4話 作戦会議
族長の宣言の後、特殊部隊の面々はその場に残り作戦会議を始めた。
「あのー。わたし、弓についてよく知らなんですけど、作戦ってどんなものがいいんですか?」
エリーシアは開口一番にそんな事を言った。
すると他の隊員達は次々にツッコミを入れ始める。
「あんな威力の矢を放っておいて弓の事、何も知らねぇのかよ!?」
「いや、トウリさん!? わたし弓を使ったの今日が初めてなんですってば!」
「じゃああの威力は何なの!? どうやってやってるの!? 教えてよ!」
「ムツミさん、それはわたしもわからないっていうか……なんというか」
「エリーシアを先頭に立たせて、俺らは後ろから支援するってのでいいんじゃない?」
「そうね! どうせエリーシアが矢を放てば人間達は皆一瞬でやられちゃうだろうしね!」
「いやいや、シルフィさん、ナウルさん、待ってくださいっ! わたしの矢は確かに威力はあるかもですけど、必ず狙った所へ当たる訳では無いんですっ! さっきのだってたまたま風が吹いて矢の向きが変わっただけで……!」
「なら余計にエリーシアの前に立つのは危険じゃないか? やっぱり俺達は後方支援で――」
「えええ……ゴンさんまで……。それだとわたしが狙いを外している間に防衛ラインを突破されちゃいますよぅー……」
リーダのエリーシアの反論を一向に聞く気配がない隊員達。
エリーシアが狼狽えていると、イルスとニーナが口を開いた。
「皆、ちょっと待ちなさい。エリーシアの言う事も少しは聞いてあげなさい?」
「そうよ! エリーシアが可哀想じゃない!」
「二人とも……!」
二人の助太刀もあり他の隊員達は落ち着きを取り戻した。
そしてエリーシアはそんな二人に涙を浮かべながら感謝していた。
「それで、実際のところ作戦はどうしようかしらね?」
「そうね。こういう時はやっぱり専門家に頼むしかないわね!」
「専門家……?」
ニーナが言う専門家とは一体誰の事なのか。
そうエリーシアが首を傾げていると、一人の女エルフが名乗り出た。
「はいはーい! やっぱり作戦考えるんやったらウチしかおらへんやろー!」
「そうね、ミリア。特殊部隊の中であなたが一番頭がキレるわ」
「どういう作戦がいいか考えてちょうだい!」
「ちょい待ちぃな! 今考えてるから!」
特殊部隊の中で一番頭がキレると言われているミリア。
そんな彼女は暫く黙り込み一人、作戦を考え始めた。
そして――――
「よっしゃ! これで決まりや!」
ミリアは作戦が決まったのか口を開いた。
「ど、どんな作戦になったんですかぁ!?」
エリーシアは興味津々でそう聞き返した。
他の隊員達もミリアの作戦を聞く体勢に入った。
「やっぱりエリーシアのあの威力を活かすのは必須やと思うんよ。せやからまず、イルスが遠くから敵目掛けて数回矢を放つ。その後、他の面々で矢をどんどん放って里から離れた位置に奴らを誘導する。そこで集まった奴ら目掛けてエリーシアのあの凄い威力の矢をお見舞する。これで一網打尽。終いや!」
「なるほど……。単純かもしれないけれど、これが一番確実で且つ里への被害を最小限に抑えられそうね」
イルスが言う様に単純な作戦ではあるが、ミリアが立てた作戦はエリーシアの【超パワー】を活かしつつ、里への被害を抑えるとても良いものだった。
「そうね……。エリーシアの矢が里に向けば盗賊達が手を加えなくても里は壊滅よ」
「そんなにですかっ!?」
「「そんなによ!!」」
「は、はい……」
ニーナの言葉にエリーシアはツッコミを入れてみたものの、ニーナに加えてイルスにまでも一蹴されてしまった。
「よーし。ほんなら作戦の概要を纏めたもんを皆に渡すさかいに、ちゃんと読んで確認しといてなー!」
「「「はーい!」」」
「ほんなら、リーダー。あとはよろしゅう!」
「え、え!? あぁ……。えーっと。明日はみんなで頑張りましょう! 里を必ず救いましょう!!」
「「「「「おーー!!!!」」」」」
こうして作戦会議は終了し、特殊部隊の面々はその場をあとにしていった。
「いよいよ明日……か」
皆が去った後も一人その場に残り、そう呟くエリーシアの元にフィンが声をかける。
「エリーシア……? そんな所で何をしているの? 作戦会議はもう終わったのでしょう?」
「えっ!? あぁ、終わりました! 何かわたしが最後の一撃を放つ役になっちゃって、緊張してしまってっ!」
「そうなのね。まぁあの子達も悪気があるわけではないと思うよ。あの威力を見せられた後じゃあ……ねぇ?」
「…………た、確かに」
「ふふふ。だからあんまり気負わず、今日はゆっくり休んで、明日に備えなさい?」
「わかりましたっ! そうします!」
そしてエリーシアは口角を上げてニコリと笑うと、家に帰ろうした。
するとそこでフィンは彼女を呼び止める。
「エリーシア……! その、実は……。今回の里に攻め入って来ている盗賊団なんだけど……」
フィンは幼い頃に両親を盗賊の手によって奪われたエリーシアに対し言葉を詰まらせる。
「大丈夫ですっ……! 何となくそうなんじゃないかなって思ってたんで。それにわたしは……乗り越えましたからっ!」
「そう。私はてっきり復讐の為にこの特殊部隊に志願したのかと……」
笑顔で答えるエリーシアにフィンは安堵の表情を浮かべた。
「…………何言ってるんですか! そんな事あるわけないじゃないですか!」
「そ、そうよね! 盗賊達を許せないのは私も、皆も同じ。だからあまり一人で抱え込まないでね……?」
「……はい。ありがとうございます! では!」
エリーシアはフィンに深く頭を下げお礼を言うと、スタスタと家に帰って行った。
そして後にフィンはこの時の事を深く後悔した。
『あの時、もう少しちゃんと話をしてあげるんだった』と。
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