかけたわよね?」


「なんかあったんか?」


「エリーシアよ……。エリーシアの矢が飛んで来るわ!!」


「「えぇ!?」」


 イルスの言葉に全く予想だにしていなかった二人は驚きの表情を浮かべた。


「このまま威力を上げて真っ直ぐに飛んで行くと確実に盗賊達がいる所が吹き飛ぶわ!」


「「なにぃ!!??」」


 更に追い討ちをかける様にイルスはそう言い、二人は慌て始めた。


「今しかないわ! ニーナ! 早く袋に矢を放って!」

 

「え、え!? わ、わかったわよ!! …………えいっ!」


 するとイルスはこれをチャンスだと信じ、ニーナに指示を出した。

 幸い三人がいた場所は矢の進行上から少しズレていた為、彼女は自分達は大丈夫だと判断した。

 

 突然の事の連続で戸惑いながらも、ニーナは焦りを抑え三本の矢を放った。

 

 そして見事、作戦通りに袋をかすめる事に成功した。

 するとたちまち袋は破れ、中から三人が無事に出てきた。

 その間、エリーシアの矢はディークの股間を通過していた。

 


「やった!! 後はあの子達が上手く逃げ切れば……!」


「みんなぁ!! はよ逃げや!! エリーシアの矢が飛んで来るでぇ!!」


 ニーナは上手く矢を射る事が出来た事に喜び、ミリアは袋から出てきた三人にそう叫び、声を掛けた。


 するとミリアの声を聞いた三人は瞬時に事の重大さを理解し、左右に分かれ一目散に逃げ出した。

 しかしそれに気付けない下っ端達は声のした方へ目を向けていた。


「何か矢が飛んで来るんだってよ?」

「へっ。矢の一本や二本飛んで来るくらいどうってことないぜ」

「ていうか、おい! あそこに女エルフが三人いるぞ!」

「マジだ! ここにいる三人と合わせりゃ六人だぜ!」

「……っておい。その三人どこ行った?」

「あ? そこにいんだろ……ってあ!?」

「袋穴空いてる!? なんで!?」

「逃げやがったなアイツら!!……ん? なんだあれ?」

「あ? ほんとだ。何だあれ?」


 

 そして下っ端達が飛んで来るソレに気付いた瞬間。

 物凄い風圧と威力を纏ったエリーシアの矢が彼ら全員を森の外へ吹き飛ばした。



「「「やったぁー!!!」」」

 

 飛んで行く下っ端達を眺め、イルスとニーナとミリアは肩を抱き合い喜んだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 そして盗賊団を無事に退けた特殊部隊の面々は、巨大樹の前に整列し、族長の話を聞いていた。


「よくやってくれた!! お主らは里の英雄じゃ! さぁて今日は宴会じゃあ!!! 好きなだけ騒いで飲んで楽しめーぃ!!!」


「「「「「「おぉぉーーー!!!」」」」」」


 

 こうしてエルフの里に平和が戻った。

 宴会中、エリーシアは里の様々な人達の優しさに触れ、フィンの言葉の意味を理解した。

 彼女は泣き、笑い、楽しんだ。

 

 そしてこの賑やかで楽しい宴会は三日三晩続いた――――


 


 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 


 数日後――――

 ボロボロになり這いずりながらも街へ戻った盗賊達は、この出来事を街中に口外して回った。

 

 エルフの里には近付くな。

 あそこには『とんでも威力の弓使いがいる』と。


 


ここまで読んで頂きありがとうございますm(_ _)m

これにて、この作品は完結となります。


ですが私は他に二作品、連載をしております。


『憎き相手の喰らい方〜』はシリアスなダークファンタジー。

『転生ショタ魔王〜』は笑えるギャグファンタジーとなっております。


気になる方は一度、読んで頂けるととても嬉しいです!


また、読んでみて少しでも面白かったと思って下されば、【ブックマーク】と【いいね】と【レビュー】も頂けると嬉しいです!


作品下の ☆☆☆☆☆ ▷▶ ★★★★★ で評価できます。最小★1から最大★5です。

是非ともよろしくお願いします!


今後とも書籍化を目指して頑張っていきますので、応援よろしくお願いしますm(_ _)m

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