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「へぇ~オッシャレだなぁ~。他の家もいいけど、ここは群を抜いてカッコいいよ。旦那さん、何の仕事してんだろ…。」
輝也も身を乗り出して見た。
「ご主人も凄いけど、朋美も凄いのよ。インテリアデザイナーとして頑張ってるもの!」
モッコは自分の事のように朋美の事を誇らしげに語った。
沙也加と輝也はまだ身を乗り出して朋美邸を観察している。
「ちょっとぉ~! いやだぁ~二人とも! そんなにジロジロ見てたら私たち不審者と思われちゃうわ!」
モッコがそう言うと、二人は我に返った。
「正直…こんなに差を付けられちゃうと…ヘコむわ…。」
沙也加が呟いた。
「何言ってんのよ! 沙也加はこんなに素敵なご主人様だっているし、可愛い息子君もいるじゃない! 沙也加は沙也加! 朋美は朋美!」
「…頭では簡単に理解出来ても、心が追っつかないわ…。」
沙也加は小さく呟いた。
―素敵な旦那様? モッコさん…俺の事…そう思ってくれてるのか…。
輝也は落ち込んでいる妻を余所に、一人ほくそ笑んだ。
「あそこよ! 向こうのレンガの塀の家が…」
モッコがそう言いかけたところで、反対側から誰かが家の中に入っていくのが見えた。
―パパ? 一人でこんな時間にどこに行ってたのかしら? 子供たちを置いて…
浩太は自分が子供たちの面倒みるから心配しないで楽しんできて、と言っていた。モッコは夫の責任感の無さに苛立ちを感じた。
「ちょっと待ってて。」
モッコは沙也加たちにそう言うと、車から降りて玄関の鍵を開けようとしている夫を呼び止めた。
「パパ! どこに行ってたの? 子供たちを置いて外出してたの?」
「…子供たちは早くから寝てるよ。それに…ちょっとコンビニまで行ってただけだよ。」
浩太はモッコの目を見ようとせず、ふてくされるように言った。
「たいていの物ならストックを買ってあるでしょ! 何も私がいない時に子供たちを置いて出かける事ないじゃない。なんなら私が帰ってから行ってくれればいいのに! …ってほんとにコンビニに行ったの? 何も買って無くない?」
モッコの言葉に浩太は明らかに動揺していた。実際、彼は手に何も持っていなかった。
「何? 俺が嘘言ってるって言うの? 行ったけど売り切れだったんだよ! おまえだって飲み歩いて遊んできてるんだろ? 俺にそんな事言えた義理かっ!」
浩太は声を荒げた。
思いのほか大きな声を出してしまって、浩太自身ハッとした。モッコはいつも穏やかな浩太からこんな言い方をされてショックを受けた。
「遊んでって…今日だけじゃない! 普段…私…夜に出かける事なんてほとんど無いわよ。それに私は別にあなたが夜出かけた事に対して言ってるんじゃなくて、どうして子供たちを置き去りにしたのかって言ってるの! あなたが面倒みてくれるっていうから私は出かけたのよ。無理だったら行かなかった!」
モッコは悔しくなった。
「はいはい、俺が悪いんでしょ! すみませんでした。」
浩太はいい加減に謝った。
「何よ、その言い方!」
モッコと浩太が揉めているところに沙也加と輝也がやって来た。
「あの…こんばんは。」
輝也が浩太に言った。
「あぁ…どうも…。」
浩太はニコリともしなかったがお辞儀をした。
「ちょっとパパさん、あんたが悪いよ! モッコと約束したんでしょ! 守んなきゃ! 同じことモッコにされたらどう思うのよ! 言っとくけど、モッコみたいにいい奥さんいないんだからね! こんな事してたら信用無くなって、そのうち家出ていっちゃうわよ! そうなってからじゃ遅いんだからね!」
沙也加は浩太に言いたい事をズバズバ言った。当事者のモッコの方が冷や冷やするくらいだった。
―うんうん…。沙也加もたまにはいい事言うな…。
輝也は野獣のように荒れ狂いながら正論を言う妻に感心した。




