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6話 それぞれの想い


 エリーシアがディークの元へ辿り着いた頃――


 特殊部隊の面々はまんまとディークの策に乗ってしまい、散り散りになり森の中を駆け回っていた。



 ◇◆


 

「盗賊達、どこにいるの!? …………キャアッ!!」


 一人で盗賊達を探し回る特殊部隊のムツミは突然背後から縛り上げられ、麻で出来た袋へ詰められた。


「まずは一人目いただきぃー!」


 ムツミを入れた袋を軽々と担ぎ上げた下っ端はそそくさと出口へと歩き始める。



 ◇◇◆◆



 同刻。

 ムツミと同様に盗賊達を追うシルフィとナウルも――



「何すんだよ! 離せ!!」


「嫌っ! やめて!!」


「うるせぇな! 黙ってろ!」

「さっさと縛り上げて袋に詰め込め!」


 ――――盗賊達に捕まり袋に入れられていた。



 ◇◇◇



 先に飛び出した隊員達を追う形で持ち場を離れたイルス、ニーナ、ミリアの三人は固まって行動していた。


「奴らの狙いはまだわからないけれど、嫌な予感がするわ……。とにかく早く他の子達を探し出して連れ戻さないと……」


「そうよ。何処にいるかもわからない敵を一人で探し回るのは危険すぎるもの!」


「とりあえずここまでに、ゴン、ハイド、クルーガ、トウリの男連中は声を掛けて里に戻したけど、女連中が全然見付からへん! どこにおるんや!?」


 三人は森を捜索しつつ、見付けた男隊員達には盗賊達の不審な行動を伝え一度里へ戻す事に成功していた。


 しかし肝心の女隊員である、シルフィ、ムツミ、ナウル、そしてエリーシアの姿が一向に見当たらなかった。



 すると前方で不審な動きをする影をイルスが発見した。


「しっ……。静かに……。盗賊を見付けたわ……!」


「さすがねイルス……! 私には何も見えないわ……!」


「よし。ほんならこのままそいつの後を追うで……! きっと他の仲間と合流するはずやから……!」


 ミリアの提案に二人は首を縦に振った。

 そしてイルスの目を頼りに、三人はひっそりと息を潜めその盗賊の後を追った。



 ◆ ◇◇◇



 イルスとニーナとミリアの三人が自分の後をつけているとも知らずに、盗賊の下っ端は愚痴をこぼしていた。


「……なんだよ。全然エルフいないじゃねぇか。もう他の奴らが捕まえちまったのか?」


 そして下っ端は暫く歩き続けると、突然ピタリと足を止めた。


「もしかして……このまま俺、エルフを見付けられなかったら……この森に置いて行かれるんじゃ……!?」


 すると下っ端は突然叫び、走り出した。


「待ってくれぇーー!!! 俺を置いてかないでくれぇーー!!!」


 仲間に置いて行かれるのを危惧したのか、下っ端の足はエルフ族最速のフィンに匹敵しそうな程だった。


 そして後ろをつけていた三人は、下っ端が走り出したのとほぼ同時に走り出し、見失わない様にその速度に必死でついて行った。



 ◆◇◆◆◇◇◆◆◆◆◆◆  ◇◇◇



 そして両者、暫く走り続けると森の出口付近で大きな袋を持った盗賊達の姿をイルスが視認した。

 


「止まって……。ミリアの言った通り、あの男。仲間と合流したわ。それに大きな袋を三つ持っているわ……」


「袋を三つ……。それってまさか……!?」


「十中八九、まだ見付けてへん女連中の内の誰かやろうな……」


 三人は深刻な顔で互いを見つめ合う。

 そしてニーナがおもむろに口を開いた。


「私達で助けるわよ!!」


「そら気持ちはわかるけど、あまりにも無茶や……!! 作戦も何も無いのに、そんなん危険すぎる……!」


 ミリアはニーナの仲間を助けたいという想いに同情しつつも、その行為を危険視した。

 そんな中、イルスは未だ盗賊達の動向を逐一見張っていた。


「ニーナの言う通り、私も皆を助けたいとは思うわ。でも幸い、まだ盗賊団のお偉いさんは合流していないみたい……。この隙に作戦を練った方が良さそうね」


「な、なら、もう少し時間があるのね……。はぁ……。あーもう、どうしたらいいの……!?」


「ちょい待ち! 今、えぇ方法考えてるから……!」


 焦っている様子のニーナに対し、ミリアはそう言うと腕を組み、捕まった三人を救い出す方法を考え始めた。



 暫くして、ミリアが口を開く。


「イルス。三人はまだ袋ん中で動いとるか?」


「……えぇ。少し弱ってはいるみたいだけど、何とか袋から出ようと抵抗しているみたいよ。暴れるのが鬱陶しいのか奴らも袋を地面に置いたみたい……」


「ミリア! それが何だって言うのよ!? 早くあの子達を助けないと――」


「――そう慌てなさんな。今ので作戦は決まったで……!」


 誰よりも仲間を想い、助けたいと願うニーナを落ち着かせると、ミリアは作戦の概要を説明し始めた。


「まだ辛うじて袋ん中で動けてるっちゅー事は、逃げる元気があるっちゅー事や。つまりウチらで何とかしてあの袋から三人を出してさえあげられれば、助け出す事は可能や」


「でもその袋からどうやって三人を出すのかしら?」


「えぇ質問やで、イルス。そこでニーナの出番や」


「わ、私!? ……何をすればいいの?」


 突然、白羽の矢が立ったニーナは驚き、戸惑いを見せたが、直ぐに腹を括った様子でミリアを見た。


「ニーナは昨日、イルス程の遠い距離は無理にしても、狙った的は外さへん。そう言うてたよな?」


「え、えぇ。確かにそう言ったわ?」


「ほな、この距離ならどうや? 確実に狙った所へ矢は射れるか?」


 ニーナは少し考えた後に首を縦に振った。

 

「少し遠いけど問題ないわ! 皆を助け出す為だもの。確実に当ててみせるわ!」


「よう言うた。ほんならニーナは矢で、あの袋が破れるくらいのギリギリをかすらせるんや」


「そ、そんな……無茶苦茶よ!?」


「三人を助ける為やったら何でもやるんやろー?」


 無理難題に取り乱すニーナにしたり顔を浮かべるミリア。

 それに気圧けおされたのか、ニーナは不服そうに首を縦に振った。


「わ、わかったわよ。やるわ……!」


「よし。お利口さんや。ほんなら後は、恐らく逃げ出した三人を追い掛けようとするはずの盗賊達の足元に、ウチとイルスで矢を放って足止めするだけや。そんだけありゃあ三人も逃げ切れるやろ」


「完璧だわ……。それでいきましょう!」


「イルス……。脳天気な顔してるけど、私への重圧凄いのわかってる……?」


 こうして捕まった三人を救い出す為の作戦は決まった。

 イルスはミリアの作戦を賞賛し、ニーナはそんな彼女に悪態をついた。


 そして三人は時期を見計らい、作戦を実行に移す。




 ◇



 イルス、ニーナ、ミリアの三人が作戦会議をしている頃。

 盗賊達の策を聞き出し、皆に伝える為全速力で森を駆けていたフィンはようやく防衛ラインまで戻って来ていた。

 しかしそこには既に誰もいなかった。



「くそ……! また間に合わなかった……」


 フィンはその場に立ち止まり、森の木を殴り付けた。


「また救えないのか私は……! またあんな悲しい想いを誰かにさせるのか……!?」


 フィンは過去の自分の無力さを悔いていた。

 自分がもう少し早く情報を里に伝えられていれば、助けられた命もあっただろうと。

 もう誰も悲しませたくないのにと。


「エリーシア……」


 そう呟いたフィンは両親を亡くしたショックで一晩中泣き続けたエリーシアの顔を思い出す。


「そういえばあの子……。あの時何故あんな所にいたの……? 丸太の運搬ルートで巨大樹の辺りは通らないはずじゃ……?」


 そして思い返すとエリーシアの行動に不可解な点がある事に気が付いた。


「あの子は生まれつき【超パワー】を持っていて、他人とはあまり関わらないようにしていたはず。それに昨日のあの子。私が復讐という言葉を出した時、返事をするまでに僅かだけど変な間を空けていた……」


 エリーシアの不可解な点を思い返し、考えを巡らせるフィン。

 そして彼女はとある事に気が付いた。


「まさかやっぱりあの子……初めから盗賊達に復讐するつもりで……!?」


 フィンはようやくその事に気付き、急いでエリーシアの元へ向かう。


「まさか本気で復讐する気だったなんて……! いやまぁ気持ちはわかるけど……。あーもう……! こんな事ならあの時、ちゃんと話をしておくんだった……!」



 森を全速力で駆け抜けながら、フィンは昨日の事を深く後悔し、そう呟いた。




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