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Real_RPG  作者: MLCCHI
1/3

第一話

「なんだ。。。これ」

目の前に突然現れた生物?を目の当たりしたいさむの第一声だった。

細い通勤に利用している道路に突然飛び出してきた生物?は確かに奇妙で勇のリアクションも

正解である。


黄色の蛍光色。ゼリー状に透き通った体。

何より不気味なのは、その物体はカタツムリのひだのように動いているのである。


勇がその物体(生物?)を前に固まった状態がもう5分越えようとしている。

(遅刻!!)

いつもより15分遅く家を出た勇がやっと我に返った。


緊張しながら道路真ん中にいる生物を刺激しないようそっと左から周りこもうとする。

3月に入ったがまだコートが必要な寒い日だったが、勇のひたいにうっすらと汗がにじむ。

不気味な生き物を視界にとらえながらそっとそっと歩を進める。


「うわっ!!」


この状況下で今更ながらの叫び声が響いた。


「うわ、ううわっ」


悲鳴に近づいていく声を発しながら、勇は後ずさりした。

その理由は、ゆっくり波打つように動いていた得体の知れないゼリー状の生き物が、

勇の前に通せんぼするように急に動きを速め、前に立ちはだかってきたのだ。


「はぁ・・・はぁ、はぁ」

ひたいに大粒の汗を流した勇の息が荒くなる。


(なんだよこれ・・・)早く大きくなった鼓動が聞こえてくる。

勇は周囲を見渡す。勇の住むアパートはちょっとした丘の上にあり、

駅に向かう細い道としげみに囲まれた古い家が一軒見えるだけだった。

普段は同じように丘の上から通勤するサラリーマンなど見かけるが今は誰ひとり歩いていない。

(どうしよう・・・)途方にくれ、遅くなるが違う道で遠回りしようか考えていたその時だった。


『バシッ』乾いたゴムがはじける音が響いた。

同時に「いたっ!!」勇の悲鳴も響く。


ゼリー状の生き物から、野球のボールほどのゼリー状の固まりが飛んできて、

勇の額にあたったのだ。

何が起こったのか、直ぐには理解できない。

(何いまの?攻撃してくんの?)

ゴムで弾かれたような痛みの残る額をおさえ勇はますますパニックに陥る。


引き返すのが正解なのは勇も分かってはいた。

でもパニックになった勇の本能は違う選択をとった。


生物に向かって一度左にひとつ歩を進める。生物に反応はないが、そのまま左足に力いれ全力で右側へと

周り込んだ。周り込んだと同時にダッシュ。

生物に関して当然気にはなっているが、後ろを振り返らずとにかくいつもの通勤路を必死で下った。


そして、広めの道路にでる。そこで勇は走るのをやめ、膝に手をおき「はぁはぁ・・・」と呼吸を整えた。

すごく後ろが気になったが、振り返る勇気がなく、横断歩道の信号が青になると真っ直ぐ前を見て

ゆっくり歩きだした。


(あれはいったいなんだたんだ・・・)

歩きに変えて息が整ったころ、ようやく先ほどの生物に対して考える余裕がうまれた。

(生き物?動く物体?UMA?)

考えても当然答えが出るわけではない。


駅まであと5分ほど。汗も引き勇に冷静さが戻ってきた。

冷静になってやっと感じたこと。

通勤、通学の時間帯。いつもは駅に向かう人、短い間隔の信号で混雑する車。

それが今日は全く見当たらないのだ。


(なんか今日変だな・・・。休日でもないし)

休日でもこれほど誰もいない光景はこの街にきて初めてだった。

あの生物の件も重なり、勇の鼓動は不安で早くなっていった。

「いったい今日はなんなんだ・・・」独り言が思わず漏れる。


勇は時計をみた。いつもより2本遅いが会社に間に合いそうだ。

曲がると駅が見えるかどに差し掛かる。


「あっ!」曲がったと同時に5人ほどの人が勇の目に飛び込んできた。

(よかった・・・たまたまか・・・)

やっとの日常風景に勇は少し力が抜けていくのを感じた。


駅前にある喫煙所。いつもはここでコーヒーとマイルドセブンを楽しむのが日課であったが、

今日は元々家を出るのが遅くなった上にあの??な出来事が重なりとてもそんな余裕はない。

勇は歩を速め改札へと向かった。


『昨夜の嵐の為、現在運転を休止しています』

改札前に見慣れないロープがはられ、見慣れない紙がぶら下がっていた。


(え、嘘・・・電車動いてない??

 いや、アナウンスなら分かるけど、このロープと貼り紙は何?

 いつもの水曜日とは違うと思っていたが、まだ続いていたのか?)


少し疲労もでてきた勇。貼り紙の前で立ち尽くすしかなかった。


(いやいや、もう会社は遅刻確定だな・・・)

勇はため息をひとつ吐き出し、右ポケットに手を入れスマートフォンを取り出す。


遅刻が確実となった今、会社に連絡をする当たり前の行動をとろうとした。


「あれ?」勇の指が忙しく動く。「あれ??」更に激しく動く。

今朝遅くまで寝ていたことを知らせてくれたスマホの画面が真っ黒のまま何も反応しない。

(買ったばかり。充電もして寝た。なんで・・・)

焦る勇をまえにスマホは全く反応しなかった。


(なんて日だ!!)勇は思わずその場にしゃがみ込む。

「もうなんなん・・・」東北出身の関西弁がでる。


かと言って連絡しないわけにはいかない。混乱している頭を無理やり整理し次の手公衆電話に視線をやる。

すると公衆電話の前で行ったり来たりしている40代くらいの婦人が目に入った。


(電車が止まっている状況を聞いてみよう)とその婦人の前に歩みよった。


「あの・・・すいません。」勇が声をかけると、

「ああ、困ったは昨日の嵐のせいで電車がとまるなんて」婦人が応える。


婦人も同じように困っているようだ。

「いつごろ動くのかわかりませんか?」勇が聞く。

すると婦人が、「ああ、困ったは昨日の嵐のせいで電車がとまるなんて」と再び応えてきた。


(・・・?)「いやだからいつぐらいに電車が動くとか情報ないですかね・・・」

至極当然の質問を再度聞いてみた。


「ああ、困ったは昨日の嵐のせいで電車がとまるなんて」

婦人の回答は一言一句違わず同じトーンで返ってきた。


(・・・・・・・・・・・・・・・ナニコレ)

朝正体不明の生物から始まった勇の混乱は、だんだん恐怖へと変わっていくのであった。

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